049.さみしい





虹を見た。

びしょぬれになったアタシに、雨上がりの空がゴメンねってくれた贈り物は。
見慣れた街に、大きくまあるいアーチを作って。めっちゃめちゃ綺麗やった。

架かった虹は、 一色一色に思いがつまってるみたいに、七色のメッセージに染まってく。


キレイ。キレイやなぁ。
こういうの、ロマンチック、いうんかな。
ひとりで見るには、もったいないくらい。
平次、いまなにしてる?
こんなに虹がキレイやよ。


事件と聞けば、鉄砲玉みたいに飛び出す姿は、迷いを知らなくて、まっすぐで。
それにくらべて、アタシは風船みたい。
ぷかぷかふわふわ。浮いてさまよって。
この恋とおんなじ。どこに向かえばいいか分からず、ぐるぐるグルグル定まらない。



いままで会った誰より、たぶん、これから会う誰かより---、平次がイイ。平次じゃなきゃアカン。

そう、思てるのに、素直になれず。
心だけが、自分のモンやないみたいに、アタシのお思い通りにはならない。

この気持ちを伝えることが出来る勇気でもイイ、アイツを忘れることができる強さでもイイ。



胸が、ずっと痛い。こんな弱いアタシに、気づいてほしい。



おでこに張りついた前髪からしたたり落ちる滴のせいにして。
空を見上げながら、アタシは泣いた。





いますぐ会いたい、アホみたいに、さみしい。





049.さみしい/20070707
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