講演「イギリスと日本」

外山滋比古

 

 遠い外国というものを理解するということは大変難しいと思っていました。そして殆ど絶望しかけていたんですけど、その後だんだん考えが変わってきまして、やっぱり隣の国を理解するよりは遠い国の方が理解しやすい。一番難しいのは自分の国のことを知ることではないか、というような風に考えるようになりまして、イギリスというものに対する見方とか、そういうものについての深化を私自身遂げたように思います。

戦争の始まる直前に英語英文学を勉強しようという風な、当時からみますと非常に愚かなる選択をしまして、たちまち戦争になりまして、自分の何となく憧れていた国というのが敵の国になったという状況を4年続けておりまして、そしてその間に、日本とイギリスとの関係というんじゃありませんけど、国としての違いというようなものをある程度考えるようになりました。

・・・・GM・トレヴェリアンが『イギリス社会史』(English Social History の中で、イギリスの文化はアイランドフォーム、島の形、島嶼的形質を持っていると指摘しています。これは日本も同じように強大な文化を持つ大国を近くに、海を隔てた向こうに控えて、その国から一方的に文物を吸収、輸入して、そしてそれを育てて進歩してきたという点においては、東洋におけるアイランドフォームの国は日本でありまして、西洋のアイランドフォームを持つイギリスと東洋のアイランドフォームである日本、地理的社会的条件において共通項があるように思われました。

 

(全文は、2月に出されます報告書をご覧ください)