底砂の選び方

水草水槽における底砂の選択は非常に重要であり、それによってそれから先に起こりうる問題点やその水槽の運命までも左右することにもなる大切な要因です。単独底砂で構成するにしても複合底砂で構成するにしても、メインとなる底砂について色々と考察する必要があるでしょう。
 
どうしてそんなに重要かというと、水作りから始めて水草レイアウト水槽を作成するのでなければ、使用した底砂が最も水質に影響するからです。使用する底砂が水質を決定すると行っても過言ではありません。
基本的には底砂は水質に全く影響を与えないものが良いのが原則ですが、購入した物によっては水草水槽に適さない水質になってしまう物や、使用する元水が水草水槽に適さない場合等、いろいろな要因があり、水質を変化させる底砂を使用する方が適切な環境になる場合も考えられます。
特に低ペーハー・軟水域に自生しているような水草には同じ様な環境を作ってやることが前提となります。
おおむね水草水槽は弱酸性の軟水で有れば問題なく楽しめますが、二酸化炭素の添加などの基本的な設備でその様な環境が作れない場合には、水作りのための設備を整えるより使用する底砂の特性を生かして利用するのが最も容易な方法となるはずです。
よって先ずは、育成しようとする水草の特性を把握しておく必要があると言うことになるでしょう。

ここでは、初めて水草水槽に挑戦しようと言う方を始め、何度やってもうまく行かない方やどうしようか迷っている方々の為に、あくまで私的な範囲ですが目安となるようなものを作成していますので、何かの参考になれば幸いと思います。
色々な底砂素材については「アクアな基礎知識」の中でも解説していますのでそちらを参考にして下さい。
 
まず、水草水槽において底床内に肥料分は必ず必要です。
全く肥料分を仕込まずに水草を植栽してもそれなりに育ってくれる水草も確かに存在しますが、多くは本来の草体とはかけ離れた貧弱なものになってしまったり、本来の色を発しない水草となってしまいます。
最悪な場合は溶けて無くなってしまったり萎縮してしまうものもあります。
水槽をセットしてすぐに某らの生体の飼育も始め、半年以上経過すれば与えた餌の残りや生体からの排出物などが底床内に蓄積されてゆき、それがバクテリアなどに分解されて水草に必要な肥料分となっていくことはありますが、まっさらな水槽で底床内に全く肥料分のない状態では葉面から栄養分をさかんに吸収するタイプの水草でなければその草体すら維持することはまま成りません。
必要とする肥料分はそれぞれのレイアウトスタイル、植栽する水草やその量によって違ってきますし、使用する肥料にも種類があります。
肥料分を含まないソイル系の底砂を使用した場合などは、もともとその土壌に含まれていた物質が肥料分となり問題なく生育する場合はありますがそれは一時的なことであり、ここでは例外とします。
よって基本的には幾分底床内には肥料分を仕込むことを前提としてこのページを作成していますのでご了承下さい。
上手な肥料分の仕込み方や底床ベースのお話は別の項にて取り上げます。
 
まずは水槽の大きさからの注意点をまとめておきます。

60センチ以下の水槽

水槽の大きさが小さいのでリセットなどもたやすく行えるのがメリット。
また水量の少なさから水槽の立ち上がりも早く、セッティング初期の問題に対処するにも労力は極めて少なくて済む。
反面水槽サイズが小さくなるほど安定した水質を長期維持するのが難しい。
ちょっとしたことで水質が一変したり、ちょっとした濾過器の目詰まりや不調でも生体を☆にする可能性もある。
多めの水換えだけでペーハーが一気に変化してしまうことは注意事項のひとつである。
複雑なレイアウトを望むのは無理で、形の良い小さめの流木や石などのレイアウト素材を用い、単種の水草や多くても5〜6種までの水草で構成するのが望ましい。
水深が少ない分、有茎草などを用いた陽性水景ではトリミングに追われるようになる。

長期維持を希望するならクリスタリーノなどのセラミック底砂、大磯砂等の天然素材の砂利系(小粒なもの)、ソイル系底砂との複合底床仕様 が望ましく、短期維持ならアクアソイルなどの肥料分を含まないソイル系の底砂やプラントサンドのような肥料分を含んだソイル系底砂も使用できる。 ソイル系を用いた方が水草の育ちや根張りが良くなり、水景としての自然らしさを醸し出せる。

60センチ以上120センチ未満の水槽

水草水槽を作るにはもってこいの中型水槽である。
全体的に見た水景でも一番バランスを取りやすいように思える。
ただし、小型水槽の場合とは異なり、頻繁な水換えなどはしばらくは我慢できてもそれを続けることは挫折を招く。
水質や濾過が安定するまでは1〜3ヶ月ほどかかるが安定してしまえば比較的に維持はしやすい。
リセットするにはちょっとした勇気とやる気が必要となるが、まだましな方で最も楽しめる水槽サイズであると思われる。
長期維持を目指すなら底面濾過を組み入れた濾過システムやラインヒーターも効果は大きい。
大磯砂等の天然素材の砂利系やセラミック系の物が一番適しているが底床ベースを敷いたソイル系の底砂でも2年ぐらいは大丈夫なようである。 ただし、全面にパウダータイプのソイル系の底砂を使用するのは適さない。
クリスタリーノなどのセラミック底砂、大磯砂等の天然素材の砂利系とソイル系の底砂との複合底床にすればさらに長期維持は可能と思われる。ただし、ソイル系の底砂を使用する場合には底面濾過はあまりお勧めできない組み合わせである。
短期維持でよい場合はどのようなスタイルでも問題はない。

120センチ以上の水槽

このような大型水槽になるとリセットするにも大変な作業となり、ちょっとした勇気では無理である。
よって、基本的に長期維持を目的とするのが前提となるだろう。
このような長期維持を前提と考えた場合にはやはりソイル系の底砂はさけたいものである。
大磯砂等の天然素材の砂利系やセラミック系の物が最も適していると言うことになるが、初心者の方でいきなりこのような大型水槽から始められる方は皆無に近いであろう事から、いくらかの経験のある方々が次のステップアップとして取り組まれることの方が多いと思われる。
お勧めとしては様々な特性を生かした複合底床である。
例えば、底床ベースとしては腐葉土と軽石を混ぜた物を数センチ敷く。肥料分を含んだパワーサンドを混ぜ込むのでも良いだろう。
前景部分のみソイル系の底砂やパウダータイプのものを使用する。
残りは大磯砂等の天然素材の砂利系やセラミック系の物を使用したりと、作ろうとする水景に合わせて色々と工夫する。
量が少なければソイル系の底砂はチューブで吸い出すことによって入れ替えることも可能である。
ソイル系以外の部分はプロホースなどでメンテナンスする事が可能となるので長期維持に全く問題はない。
このようにすると後ろ半分だけに底面濾過を組み込むことも可能となる。
ちなみにこのような大型水槽では底面最下部に設置するラインヒーターは最大の威力を発揮する。
 
注意!
私的には底面濾過を組み込む場合には、根からの栄養吸収をさかんに行う有茎草の種類には適さないと考えるので、レイアウトに使用できる水草は制限されることになる。
 
 
水草の種類別底砂適合表
メインの水草
ソイル系
大磯系
砂系
セラミック系
難易度
備考
有茎草(アジア・アフリカ)
2〜3
底床内肥料分必要
有茎草(南米系)
底床内肥料分必要
クリプトコリネ
3〜4
底床内肥料分必要
シダ類
底床内肥料分不要
エキノ
底床内肥料分必要
リシア・ウィローモス
底床内肥料分不要
混植
3〜4
底床内肥料分必要
 
目的別底砂適合表
目的
ソイル系 大磯系 砂系 セラミック系 難易度 備考
とにかく始めたい
底床内肥料を少なく
いち早く安定させたい
X
底床内肥料を少なく
安定に時間がかかっても長期維持したい
有茎草を多用しない
色々と知識が必要な底床は無理だ
X
底床内肥料を少なく
あまりメンテナンスが出来ない
有茎草を多用しない
少しは経験がありメンテナンスもしっかり出来る
底床内肥料を十分に
色々な水草に挑戦したい
底床内肥料を少なく
南米水草水槽でアピストを・・・
X
X
繁殖まではかなり難しい
水草水槽でディスカスを・・・
X
生体の状態を重視する
色々とレイアウトを変えたい
X
水換えはまめに行う
水草水槽でコリドラスを・・・・
X
X
水草は少なく
コケが出にくいようにしたい
底床内肥料を少なく
難種や赤系の水草に挑戦したい
底床内肥料を十分に
 
底砂の種類一覧表
ソイル系 ADAアクアソイルシリーズ・アクアプラントサンド・熱帯魚安心サンド・無印ソイル
大磯系 南国砂・フィリッピン砂・ADAアクアグラベル 
(パールサンド・バイオサンド・ピュアサンドも含まれるが角張っているのでお勧めではない)
砂系 ADAブライトサンド・ADAリオネグロサンド・ジャレコ山砂・ジャレコ川砂・サンディーゴールド・ 
サンディークリア・新田砂・田砂
セラミック系 ADAアクアセラミック、クリスタリーノ、同パンタナル、同ザイール・焼き赤玉土