251.ほしい?/Valentine Rhapsody 2008





リビングのテーブルいっぱいに広がる、チョコレートのカタログが気に入らなかった。
2月だから仕方がない?そういうシーズン?---ダメだ、ダメ。
楽譜なら分かるけど、そんなで僕の「ただいま」に気づかないなんて、ひどいと思う。
大きめに音を立ててドアを閉めると、振り返りもせず「おかえり」だなんて、ちょっと手抜きじゃないだろうか?

しかも、それ、僕へのチョコじゃないだろ?
自慢じゃないけど、僕のはいつも、君の手作り。
耳の後ろにキスをしても、チョコを吟味する手は止まらない。

「バレンタインチョコ」

僕が、フリークの女の子たちに山ほどもらうチョコ。
愛はチョコに形を変えて、義理も積もればマジになる?

出会ったころは、それこそ、みちるのほうが妬いていたと思う。
いまは、すっかり逆。
あのころ言ったセリフを言われるとツライ、

「だって、女の子版、年中行事でしょ?せっかくだもの、楽しまなきゃ」

だからって、共演者やスタッフや関係者に、そんなに愛の代わりを贈ることはない。
しかも、おだんごたちなら、財布と相談。一回の下見で買える値段じゃないランク。
お金で愛を語れないけど、バレンタイン戦線において、値段は愛を試している。
ためらうことなく、パンフレットに「×2」だの「×5」だの、数字が書き込まれていく。
いったい、何人に送るつもりだよ。

よくよく見てみると、「せつな」「ほたる」なんて、名前まである。
皆のは買うのか、じゃあ、僕だけは。
。。。って、目を疑った。
ちょっと、飛び出た。

「←はるか」

。。。おいっ!みちるっ!?
今年は、どうなる。
年中行事だなんてもう言わないから、どうしても。

君の手作りチョコが欲しい僕なんです。





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