ハイレベル

「アクアリウムという業界はその他の多くの業界とは少し違った世界である」、とはよく言われていますね。
今回は私なりに思うところの少し違った世界を話題にしたいと思います。
 
違いが良く分かる例として、家電製品や最先端のコンピーター関連業界を例に挙げると、これらの業界では発売元や製造元での専門的な研究機関や開発機関、もしくは専門大学などの研究室との提携によって開発された、最先端の技術や製品が時間の経過と共に、だんだんと凡庸化され、町の電気屋さんやパソコンショップ、大手量販店に並び、そして、私達の手元へとやってきます。
近年のめざましい発達には驚くばかりで、消費者である私達はそれが出来るまでにどのような難関や問題があり、それをどのようにして克服してきたかなどの一切の苦労を知らずに、ただその技術の恩恵だけを受けられると言う構造です。
どれぐらいの莫大な開発費や研究費がかかったのか、どれぐらいの人達の英知が集まって出来た物なのかなど全く知る余地もありません。
その様な製品でも大量生産されることやコストを削減することによって、とても安価な価格で購入することが出来ます。
その様な製品はもはやあって当たり前の物となり、日常的に何気なく使用されているのです。
 
このような素晴らしい技術の進歩によってもたらされたものでも、始めの内は何かと消費者からクレームがあったり、なにやら問題が持ち上がったりとするものです。
しかし、これらの製品や技術は消費者からの意見を参考にしたり、クレームに対処していく中でよりよい物へとさらに進化していき、さらに驚くことに価格はどんどんと安くなっていきます。不思議な世界ですね・・・。
パソコンなんて私が初めて購入したときにはプリンターを含むフルセットが100万円以上していました。
今から考えればその機能に対する対価としては恐ろしいような値段です。
現在ではその100倍もの機能を持った物が、その5分の1ほどで購入できるでしょう。
そして、メーカー側も進んで消費者の要望を取り入れたり、クレームに対処していく姿勢を持っています。
また、それらの商品を販売する販売店も次々と登場する新製品に対して、その機能やノウハウを勉強し、どのような特長があるのか、他社の物とはどのように違うのかなど消費者に説明できるように勉強します。
自店で修理を行っているような電気屋さんでは、その技術の進歩や新製品について行くのが大変なのだそうです。
これがまさにメーカー、販売店、消費者と言う3つの立場の者が共存共栄している、と言うことになるのかも知れません。
3者3用に利益を得る、と言うことになるのでしょう。(業界の規模が大きい、と言うことが大きな要因であるかも知れませんが・・)
ただ、現在では価格競争が激化し大手量販店でさえも生き残りを掛けた戦いを強いられているようですが、私達、消費者にとってはありがたいことに他なりません。
資本主義の世界で、弱肉強食と言った図式となってしまうのは致し方ないのかも知れませんが、正常な競争と言えばそうなのかも知れませんね。
 
このような業界では最先端の技術や理論、とりわけその世界で最もレベルの高い所に位置するのはメーカーであります。
消費者はその恩恵だけを受ければいいのです。
私達がその仕組みや理論を学ぶ必要性はどこにもないのです。

これが最も一般的な構図といえるのではないでしょうか・・・・。
 
一方、アクアリウムの世界に目を向けてみればどうでしょうか?
果たして最もハイレベルな所に位置しているのはメーカーでしょうか・・・・。
確かに、水草水槽におけるA○Aや濾過器の代表であるエー○イムと言ったメーカーは、それなりにその分野での先駆者でありその理論や製品はハイレベルであります。
しかしながら、”全てのことに対してハイレベルであるか”、と言うと決してそうではないと思います。
 
業界全体を見ればメーカーによってや製品によっては非常に低レベルな物も存在しているのが現実です。
以前にも話題にした「共存共栄」と言う事柄に当てはめても、まだまだ消費者の要望が(価格面など)反映されていない、とはよく言われていることですね。
製品を開発し、販売して利益を得ようとするわけですから、この業界では必ずここがハイレベルであるべきなのですが、消費者の不勉強や知識、経験不足などから、低レベルなメーカー(製品)でさえ利益を上げている、という現状の責任のいったんは少なからず私達にもあるようです。
最も、その様なメーカーや製品が存在すること事態が、私達消費者を軽視したものであると言うことは紛れもない事実ですが・・・。
 
もう少し細かく掘り下げて見てみると、消費者からの要望やクレームに対する会社としての対応もハイレベルでないところが多いようです。
かのテ○ラで有名なワーナー○ンバートと言うメーカーは、消費者からのクレームや問い合わせに対して、とても親切で対応も良くハイレベルである、とは良く耳にします。(たまたま、対応した方が良かっただけかも知れませんが・・・)
どこのメーカーもその様であって当たり前なのですが、逆にひどい対応しかしてくれなかった、対応に満足しなかった、と言うメーカーも確かに存在しているようです。
製品や理論、技術がハイレベルだけでなく”物を売って利益を得ている”と言う基本的な事もハイレベルでなければいけないはずです。
 
器具に関してはどうでしょうか?
この分野では家電製品のように最も最先端であり、ハイレベルでなければならないのはメーカーに他なりません。
私達はその恩恵を受けるだけでいいはずです。
しかしながら実際は必ずそうであるわけではないようです。
既存の製品や新発売の製品でもベテランの方から見れば完璧ではなく、その製品を元に改造をされたり、手を加えられている、と言うのは良く情報として伝わってきますね。
得に販売店である専門ショップでは実際にそれらの器具を使用して営業しているわけですから、その良し悪しは良く分かるはずです。
自店では使用していない物や性能が疑わしき物でも平気な顔をして販売しているような所もあるようで、(何かあるから使用しないはず・・・)このようなことは販売店にも問題があるようです。
自店で使用するのと物を売る(売上)とは別のもの、と言う考え方でしょうか・・・。
「そんなこと言っていたら売上が上がらないし儲けも少なくなる、消費者が”これ下さい”と言っているんだから売らない方がおかしい」、と言う理論も何となく分からない気もしないではありませんが、納得できないことでもあります。
個人的には販売店となる専門ショップにはそれぞれに個性があり、特長のある店作りをして頂き、信念と信頼のあるお店となって頂きたいものです。
 
さて、ここからが本題になります。
アクアリウムというホビーはおおむねペットを飼うことに準ずるようです。
大きく異なるのは同じ生体を扱うとしても、犬や猫をペットとするのと同じように比較的に誰でもが簡単に出来ることではないようなのです。
生体の飼育や水草の育成、レイアウトの完成をめざし、それを鑑賞しようと言うのがアクアリウムの本来の目的ですから、ただ単にペットとして飼育するだけの知識では無理なのです。
単に熱帯魚をベアタンクで飼育するだけを目的としても、水質のことや濾過のこと、飼育する生体の特長など、様々なことを知らなくてはなりません。
さらに、水草水槽での飼育や繁殖を目指すとなれば、勉強しなくてはいけないことや経験しなければ分からないことがあまりにも多く存在し、極めるにはかなり厳しい道のりです。
さらに厄介なのは初めてアクアリウムを始めるその時に基本的なことを全て知っていなくては失敗する確率が非常に高い、と言うことです。
犬や猫をペットにするのとは天地ほどの差があり、ずいぶんと違うものですね。
 
これら水草や生体はその流通経路をよく観察すればおもしろいことに気がつきます。
 
ショップによる自家繁殖物や育成物でない限りは、各々のショップにある生体や水草はその全てがどこからか仕入れられた物です。
そんな中には例外として個人的に繁殖や育成を行っているブリーダーが存在する場合もあるでしょうが、一般的には問屋と言うところから仕入れられます。
水草においては国内の水草ファームや海外の水草ファームから直接問屋が仕入れている場合もあるでしょうし、仲買人が存在する場合もあるでしょう。
生体においてはそのほとんどが海外からの直接仕入や輸入代理会社を通じての仕入となっているはずです。(一般的には)
専門ショップの経営者の中にはこのような問屋を通さずに直接現地まで買い付けに行くような方もいるみたいですが、現地には現地のブローカーや輸出業者がいて、そこで商談し価格が決められているのです。
何も自分でアマゾンの奥地に行って、採取しているわけではないですよね・・・。
 
この流通経路の中で生体の飼育に関してや水草の育成に関して最もハイレベルであるのはどこでしょうか?
 
南米や東南アジアのファームなどを見ても、飼育方法や育成方法は私達が実践している方法とはかなりかけ離れています。
生体の飼育はただ単にある程度の大きさになるまで、出荷できるようになるまでのことしか考えません。
水の濾過に関してもほとんど毎日の水換えで済ましているらしいです。(私が知っているところだけかも知れませんが・・・)
アロワナやディスカスのような高級魚でさえたくさんいますから、例外的な個体のF1やF2を飼育する以外は、さほどきちんとした設備で飼育されていないようです。
だって現地なんですから水作りなど不要です。現地の川の水が一番ですよね・・・・。
小魚なんてわんさかいるのですから、死んだらまた漁師?が取ってくるでしょう。
日本では高価なアピストのワイルドだって・・・・・・・・現地ですからね・・・。
 
このように現地ではさほど飼育方法や濾過理論など私達が勉強しなくてはいけないようなことは必修ではないようです。
 
水草にしても、そのほとんどは最も容易な水上栽培で増やしますから、アクアリウムにおける育成方法や特長などを熟知しておく必要はないようです。
 
次にそれらの生体や水草が国内の問屋や輸入代理業者に入ってきます。
ここではせっかく国内に入ってきた個体や水草を殺したり枯れさせたりは出来ません。
ここではいかに早く生体や水草という商品を小売店に出荷するかが問題になります。
人気種や希少種は予約や注文が入っていますから、よほど状態が悪くない限りはすぐに小売店へと出荷されて行くでしょう。
まれに某らの病気にかかっていたり、状態がすこぶる悪い物に対してだけはそれを克服させる努力を行います。
時にはそれらの異常に気がつく間もなく出荷されていくこともあるでしょう。
またショップにたどり着いたときには死んでいた、等と言うこともよくあります。
その様な場合に限ってこそ、それぞれの種類による特色や特長を知り、病気の直し方などと言った理論や方法論が必要となるのです。
何も問題がない物に関しては、ここでは単にその状態を維持する、そして注文が入るのを待つ、と言ったこととなります。
一般的には最も少ない時間しか飼育、維持されないはずです。
ただ、現地とは水質においても全然違うわけですから、それなりの濾過や水質についての知識や理論が必要となります。
しかし、この段階で多大な設備投資を用いて販売していたのではコストがかかりすぎますから、このようにする方がいい、と言うのは分かっていてもそれを実践しているような所は皆無に近いと思われます。
あっても最低限の設備であるはずです。
 
よって、この段階でもハイレベルな知識や理論はさほど必要ではないのです。
悪い言い方をすれば単なる金儲けのための商品に過ぎない、と言う考えの所もあることでしょう。
ただ、ごく一部の高級魚などに対してはそれなりの最適な設備が施された水槽に入れられている場合もあるようです。
 
次は私達が購入することとなる様々なショップへとやってきます。
ここではこと生体に関してはそれなりにハイレベルでなければなりません。
今までの段階ではおおむね最も長きにわたり飼育しなくてはならないからです。
利益を得る、生計を立てる糧となる商品である、このようなお客様に販売する生体がベストな状態であるように努力するはずです。
まれにどんな状態でもお構いなし、と言うようなショップもあるようですし、ホームセンターなどの熱帯魚コーナーはその最たる所であると思われますが、その様なところは例外と言うことになるでしょう。
最近では高価なディスカスなんかもホームセンターに並ぶようになり、専門家の方が見れば目を覆いたくなるような環境と状態であることは明白なようです。
しかし、一般的な専門店ではそれなりの経験と理論から生まれた色々な方法で飼育され、お客様の手に渡ってからも問題が起こらないようにトリートメント?(私はこのトリートメントと言うことが単にその地域の水に慣れさせるだけのことなのか、病気にかかっていないか、しばらくの間様子を見るだけなのか、本当はどのようにすることなのかが良く分からないのですが・・・)され、ベストな状態にして販売されているはずです。
 
それでもどうでしょう、何ヶ月、何年もそこで飼育されているでしょうか?
その様なショップがあったとしたら、それはまた次元の違う問題で、よっぽどはやらないお店か某らの問題があるお店と言うことになります。
ショップにおいても様々な生体がデッドストックとならないように、そのお店お店の得意分野の物を中心に仕入れますから、現実としては次から次へと売れて行くはずです。
ショップとしても早く売って商品を回転させたいと思うのが当たり前ではないでしょうか・・・。商売なのですからね。
 
水草などはさらに扱いがはっきりしてきます。
ごくまれに自家生育物、増殖物、いわゆる根が出て生育している物、底床に植えられている物しか販売していないような専門ショップもありますが、一般的なショップでは多くの水草は水上葉のままで販売されており(総数から見れば水中葉の方が多いかもしれませんが・・・)、ひどい場合には花が咲いている物を無理矢理水中に沈めて販売しているところもあります。
まっ、問屋から入ってきたときに花が咲いていれば仕方がないことですし、それを見て購入しようと思う方もいるのですから悪いことではないと思いますが、購入する方が水槽の中でその様な花が咲き乱れるものと思って購入されたとしたら非常に遺憾なところであります。
(水草によっては水中花を咲かせる物もありますがそれはここでは例外と考えます・・・)
 
水草に関してはご存知のように非常に奥が深く、種類も非常にたくさん存在します。
一般的なショップではごく一般的な水草しか仕入れておらず、まれに少しマニアックな物や、お客様から言われたような物を仕入れても、その特性などは全く知らないのが現実です。
しかしながら、販売して利益を得ようとするわけですから、少なくとも、水上葉なのか水中葉なのか、どれぐらいの大きさになるのかぐらいはお客様に説明できるように勉強して頂きたいと思うこともあります。
一部の種類以外は比較的単価の安いものですからおろそかになっているのかも知れませんね・・・。
ただ、その水草の正式な名称ぐらいは正しく表記して頂きたいというようなお店も確かにあるようです。
 
さらに、仕入れた水草が根を張りすくすくと生育しているようなお店も存在しにくいですね。
よっぽど人気のない種類ばかりを仕入れてしまったのか、あるいは寂れたショップなのか、某ら問題があるでしょう。
時々水草コーナーの片隅でコケだらけになってしまっている水草を発見してしまうことがありますね・・・。
これらは長きにわたり(とは言っても、私達から見れば少しの間ですが・・・)売れ残ってしまった結果その様になってしまったのでしょう。
自店である程度育成してからしか販売しないようなショップはごくまれで、マニアが集う専門ショップです。
ただし、このようなお店での販売価格は比較的一般的な販売価格よりも少し割高であることは否めません。
 
前述したように水草の方が生体よりも早く回転して売れて行かなくてはいけません。
だって何時までも在庫としてストックされていたのではその内にコケだらけとなって商品価値が無くなってしまうからです。
その理由は後述するとして、一般的には今週売れるであろう量を仕入れる、と言った具合に次々と消費者の手に渡っていくような種類が取りそろえられているはずです。
水草専門店でも、様々な種類の水草があるでしょうが、そこにはそれなりのマニアが集まり、希少種や一般種以外の物の方がより早く売れていくのです。結構高価な価格の物でもです。
クリプトと呼ばれる種の水草などはたった2〜3枚の葉っぱしかついていないのに何万円もするような物もあります。
このようなものでも希少種であったり価格が少し安かったりするだけで飛ぶように売れていくのだそうです。
ですから極端な言い方をすれば、水草などは別に底床に植えられていなくてもかまわないわけで、ご丁寧に植えられていたりするのはただ単にその水草を良く見せようとする販売方法にしか過ぎません。
 
聞いた話で笑い話ですが、あるショップでは水草コーナーの水槽には全てソイルの底床が敷かれていました。
水草は全てそこで生育したかのように植えられて販売されていたのですが、ある日のこと、それらの水槽の底砂が全て砂利系の物に変えられていました。 理由は簡単です。
抜き差しが激しくて水がすぐに濁ってしまい、売れ行きが悪くなったからです。
それ以来そのショップでは砂利系の底床に鉛を付けられたり、ポットに入ったままの状態=問屋から入荷したままの状態で無理矢理底床に植えられている、と言うよりも沈められている、と言った感じで販売されています。
ちゃんと底床に植えられて生長しているような水草は綺麗にレイアウトされた看板水槽だけだったりするのです。
 
よって、水草などは一般的なショップにおいて、ほとんどその育成に対する知識や理論は必要ないようです。
だけどCO2はちゃんと添加されていますよ、どこでも・・・・。
だって添加する器具は販売しているわけですからね・・・。
 
また、育成環境は水草専門店でも決して良くない、と言うのが現状のようです。
ショップではまず第一にいかにコストを掛けずにその水草を維持するか、で有り言い替えれば、いかにコケを付けないで維持するかにかかってきます。
肥料分にしても照明にしてもCO2の添加量にしても、はっきり言えば完全に不足した状態です。
比較的単価の安いものですから、肥料や照明、そしてCO2の添加をふんだんに行っていたのでは割が合わないこととなってしまいます。
専門店では確かに様々な水草が扱われており、色々な知識を習得されているようですが、こと商売となればまた次元の違う世界となるようです。
しかし、不思議ですね、ショップではやれ照明は可能な限り明るくしろとかこの肥料がいいだとか色々なことをアドバイスし販売しているのに、そのお店での環境を見てみると「うちはそんなにいい環境では育成してませんよ・・・」何て平気で仰ったりします。
と言うことは、あまのじゃくに考えれば「そのほとんどの水草はベストな状態の環境を与えなくてもそれなりに維持・育成する」、と言うことになります。
特に陰性の水草などはとんでもない環境(私達から見ればですが・・・)にて販売されていたりします。
水草のために水質に気を使って、ペーハーや導電率などを自生地に近づけて育成しているようなショップがあったとすれば、それは店主の趣味の延長で商売となっているような本当に例外的な所であると思います。
 
このようなことを考えれば生体だってROやピートで処理したような水を使用して水換えをしているような所も希です。
そんなにコストと手間を掛けるわけにはいかないのです。
現地で採取されたワイルドのアピストでも普通の弱酸性の水質で販売されています。
水換えだって水道水をそのまま使用しているのが一般的でしょう。
それでもその販売価格は何万円もしていたりします。
 
要するに一般的に言えばショップでは飼育・育成ではなくて「ストック」しているだけなのです。
ですから、ここでは一通りの知識や方法論は必要ですが、それを必ず実践しているかどうかと言うことは、また別のことになるのです。
したがって、専門店ではそれなりにハイレベルではありますが、最もハイレベルである、とは決して言えないのではないかと思っています。
 
以上のような流通経路をたどって、最終的に私達消費者であるユーザーの元へ色々な生体や水草がやってきます。
さて、ここからが最大のポイントとなります。
 
私達は購入した生体や水草を用いて、その繁殖を狙ってみたり、自分が意図した水景を完成させようとします。
最終的にはそれらを鑑賞して楽しむわけですが(横道にそれますが、元来、アクアリウムというホビー、平たく言えば熱帯魚の飼育やそれを水草水槽で、などという考えは、人間の手前勝手な発想によるエゴであり、自ら環境破壊を押し進めているにもかかわらず、自生地から採取してきた生体や水草を水槽という限られた空間に閉じこめ、それを鑑賞して楽しもうとするものです。現地採取された生体や水草を繁殖させたり増やしたりしようとする心は、某らの研究や種の保存という目的以外には理解しにくいものであり、それを元に利益を得ようとするものか、もしくは食物連鎖最上部に位置する人間の、単なる”あそび”というどうしようもないエゴである、と私は考えています)、それを実行するためには様々な知識や理論が必要となります。
飼育しようとする生体のこと、水草のこと、そして基本的な水質のことや濾過のこと、そして、様々な器具についてや販売されている商品についてなど、きりがないほど存在するのです。
そして、最終消費者であるが故に購入した物はその一生を消費者の水槽で終えるか、はたまた誰かの所へ貰われていくか、そうしない限りはどこへも行かないのです。(まがりなりにもちゃんと飼育、生育させれる環境での話ですが・・・)
そうでなければ、私達消費者のミスによる事故や知識、経験不足、勉強不足による”死”または”消滅”と言う結果となるはずです。
よって、当然の事ながら最も長きにわたって飼育、生育させるのは私達消費者と言うことになるのです。
 
その種類や消費者の性格にも寄りますが、ものに寄れば何年も累代繁殖し我が家の水槽の顔として存在するでしょうし、気に入った水景であればこれもできる限り長きにわたって維持しようとするわけです。
このような状況であれば生体や水草のわずかな変化や水質、濾過の調子も見落とせません。
繁殖を狙ったり、最高の状態や発色を目指すとしてもそれ相応の設備や知識が必要となります。
病気に関する知識も時には必要となるでしょう。
1つの種類を長きにわたり維持することや様々な種類の生体や水草を実際に飼育・育成させることによって、管理者の経験値が高まりその方法論や理論は確かなものとなっていきます。
 
このように考えれば、最もこの世界に置いてハイレベルでなければいけない、または、ハイレベルであるべきなのは私達消費者であるのです。
どうしてもそうでなければいけないのです。
 
この世界にどれだけの真のプロがいらっしゃるのかは不明ですが、アマチュアである私達消費者の中でも、マニアックな方は決してプロにも引けを取らないぐらいにハイレベルである事は確かです。
そして様々な器具を使用し、様々な方法論を実践し紆余曲折しながら色々なことを考え勉強し、自分なりのスタイルや飼育論、生育論を確立されているのです。

最終消費者が最もハイレベルでなければいけないアクアリウムという世界は誠に大変な趣味であるようです。
しかし、元は人間の勝手なエゴなのですから当然と言えば当然のことなのです。
私達には常に”ハイレベルであれ!”と言う責任が重くのしかかっているように感じます。
出来れば私達が一番お世話になり、何かとアドバイスをして頂くショップこそが最もハイレベルであって、まさにそれを実践している教科書であってほしいものとだと思います。
 
そのハイレベルがこの世界の流通経路を逆走して、問屋やメーカーへと伝わり、さらにハイレベルとなって私達に還元されることが真の「共存共栄」であり、「共に利益を得る」、と言うことであると思います。
 
それではまた・・・。