112.もしも
1度じゃなくて、2度でもなくて。
晴れた日には気づかない不安を、空が泣き出す途端に苦しく思い出すように、そう、何度も。
もしも、聖闘士じゃなかったら。
もしも、戦士じゃなければ。
もしも、幼馴染みやなかったら。
しあわせな時間を過ごしながら、何度も、何度も、何度だって、考えたことがある、もしも。
もしも、聖闘士じゃ、戦士じゃ、幼馴染みじゃ、なかったら?
出会わなかったんだろうか、すれ違うこともなかったんだろうか。だったら、恋をすることもなかったんだろうか。
名前を呼んで、呼ばれて、当たり前のことがひどく幸せで、ひとりじゃないと安心して眠りについて。
視線を交わすだけですべてが伝わったり、笑って泣いて怒って、身体も心も、その距離を引き寄せて。
わたしなら、
俺なら、
僕なら、
わたしなら、
俺なら、
アタシなら、
もしも、なんて。
あったとしても、やっぱり、あなたといるはず。
もしも、なんて。
何度考えても、悩んでも、答はひとつ。あなたといる自分しか浮かばない。
そうか。そうだったのか。
ふたりは、もしもを超えて、ふたりでいるんだ。超えたから、ふたりでいるんだ。
ずっとずっと、ふたりでいよう。
もしもを超えて、あしたを越えて。もしもを捨てて、未来をふたりで、ふたりで。