300.練習中
/Very Merry Christmas+side Heiji/
輝く街のイルミネーションをぼやけさす、白い息。
暖冬の大阪も、今日ばかりはホワイトクリスマス。
関西人は雪降ったら喜ぶっちゅうんは、ホンマやねんで。
やって、アイツは筋金入りの寒がりやのに、こんな日は外に出かけ。
白い頬を紅潮させながら、ホットココアを飲みたがる。
優しゅう付き合うてやってるオレを、カイロの代わりやと言って。
そんなときばかり身体を寄せて、ちょうどええ高さやと、肩に尻尾を乗せてきよる。
キラキラと輝かせた、おっきな瞳の先には、賑やかで派手なツリー。
飲みきられへんと渡されたカップの縁に、うっすら残るストロベリーカラー。
剣道で養うたメンタルを試しとる?---ふざけんな、アホ。
そんでも文句のひとつも言わんと、ココアを飲み干した。
オレの唇がわずかに潤っているのを、オレの頬が少しばかり赤いことを、ツリーに夢中なオマエは気づかへんやろ?
ホンマはな。
寒いんやったら抱きしめて。
雪が降る頬にキスを落として。
夢見る瞳にオレだけを映したい。
なんて煩悩、それは去年のクリスマス。
今年は---
輝く街のイルミネーションをぼやけさす、白い息。
暖冬の大阪も、今日ばかりはホワイトクリスマス。
でもオレの息が白いんは、なにも寒いだけやからやない。
それは...それはな...
走っとるからや、ボケェッ!前のカップル、早よどかんかいっ!!
ああ、なんでこんな日に事件に飛び出してんねや、オレは。
1年365日も日ィあんねやったら、クリスマスイブくらい心安らかにおらせてくれや。
珍しくマトモな考えちゃうか、なんで和葉と約束してる日に限って、こないやねん!
さすが、浪速の名探偵。
事件がオレを呼ぶねんな、しっかし、呼び出し拒否デー作ってもええんちゃうか!?
幸せそうな街の灯と、幸せそうな街の人々。
反して、アホなことしか浮かばへん自分がイヤや。けど、しゃーない。
遅れた言い訳をするのは好きやない。けど、せめて。
「メリークリスマス、和葉...待たせてスマン、寒なかったか?」
優しく言えたら、あと数cmの距離を踏み出せたら、なにかが変わるやろか?
「オマエが欲しいモン、選びきれへんかった。どれもあげたいやん、オマエが望むモン、ぜんぶ」
高校生にはムリやろ、報酬もらってへんし、バイトもしてへんし。先立つモンがあらへんがな。
「いつか現実にしたる。やから、それまで...オレを待っとってくれ。いつまでも、オレのとなりにおってくれや」
......なんて柄、ちゃうっちゅうねん!つか、言えてたら、幼馴染みは終わっとるんやって!
頭ン中ぐちゃぐちゃになる。
ひとりツッコミ、ボケ倒し。
そやけど止まらん足の回転。
さらに濃くなる、白色吐息。
頼む、頼むで。
オマエがいつも待っててくれんのは知っとる。
やから、今日は泣かずに拗ねずに、この街みたく輝いて。
オレを、オレだけを待ってくれ。
どんな人混みの中におっても、かならず見つけてみせるから!
......おった、和葉や!!さあ、気持ちを整理して、勢いで言ってまお。
「スマン、ちょお遅れてもたかな。うっさいオンナやの〜。しゃーない、待たせた褒美に、コレ、やるわ」
......?......なんか、違てたか?
やってもた!
ぶっきらぼうでスマン。
待たせ甲斐なくて、スンマセン。
今年も、オマエの飲んだココアで我慢します。
このボアのついたコートを、カイロやと思ってください。
そんかわり、来年こそは。
寒いんやったら抱きしめて。
雪が降る頬にキスを落として。
夢見る瞳にオレだけを映しながら、唇を、ストロベリーで潤したる。
雪降る聖夜は、これからや。
300.練習中/2004 A Happy New Year!!/20061201
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