富栄養化対策

水の富栄養化とは、簡単にいえば必要以上に有機物が含まれた水になっている、と言うことですが、 これを知るにはCOD(化学的酸素消費量)を測定することで、水がどの程度富栄養化しているか、またはどれぐらい有機物が含まれているかを知ることが出来ます。
また、硝酸イオン濃度を測定することでも大まかな判断は可能であると思います。
 
アクアリウムに使用する水のほとんどは水道水だと思います。
R/Oやイオン交換樹脂などを通して純水に近い水を飼育や育成に使用することはまれで、言い方を変えれば純水では魚の飼育も水草の育成も不可能であると言えます。
生体や水草が健康に生育していくためにはおのずと必要な物質が数多く必要です。
例えば、生体にはビタミンやミネラル分など、水草には生長に必要な栄養素が必要であると言うことになります。
水道水はその地域によってかなり水質、いわゆる含まれる物質の量などが違い導電率の値は大きく異なります。
この導電率が低い水、すなわちそれが綺麗な水と言うことになるのですが、この最たるものが純水であります。
水の富栄養化現象は導電率で言うと、かなり値が高い状態の水を指し、含まれる物質の内、特に窒素やリンの量が異常に高い状態を指すものと思われます。
 
ここでは水草水槽に関して話を進めますが、なぜ水が富栄養だといけないのか?水草がよく育つんじゃないのか?と思われるかもしれませんが、水草を育成していく上で、その育成しようとする水草達が必要とする栄養分は欠かす事は出来ませんが、吸収しきれないほど多量に存在する栄養分は間違いなく水草にとって天敵である、様々なコケを発生させる原因となってしまいます。
コケが発生する最大の原因は水草が必要とする以上のこれらの条件が与えられていることです。
 
これが水草水槽を管理していく上で最も難しいことであり、常につきまとう問題であると言えます。
生体にとってはまだ許せるような範囲であっても、水草達にとっては非常に問題がある状態となることも多々あります。
水草水槽においてそれらを見極めることはいろいろな要因があって一口に説明することは不可能です。
どのような水草がどれぐらい植際されていて今どの程度生長しているのか?水槽全体を把握していなくては必要な栄養分など見極めることなど出来ません。
本来であれば日々の観察によって、そして、経験や知識から、必要であろう栄養分を推測し、必要であれば水換えなどによって減少させたり、必要であれば添加したりして対応していきます。
しかしながら経験や知識のない方々にとってはこのような漠然とした方法論ではどうすることも出来ない事となってしまいます。
ですからそれを克服するために、数種の水質検査試薬を使用して、ある程度の概要を把握することがとても大事でおろそかに出来ないことになるのです。
ただ、ここでも一般的な許容範囲しか目安にすることが出来ません。
試薬による測定で許容範囲であったとしてもその水槽の水草の状態や植栽量、生育度によっては適切でない場合もあります。
ですから試薬による測定を行ったとしてもその結果はあくまで参考数値であり、それに惑わされたり振り回されたりしては決していけません。
測定数値を元に水草の状態を観察し全体のバランスを重視するようにするべきなのです。
 
セット後数ヶ月が経過してコケの発生もなく水草も大いに生長し、生体も元気な状態であればさほど気にすることもありませんが、その様な状態から急にコケが出だしてくる様な場合もあります。
その様なときには早急にそれに対する対処が必要となります。
 
見極めの目安となるのはやはりコケの発生具合と水草の状態です。
今まで安定していた水槽が突然調子を崩し、元気だった水草にコケが付き出したり、ガラス面へのコケの付き方がひどくなった場合などには要注意で、それがある種のシグナルであると受け取らなければいけません。
このような場合は原因が何であるのかを確定する必要があります。
それを改善すればまた安定した水槽に戻ってくれるはずです。
光の量に変化がなかったか、CO2の量は、与えていた餌の種類や量は変わっていないか、生体の量が増えていないか、などなど色々と検証してみて下さい。
また、忘れがちですが水草の植栽場所を変更したり石や流木の位置を変えるなどのレイアウト変更をしたような場合にもその様な結果を招くことがあります。
底床の表面部分に蓄積した老廃物や残餌などの未分解物質が巻き上げられたり、ウィローモスなどの中に入り込んでいたものが水槽中に巻き散らかされたりして水質が一変するのです。
さらに、濾過器の不具合によっても有機物が分解されずに蓄積される結果を招く場合もあります。
濾過器が目詰まりしていないかなども忘れずにチェックして下さい。
 
しかし、このような場合は比較的改善させるにもまだ容易な方で、手っ取り早い方法としては濾過器などに異常がなければ水換えを数度繰り返すことで改善できます。
また、単一底床であれば一度掃除をしてやることも可能ですね。
また、生体の量や光の量などの外的要因であればそれを改善すればいいと言うことになります。
 
しかしながらもっとも厄介なのがある種の底砂を使用してセットした水槽セット直後なのです。
水槽をセットしたばかりなのにどうしてそうなるのか?初心者がとまどう最大の疑問だと思います。
水草水槽を始めてはみたものの購入してきて植えた水草は日に日にコケが着いていき、最後は枯れてしまったり、溶けてしまったり、と苦い経験をする場合もあるようです。
思っていたよりもおもしろくない、とここでやめてしまう方も結構いらっしゃるように思います。
しかしながらこのような現象は底床作成の仕方次第でごく自然で当たり前のことだったりするのです。
 
セット直後の水槽では十分にバクテリアも繁殖しておらず、購入したての水草では完全に水中化し発根しているような水草でない限りは必要な栄養分も知れています。
ましてや底床にある肥料分を分解するバクテリアも十分に繁殖していないわけですから、それを吸収することさえ出来ないのです。
水草が根から肥料分を吸収するにはバクテリアの力を借りてその肥料分を水草の根が吸収できるような形に変えてもらわなければ無理なのです。
単一素材で作成された底床で固形肥料をたくさん投入してしまった場合ならまだましですが、肥料分を含んだソイルを使用したり、肥料分を含んだ底床ベースを使用したような場合、このケースが最も注意しなければならない場合です。
 
これらの素材はセット直後の水を投入した時点で、その含まれている栄養分が水に溶け出し一挙に水質を富栄養化させてしまいます。
水草を育成していく上で底床内に肥料分は不可欠であり、それらの素材を使用することが間違っているわけではありません。
十分な肥料分、栄養分を含んだ素材は水質が安定してさえ来れば良好な水草の生長が見られ多いに育成を助けてくれます。
しかしながら水槽セット直後から1ヶ月ほどの間は含まれる肥料分が多く溶けだして水を富栄養化させてしまうのです。
この時期さえ水質の富栄養化に対処すれば後は定期的な水換えで問題なく維持することが可能になります。
 
ではどのように対処すればいいのでしょうか?
 
まずしなくてはいけないことは溶けだした過剰な肥料分、栄養分を取り省くことですから手っ取り早いのは水換えを頻繁に行うことです。
どの程度行うのか?と言うことですが、まずセットした翌日から毎日1/2以上の水換えを1週間続けます。
そして次の1週間は2日に1回1/2以上の水換え、翌週には3日に1回、その翌週には4日1回、となるように行います。
このようにすればちょうど1ヶ月で5日に1回程度のペースになりますのでそれ以後は1週間に一度、そして量も徐々に減らしていき1/3程度にしていけば最終的に通常の水換えペースになるでしょう。
ただし、上記したパターンはあくまで目安ですからCOD測定値や硝酸イオン濃度測定値などと照らし合わせて加減して下さい。
 
次に、その様にしたいのは山々だけども実質的に不可能な方もいらっしゃると思います。
その様な方の場合には可能な限り水換え作業をすることを前提として以下のような対処法を併用されれば良いと思います。
  • 1.濾材を全て活性炭やゼオライトと言った吸着濾材にし、2週間をめどに全量交換する。
  • 2.初期の期間だけ濾過器を追加して稼働させる。濾材は吸着濾材を使用する。
  • 3.葉面から栄養分吸収のさかんなリシアをたくさん投入し吸収させる。
  • 4.生体は水質が安定するまで投入しない。
  • 5.水草は植栽しない。
  • 以上のようなことをいくつか併用すれば頻繁に水換えが出来ない分、ある程度効果が期待できるものとなるはずです。
     
    これらの行程は肥料分を含む素材を使用して作成した底床の前処理として考えて下さい。
    従って本格的な水草育成やレイアウトの作成はこの前処理が終わってから、と言うことになります。
    このようにして作成した水草水槽であれば水草植栽直後からコケが発生して嫌になってしまうと言うようなことはほとんど起こりません。
     
    余談ですが濾材を吸着濾材にしていた場合には、この前処理が終了すればいち早く生物濾材を投入し通常の濾材のセッティングにして下さい。
    濾材が出来上がるまではしばらくの期間が必要ですが底床にある程度バクテリアが増殖しているはずですから比較的早く立ち上がると思います。
    濾材がある程度立ち上がるまで生体を投入しないのも1っの保険です。
     
    水草を植栽してからのことはまた別の機会にでも取り上げますが、注意すべきは水草の量と状態にあわせた光の量、CO2の量等の外的要因です。
    底床が良好で水質が安定していればこの外的要因さえ不適切でなければ美しい水景が出来上がるのも間違いないことだと思います。