66.雨の日





毎日毎日、飽きもせず降る雨に、うんざりする。
梅雨やからって、そんなに降られたら、イヤんなる。

服もクツもカバンも、ぜーんぶ湿気たまんま。乾く間もあらへんし。
リボンもしおれて、ポニーテールを飾るいうより、ダラリとたれてるような気がして。

家に着いたとたん、サッと髪をほどいた。
少しブルーなって、寝ころんだお布団も。


ジメってて、冷たくって、ほんまにアタシ、カビてまう?


気を取り直して、夕飯の支度をしようと向かったキッチンでは。
出しっぱなしにしてたショウガに、芽が生えてた。

ネギに、ミョウガに、カツオ節と。
冷や奴にのしたら、さっぱりして、ぴりりと効いて、美味しくて。

お父ちゃん、薬味好きやし。
一品、アテが増えたって、喜んでくれるかな?

弾む気持ちで買い物カゴに入れたはずのソレから顔を出した。
やけにキレイな色をした芽は、鮮やかなグリーン。


グリーン...なんでか、アイツを思い出した。


しょーもないことでケンカして。
そのまま依頼でどっか行ってもて。

会われへんまま、もう1週間になる。

アイツとアタシを結ぶハズの、電波は届かず。
着信かて、メールかて、なんもない、7日間。


一方通行にもならない、用ナシの携帯。


アタシの携帯はジメってしまって、動かへんねん。
着信に、バイブに、カビが生えたんや。
アイツの携帯もジメってしまって、動けへんねん。


電話の鳴らへんケータイなんて、どうせやったらバッテリーにキノコでも生えてもうたらいいねん。
料理のレパートリー、
増やすし、なんて。アカンわ。アホなことしか考えられへん。


ほんま、イヤんなる。


ちがう。ほんま、
イヤンなるんは。
たったひとことを伝える勇気のないアタシやって。
そう、ちゃんと、気づいてたけど。


臆病なアタシは、気づいてることに気づかないように、電源を切った。

切る寸前、ブルって震えたような気がしたけど。


雨が止んだら、雨が止んだら。

一歩を踏みだそう。


そんな気になれたらと。

激しく窓を叩く止まない雨を、長いこと見ていた。





66.雨の日/rewrite20070509
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