アクアリウム専門学校

みなさんはご存知だろうか、2000年4月、新潟県にアクアリウムの専門学校が誕生するようだ。
アクアリウム専門学校と言っても本体はペット専門学校で、その学科の中に存在するようである。
新潟県?と聞いてピンと来る方はもうおわかりと思うが、アクアリウムの専門学校と言ってもネイチャーアクアリウムの専門学校であるらしい。
正確には海洋生物・ネイチャーアクアリウム科だそうだが、なぜ名称がそうなったのかは定かではない。
おそらく某アクアメーカーの出資や教務者派遣などの協力があるのではないかと想像するが、そのネーミングにはとりわけ複雑な心境になる。
呼び名や名称にこだわりを持つお歴々の方々はより複雑な思いになられるのではないだろうか。
 
この専門学校、国際ペットワールド専門学校と言うらしいが組織としてはちゃんとした学校法人であり、何ら問題はないようだ。
国際総合学園と冠もある。
ちなみに、海洋生物・ネイチャーアクアリウム科以外にもアニマルセラピー・コーディネーター科・動物管理科・動物看護士科があり、就業年数は海洋生物・ネイチャーアクアリウム科が2年、以下3年・2年・2年となっている。

どのようなことを学ぶのかと言うと、雑誌に掲載されている広告によるが、「底床・水草・魚・照明、それらを連鎖させ一つの生態系を想像するネイチャーアクアリウム。魚類や水草の育成・管理法の基礎から、水質管理等のシステム全般や海洋の仕組み・環境・生態学等まで幅広く修得。人と水生生物とのより良い関わり方を考えられる専門家を目指す」とある。
これはまさにアクアリウムの事である。
 
ご存じない方のために記載するが、アクアリウムには様々なカテゴリーがあり、ダッチアクアリウム・テラリウム・ブリーディング・海水アクアリウム・水草水槽、等々細かくすればきりがないほどである。
しかし、どれもアクアリウムであり、ネイチャーアクアリウムもアクアリウムである。
海外では”禅”アクアリウムと称される場合もある。
間違ってもネイチャーアクアリウムがアクアリウムではない。
 
さて、このような”些細なこ”とはさておいて、専門家を目指すことを目的としたこのような専門学校が誕生することは非常に喜ばしいことであり、これからのアクアリウムの世界、とりわけ私達、趣味を同じにする消費者にとっては将来が楽しみになることと思われる。
混沌としたアクアリウム業界に筋の通った光が射すやもしれない。
専門家を目指す人を対象にすると言うことはおのずとアクアショップやアクア業界に身を置く方々が対象となるはずである。
中にはマニアックな方々が趣味の域を通り過ぎ、さらなる知識の習得や独自の研究のために訪れる場合もあるだろうが、一般的にはその様に考えられる。
 
現在の数あるショップの中には単に商業目的だけで利益を追求し、お客様の立場に立ったアドバイスや販売をしていないところも数多い。
また、アクアリウムに対する理論や考え方にもばらつきがあり、それこそ尋ねるショップ事に言うことが違うのが常である。
それが正しいことか間違ったことかは別として言われることのほとんどがそのショップでの経験が元になっている場合が多い。
アクアリウムには数学のように正解である答えが一つではない。
それは水槽の数だけ種類があり、水質があり、環境があるからである。
水道の蛇口から出てくる水でさえ、様々な地域によって異なっているのであるから言うまでもないことである。
複数の水槽を維持していてもその1っ1っで微妙に違ってくるほど微妙なものなのである。
 
往々にしてショップでの理論はその地域でのこと、そのショップでのことが中心であり、基本になっている。
要するに深く基本を分かっている人に巡り会うことはまれなのである。
そのショップではうまく行っても、自分の水槽ではうまく行かない、または、自分の所ではうまく行っているがそれをまねた他府県の方はうまく行かない、と言うことが起こり得るのである。
せっかく好意でアドバイスいただいたのに、足げなくショップに通って話を聞かせてもらったのに、多額の資金を投入したのに、うまく行かないのは何ともやるせない限りである。
このようなことがせっかくアクアリウムに足を踏み入れた人々をすぐに遠ざけてしまう結果となることもしばしばあるようだ。
 
ネイチャーアクアリウムにおける理論や技法は決して特殊なものでもなく独自にあみだされたものでもないが、ネイチャーアクアリウムが生まれる以前より存在した理論をわかりやすく、ていねいに、そして深く説明し、アクアリウムにおける本当の”基本”を再確認させてくれるものである。
またそれを広く世間に発刊誌などで広め、これからアクアリウムを始める方々やベテランの方々にまで再確認させ、正確に伝えたことは大いなる功績であり、その啓蒙活動は評価されるものである。
 
本当のアクアリウムの基本というものはどのアクアリウムにも通じる基本中の基本である。
地域的な水質の違いや生体や水草の種類をも周到したものである。
源水がどのようなものかから始まり、何がしたいのか、そうするにはどのようにしたらいいのかが分かるものである。
それを元にさらに思考を重ね、学び、経験して1っの飼育スタイル、その水槽でのスタイルが決定する。
 
このような専門学校で正しく深い基本を習得した方々が全国のショップやアクアメーカーに存在することによって、それまでただ単に商業主義であったり、消費者無視の販売や製品開発であった世界が、新しくアクアリウムの世界に入ってこられる方々を正しい基本を持って迎え入れ、指導、アドバイスしていくことは、始めに立ちはだかる大きな壁を取り省き、問題をいち早く解決してくれることになるはずである。
それにより商業主義から一歩前進し、消費者はただ単にアクアリウムを楽しむことに専念し、基本を習得した人々はさらなる進歩を遂げ、さらに楽して楽しめるアクアリウムを色々なアクアリウムのスタイルに合わせて確立して行ってもらいたいものである。
 
アクアリウムは私達に色々なことを教え学ばせてくれるものであるが、それは結果であり、本来は楽しめるだけのものでなくてはならない。
深く追求したい人や学びたい人はそれなりに自ら学ぼうとし、そうでない人は少しお世話をするだけで楽しめるもので無くてはいけない。
色々な事態に悩み、悲しみ、挫折感を味わうものにしてしまっては決していけないのだ。
「アクアリウムは楽しむものである」為にショップに従事する方々を始め専門家には期待してやまない。
 
この専門学校を卒業された方々がどのような”アクアリスト”として私達の目の前に現れてくれるか興味津々と言った所である。