王子とニューヨークへ行く ☆
〜NY・5泊7日の旅〜

 お読みになる前に以下の3点、ご注意ください

※注1)これ、個人的な旅行記です。すべては私の視点で見たものを私独自の解釈で書いています。
ココでいう「王子」とは言わずもがな、ピアニストの近藤嘉宏さんのことですが、
ここでは「同じツアーにいた楽しいお兄ちゃん」というスタンスです。
(ピアニストとしての王子さまの華々しいお姿はMUSICのページに書いてあります。)
くどいようですが、個人的旅行記なので「私の視点・解釈」で書いてます。
非常にコアーな王子ファンもしくはジョークのわからない方にはツライかも・読まない方がいいかも)

※注2)最終的には大・大満足の旅でしたが、前半は「不満モード」が続きます。


※注3)ここに載せている写真、日付が10年違ってます。
(アメリカに着いた時、カメラの日付を合わせ直したつもりだったのですが、信じられぬ大ボケ)

 思いがけずアメリカに行くことになった。
 私は基本的に先進国にはあまり興味がない。特にアメリカなんてチャラチャラしててヤだ!とまで思っていたのです。
 2004年5月末、私は家に遊びに来た姑とふたりで海外旅行の話をしていた。
 私:「ヨーロッパには興味ありますけど、アメリカはイヤですね」
 姑:「あっこさんはラスベガスしか行ってないんやろ?」
 私:「いやー、アメリカはもういいですわ。でもニューヨークなら行きたいですね」
 姑:「ニューヨーク!!ニューヨークはいいでぇ〜、メトロポリタン美術館!私、2日間通ったわ。ホントに素晴らしいで。ニューヨークはいいで!」
 私:「ホンマですか?あぁいいなぁ〜、ニューヨーク行きたいなあ!」
 この3日後である。関東在住のファン友達、夢子ちゃんからメールが届いたのは。

 王子がニューヨークデビューだよ!すごい!すごいよー!ファンクラブでツアー組むんだって!行こうよ、あっこちゃん一緒に行こうよー!!!

 大興奮。そして自宅のファックスからは「近藤嘉宏・カーネギーホール出演決定!」のチラシが。夢子ちゃんはこの日東京のコンサートに出かけ、これを入手したらしい。そして私に送ってくれたのだった。
 私は自宅でひとり踊った。ダーリンはまだ仕事から帰っておらず、ひとりで踊った。
 ダーリン帰宅。
 私:「あのさぁ・・・夏にふたりで海外旅行に行くって話、来年にせえへん?」
 ダ:「?」
 私:「私、秋にニューヨークに行かなあかんねん」
 ダ:「?」
 私:「近藤さんがな、近藤さんがな、カーネギーホールで弾くねんて!!!」
 ダ:「おまえ、おもろいヤツやなァ」
 
 この日を境に私の心はNYへ飛んでいったのだった。
 そうして迎えた出発日。

10月8日(金)
 15:30  成田空港集合
 17:55  アメリカン航空にて空路NYへ(所要12時間30分)
 17:10  NY・JFケネディ空港到着
 20:00頃 ホテル到着 チェックイン後、友達と呑みに行く

 

 朝5時前に起床。昨夜帰宅したのは1時前。風呂に入って荷物の支度をしていたら3時をまわってしまった。睡眠時間2時間あまり。
 成田へは飛行機で行くことに。が、伊丹から成田へは朝8時発と昼1便の合計2便しかない。早割で申し込んだが昼便はすでに満席だったので仕方なく朝便で行くことにした。
 家を出る前、ダーリンに手紙を書いた。やさしいダーリンは私が近藤さんの追っかけでNYへ行くといっても文句ひとつ言わなかった。が、私の母は手厳しかった。
 母:「1週間もケンちゃんをほったらかして行かなきゃならないもんでもないやろ!ケンちゃんは毎日残業、休日出勤して疲れているのに!もう近藤さんの追っかけはやめなさい!」
 母は私が大切にしている追っかけの記録(3年半で貯まったパンフレットの数々)を「いつまでも持っていないで捨てなさい」とまで言うのだった。
 会社の同僚や先輩も「え!NYへはダンナさんと行くんじゃなかったの!?」「え!あっこちゃんとダンナさんはラブラブだと思っていたのに」などと言われ・・・。
 そんなにいけないことだろうか・・・1週間ダンナ放置でNYへ行くのって。
 罪の意識にさいなまれた私はいとしいダーリンに切々と手紙をしたためた。最後は『愛しています』と締めくくり、完璧な出来具合に自己満足の極地に至りつつ、まだ眠るダーリンの顔を5分ほど見つめたあと、いそいそと出家したのであった。

 朝8時に伊丹を離陸。すぐに爆睡。あっというまに成田へ。荷物を受け取り外へ出た。時刻10時前。アメリカ行きの航空券は旅行社が持っているので荷物を預けることができず、仕方なしに空港内の一時預かり所へ。しばし成田見学を。やはり大きいなー。展望台に行き、私が勤める会社の自社機を探す。あー、今頃みんな汗水たらして働いているんやろなぁ・・・。
 フフフ・・・。
 
 13時を過ぎて同行の友達(夢子ちゃん&そおしさん)が成田に到着。待ってたよーん!ふたりともおしゃれにキメていた。私は半そでシャツにコットンのパンツ(もちろんウエストはゴム)、素足にベタ靴&リュックサック。長旅にはラクな格好が1番なのさ!
 3人でお寿司を食べようということになった。しばらくおいしい日本食は食べられないだろうということで。
 寿司に舌鼓!
 私:「飛行機は王子と同行じゃないよね?」
 1番最初に家に送られてきた旅行予定表には、「往復飛行機はアーティストと同行!!」と大きく書かれていたが、その後のファンクラブ通信ではチェロの荒さんは前日にNY入りと書いてあり、最後に送られてきた予定表にはコンサートやパーティにはアーティスト同行の「※印」がついているのに往復飛行機は無印だった。
 夢:「そういえばそうだったよね。荒さんと一緒に先に行ったのかもね」
 私:「それならそうと言ってくれればいいのにな。別に同行じゃなくてもいいけど心の準備ってものがあるし」
 夢:「『同行じゃない分、旅費返せ』なんていう人が出てくるかもしれないねー」
 私:「かもねえ」

 15時半になり、集合場所へ。さて、どんな人たちが来るのだろう・・・コアなファンばかりだろうからちょっとコワイかも。ドキドキ。
 私はいつも関西でお見かけする熱烈ファンの方々の姿を思い出し、この際仲良くなろうと思っていたけれど、意外なことに知った顔はひとりもおらず。今回は関東のファンの人が圧倒的だったようだ。
 アーティストとスタッフ、スタッフ関係者込みで42人のツアー。純粋なファンは30人くらいだったかな。
 荷物を飛行機に預けるべく、X線検査を受ける。私も夢子ちゃんも滞りなし。
 ところが、そおしさんだけは・・・
 突然係員の叫ぶ声。
「Is this your baggage? Is this your baggage!?」
 そおしさんは脇に連れて行かれ、荷物を開けるように指示を受ける。
 夢:「なに入れてきたのーーー?」
 そ:「わかんなーい!なんにも入れてないはずだけどぉ」
 そんなことより私はそおしさんが何人に見られたのかが気になった。まさか成田で英語を聞くことになろうとは!!
 そおしさんが戻ってきて、いよいよ航空会社のカウンターで荷物を預ける。かなりの行列だ。
 そ:「あ!いるよ、いるよ!やっぱ飛行機も一緒だったんだ!」
 夢:「きゃー、ほんとだ!いるよ、ホントにいるよ!」
 ふたりは早速王子を見つけていたが、私はなかなか見つけられず。しばらくしてからやっと見つけた。
 確かに王子が!ブル−のシャツ着た王子が!!ホール以外の場所で見る王子!!ひゃおうううう!
 なぜか汗が・・・。私は上着を脱いだ。夢子ちゃんも同様。
「なんだか急に暑くなってきたわねえ」「うう、寿司が逆流してくる」
 荷物を預け、フリーになった。王子はひとりで遠くにたたずんでいた。今回行けないファンが見送りに来ているはずだと思っていたが、誰もおらず。おまけにツアー客もだあれも王子に駆け寄らない。王子はひとりぽつねんとたたずんでいるのだ。主役をほったらかしとはこれいかに?!挨拶をしに行こうかと思うも、どうにもこうにもさっき食べた寿司が逆流してきそうなのだった。
 結局話しかけないまま添乗員の案内で待合室へ。王子置き去り。
 待合室で待つこと数十分。全員が集合したところで高嶋社長の挨拶とスタッフ紹介。
 王子は社長のすぐそばに座り、なにやら一生懸命書類に目をとおしていた。
 私:「夢子ちゃん、王子が・・・」
 夢:「あ・・・ヤだ」
 ふたりでプププと笑いをこらえた。王子は書類をめくるとき、札束を勘定するジジイのように指をぺロっとなめるのであった・・・。その豪快ななめ方。。。しかもなめる時の顔がすごいのだった・・・。美しい王子の顔も台無し・・・。
 私:「おじいちゃんみたい・・・もう見んとこう」
 と思うが、しゃべる社長の姿を見るとどうしても視野に入ってしまう。笑いをこらえるのに必死で、社長の話は半分しか聞いてなかった私であった。

 いよいよ飛行機に乗る。
 王子はビジネス、アタイらはエコノミー。ま、当然だわね。
 飛行機は意外と快適。座席ひとつひとつにテレビがついていて思ったより広かった。ただ、酒が有料だったので残念だった。

 JFケネディ空港に到着。現地時間は8日の午後5時すぎ。日本を出たのは8日の午後6時。時間が丸一日逆戻りしているのだった。不思議な感じ。
 入国審査では指紋と顔写真を撮られた。審査官はとてもフレンドリーで「マツイを知ってるか?観にいくのか」と聞いてきたりした。指紋を取るとき、機械の上に指を乗せるのであるが、私は乗せる場所を間違ってしまい、大笑いされてしまった。
 入国審査が終わると荷物を受け取り、皆が揃うのを待つ。
 ここで王子と再会。そおしさんが話しかけていたので輪に入る。こういう機会に話さなきゃね!関東と違って地方ではパーティも少ないし、王子と語り合えるチャンスなんてめったにないんだもの。みんなで楽しく王子としゃべろう!夢子ちゃんも誘ってみたが「私はいい・・・」と言う。なぜだ?成田で食った寿司がまだ胃の中に残ってるのだろうか。
 王子の荷物は異様に小さい。小さなキャリーバッグに洋服のケースがひとつ。旅慣れているのだろう。ス・テ・キ☆
 私:「近藤さん、荷物それだけですか?」
 近:「そーですよ」
 私:「やっぱり緊張します?」
 近:「全然!!どこで弾くのも一緒ですからねえ」
 私:「NYは何度目ですか?」
 近:「初めてです。アメリカはフロリダだけ」
 そ:「近藤さん、こっちでの予定は?呑みに行かないんですか?」
 近:「予定ないですねえ」
 『もしや一緒に呑みに行かないかと誘っているのか?』と王子に思われたらかなわないので私は話をそらしてみた。
 私:「こっちでは練習ばっかりですか?」
 近:「うーん、そうですねえ。でもオペラは観に行くけど」
 えっ!オペラ行くの!?何を観るんだろー、カルメンかなぁ(私たちは翌日にカルメンを観に行く予定だった)と思ったが、何を観に行くのかを聞いたら『もしやついてくる気ではなかろうな?』と王子に警戒されてはかなわないのでまたまた話をそらす。
 ふぅぅぅぅ、気を遣うわぁぁぁぁ←私はいつの時でも「危ないヤツだと思われないように」私なりに細心の注意を払っているつもりなんである。ちなみに「あつかましいヤツだと思われる」ことについては全くと言っていいほど気を遣っておりません←ダメ?
 王子のことをあれこれ聞くのもよいが多少の自己アッピールぐらいしてもよかろう。今回は「気配り上手で良質ファンな私」を印象づけるんだーい。早速トライしてみよう!

 「コンサートがツアーの最終日じゃなくて、最初の方にあったらよかったのにねっ。そしたら近藤さんもゆっくりできたのに♪」

 キマった!!!
 のっけからポイント稼いじゃったワ〜、うふふ♪ 王子さま、アタシのこと「お、意外といい子だナ」と思ってくれたかなっ? ウ・フ・フ♪
 王子、即座に反応を。あれれ・・・首を横に振っている?

 「終わったら早く帰りたいやらなきゃなんないことがいっぱいあるから!」

 早く帰りたいだとぉ!? どーゆーことですかッ、ねぇアンタ!???
 これはファンの前で言うべきセリフじゃないだろー・・・。それに忙しいのは皆同じだぞ。万障お繰り合わせの上でココに来てるんだぞぉ、アナタのために。
 開いた口ふさがらず、呆然としている間に話題は「スリ」について移っていた。
 近:「スリはねー、どんなに気をつけてたってダメですよ。ホントにあっという間にスラれちゃうんだから」
 と、3年前にアムステルダムでスラれた話を王子は切々と。
「お金もカードも全部入ってたんで、カード会社に電話して、それで・・・」と続く。私たちは「へー」「へぇぇ」「そーなんですかぁ」と相槌を打つ。
 結局3人の会話は大した盛り上がりもなく、ティーパーティの質問コーナーとさして変わりない感じであった。

 夢:「どーだった?」
 そ:「話が続かん」
 そして私は夢子ちゃんに会話の一部始終を話した。
 私:「やっぱり王子は音楽のことしか頭にないね、早く帰りたいんだって
 最初はただただ呆れ果てていた私であったが時間が経つにつれ、だんだんヘコミ気分になってきた。
 私は幸せいっぱいでアメリカ入りしたというのに。コンサートとそしてその後のパーティもすっごくすっごく楽しみにしてるのに。王子は、王子は・・・弾いたらさっさと帰りたいのね。首を横に振りつつ冷笑を浮かべつつ「終わったら早く帰りたい」・・・語尾を上げ気味にする関東人独特の口調・・・関西人には非常にコタエるのである。
 さらに時間が経過すると悲劇的気分が生じてきた。私が楚々とした美人でニコニコと言うことを聞くおとなしそうなお嬢様だったら「そうですね。僕もせっかくのNY、たまにはピアノのことを忘れてのんびりしたいです。そしたら皆さんともっとゆっくりお話する機会も持てたでしょうに残念です」なーんてさわやかな笑顔で返してくれていたに違いない。
 着いて早々冷めた口調で「早く帰りたい」とは!王子は私が相手だからあんなことを堂々と言ったのに違いない!
 そんなにアタシのことがウザイ?ねえ、そんなにウザイ?やっぱり・・・ビェ〜〜〜ん(号泣)。
 どうやらアタシの乗ってきた飛行機は奈落の底への直行便だったらしい。
 私:「王子って誰に対してもあんなに冷たいん?」(チキショー、暴れてやる、暴れてやるぅ、ビェ〜〜〜ん!←号泣モードさらに激しさを増す)
 そ:「人を見て話をしてるのかもしれんよ。『コイツらはテキトーにあしらっときゃいいか』って感じでさ」
 私:「そっかぁ・・・」(非常にくやしいが自業自得か)
 でも。テキトーにあしらわれたって冷たくされたって、私はあなたについてゆきますとも(悲哀)。
 「良質ファン」を印象づけようとするのは無駄な努力だとじゅうぶんに悟った私であった。私は私らしく王子に接するべきなのだ。よっしゃ、それでは遠慮なくいかせていただきますわよ、ご覚悟を。

 ホテルへ移動。専用バスに乗る。私たちファンは前に詰め気味に座ったが、王子は皆よりぐーーーんと離れて最後尾に。スタッフのNさんとふたりで座っていた。ファンとの壁は依然として厚いのだった。
 道中、素晴らしい夕焼け。やがて日が落ち、夜景が。NYへ来たなあという実感が湧く。
 ホテルはNYヒルトン。大きなホテルだ。チェックインをすませ、部屋に荷物を置くと我々は早速、夜のNYへと繰り出した。ヒルトンはマンハッタンの中部にあり(ミッドタウン)とても賑やかで夜でも明るくて人通りも多い。
 バスの中から見えたオイスター・バーへ3人は喜び勇んで出かけた。

 我々、いよいよ英語圏へ突入したわけである。
 緊張しつつもとりあえずビールを、メニューを見ながら適当に料理を頼む。
 注文を聞きにきたおばさんはものすごい早口。あー何言ってんだかよくわからないよぉぉぉ。聞き取れた単語をくっつけて検討した結果、どうやら「料理とビールは一緒に持ってきたらいいか」と聞いてるように思えたので「一緒に」と言うとなぜか怒られた。やはり聞き間違いか・・・。
 私:「わからんよぉ・・・あのおばさん、イタリア人?スペイン人?」
 とにかくおばさんはものすごい早口で巻き舌なのだった。絶対アメリカの人ではないはず。
 料理とビールは同時に運ばれてきて、私たちは気を取り直して乾杯!
 NYへ来た喜びに話も弾む。
「初日からこんなに楽しいなんて、どーしよお!!!」
 さきほどのおばさん、さっきはあんなに怒っていたのに急ににこやかになってきた(理由はわからんが)。そして『私はチリの出身なの』と。ほー、そうか、チリか、なるほどなぁ、だからあんなに巻き舌だったのね。
 次は中国人の青年が注文を聞きにきてくれた。夢子ちゃんが彼のネクタイをほめると、さっきのおばさんが『彼はね、中国の出身なのよ』と。わーいと喜ぶ私たちに彼は恥ずかしそうにうつむいていた。
 ココに長い間住んでいるですかと聞いてみたら「来て半年です」とのこと!
 そーか、やはり住んだら英語力も上がるのだなぁぁぁ。
 しばらく料理とお酒を楽しんだあと、ホテルに戻った。さ、明日もNYライフを満喫するぞー!
 ベッドに入り、布団の中でつぶやいた。「おやすみなさい、ダーリン♪」
 ※ココで言う『ダーリン』とはもちろんうちのダンナのことですよ。ヤダわ皆様、誤解なすっちゃあ!以後、毎晩このセリフを言ってから眠ってました。だってダーリンと約束したんだもーん!

タイムズ・スクエア付近。朝が来るのを忘れてしまいそうな明るさでした。

10月9日(土) 一日フリータイム
 午前  セントラルパーク&メトロポリタン美術館見学
 午後  昼食後、チャイナタウンをウロウロ
 20:00  メトロポリタンオペラハウスで『カルメン』を鑑賞
 夜中  ホテルの部屋で飲み会


 慣れない異国で予定を詰めすぎるのはよくないと思い、昼間は丸々フリーにした。
 今日の行先はメトロポリタン美術館。ここは私の希望で行くことに。他のふたりは少し退屈そうでした。申し訳ない。
 ホテルから歩いて出かけた。途中セントラルパークの中を通った。広くて緑が多くて鳥がさえずり、リスが駆け回り、マラソンをしている人がたくさんいてのどかな雰囲気。とても大都会にいるとは思えないほどだった。
 しかし・・・馬の糞があちこちに(NYの街には馬車がたくさん走っていた)。美術館見学のあと、今日の昼ご飯はここでホットドッグでも食べながらのんびりしようと思っていたのですが、この匂いの中で食べ物を食べるのはつらい感じ。
 結局私たちはパークの中から出て、普通の道路をたどって美術館へ。朝食をとってなかったのでここでホットドッグを買って食べた。
 そうして美術館の中へと。お金を払うとバッヂを渡された。それを服につけていれば一日中出入りできるようだ。

メトロポリタンミュージアム・世界4大美術館のひとつでアメリカ最大の美術館。

 ここは全部見てまわろうとすると1日ではとても足りないほどの大きさを誇る、世界でも有数の大美術館。今度NYへ来る機会があればまたここに来ようと思う。今回は連れをつき合わせているので『3時間半』と時間を決め、どうしても観たいものだけ観ることに。
 私のお目当てはレンブラントとゴッホ。迷路のような館内をガイドブックを見ながらウロウロ・・・あ、ここだ!と思ったらなぜだか立入禁止の紙が。
『ただいま改装工事中。ほとんどの絵画は階下の部屋に展示してあります』と書いてある。
 『most of picture』と書いてあったので愕然。全部じゃないのか!?mostなのか?とりあえず階下へ行く前にそこらに展示してあったゴッホの一部の絵画『糸杉』『アイリス』などを見、モネの『睡蓮』などを鑑賞。写真も撮った(フラッシュたかないのだったら撮影は自由、スケッチも自由なのです)。
 そして階下へ。レンブラントの作品は33点あるとガイドブックに書いてあったのでとても楽しみにしていたのに11点しかなかった。なにがmostだよっ、半分もなかったじゃねーか!
 せっかくNYまで来て工事中とは全く不運であった。
 鑑賞後、以前から欲しかった『オリジナルトートバッグ』を2種類購入。地下には巨大レストランがあり、スム−ジーを買って飲んだ。甘かった。

 そして次のお楽しみは私の高校時代の友達とダーリンの弟が推奨する「ジョーズ・シャンハイ」という中華料理店でショーロンポーを食べた。8個入りだったが、大きくて食べ応えじゅうぶん。人気店なのでしばらく並ぶことになったけれど並んででも食べて正解。
 その後、チャイナタウンをなんとなく散歩。のんびりとした時間が流れた。 

 そしてホテルに戻り、次はオペラへ出かける準備を。オペラは夢子ちゃんの希望だ。一流オペラハウスに出かけるというので気合十分。フォーマルドレスに身を包み、髪の毛をアップにしてヒールを履いて出かける。ホテルから近いので歩いて行ったけれど、馬車で乗りつけても面白かったかも。

メトロポリタンオペラハウス 入口付近を上から望む

 20時開演。終演は24時近く。4幕まであるのでたっぷり4時間かかった。途中の休憩でシャンパンなどを飲み、ハイソサエティ気分を味わったことは楽しかったが、オペラは正直言って退屈だった。どうもオペラは性に合わないな。。。
 オペラを観たのは2回目。前回はウィーンで『ドン・ジョバンニ』を観て、言葉も話のスジもわからず途方に暮れるばかりだったので、今回は日本で『カルメン』の本を読み、あらすじを頭に入れて臨んだが、文庫本にして100ページあまりの話だし、魔性のジプシー女『カルメン』に翻弄された『ホセ』が破滅の人生を歩み、恋敵を殺し、しまいにはカルメンをも殺してしまうという内容。刺激的だが内容はない。それを長々としかも始終歌っているので(オペラとはそういうもんですが)場のメリハリがなく単調で、2幕も途中になるとウトウトしてしまった・・・。言葉も全然わからない。途中で座席に英語字幕が見られる機械があることに気付いてつけてみたけどアタイの語学力じゃあちょっとねえ。『ないよりマシ』程度でした。トホホ。
 4幕も終わりになり、一番の見どころ、カルメンが殺される場面だけはちゃんと見ておこうと目を見開いた。
「カルメン!どうして僕と暮らしてくれないんだ!僕よりあの男が好きだっていうのか!ああカルメン!僕を愛せないというのか!」とセリフで言ってくれれば迫力もあるのだろうが・・・「カ〜ルメン、カ〜ルメン」と歌われたのでは気分もメゲ・・・。ホセのしつこさに嫌気もさした。「だからもう好きじゃないって言ってるやん」
 あぁ、私にオペラはネコに小判だ・・・。でも音楽はとてもよかった。オペラより、歌は歌、音楽は音楽で聴く方が私には面白いと思えるのでした。
 しかし、一流の場所で一流といわれるものを観た、ということはとても感慨深かった。

 そして帰ろうかと思うと、同じツアーの方が「バスが迎えに来るよ。で、夜景を見に連れてってくれるから一緒に乗って帰ろうよ」と言ってくださったのでそうすることにした。
 バスには社長やスタッフもいた。残念ながら王子は不在。ヤツもオペラを観ると言っていたが、カルメンではなかったのか?それとも夜の街に消えたのだろうか。んなわけないか、コンサートに備えて練習だよね。
 そしてマンハッタンの夜景を見に行ったわけですが・・・夜遅すぎてもう電気半分消えてるんちゃうん?って感じだった。


 

 そしてホテルへ帰った。もうかなり遅い時間だが、我々3人の夜はこれから。まだ酒を呑んでないではないかぁ!
 というわけでホテル裏にある24時間営業の「デリ」に行く。
 デリとはコンビニみたいな感じ。あとでゆっくり紹介しますね。そこでビールを数本買い込み、トルティーヤチップスとサルサソースとチーズと鶏肉の焼いたのを数種類買いこんだ。
 部屋でうだうだ呑む。アメリカのビールはどれもこれも味がうすくてイマイチだけど、仲間とわいわい呑むのは楽しい!食べる手も話す口も止まることなく夜は更けていったのであった。


10月10日(日) 一日フリータイム
 午前  ちょっと寝坊し、遅い朝食をデリで。
 14:00  ブロードウェイミュージカル『美女と野獣』を鑑賞
 午後   タイムズスクエア付近をウロウロ
 夜    エンパイアステートビルに登る&ジャズを聴きながら夕食

 朝はゆっくりと。ホテル裏のデリで朝食兼昼食をとった。
 デリとはコンビニとファストフード店が一緒になったような感じで、NYの街のいたるところにあった。
 店内にはホテルバイキングみたいに何十種類もの温かい食べ物や野菜やフルーツ、スープにコーヒー、お寿司まであった。それをパックに好きなだけ取って、レジに持っていき、価格は重さによって決まるというもの。
 昨日は夜遅くに行ったので食べ物はなかったけれど、今日はお昼前だったのでたくさんあった!どれにしようか迷う迷う。日本にもこんなのがあったらいいのになあ。
 そおしさんがべーグルサンドを買っていた。ちょっと味見をさせてもらったけどめちゃくちゃおいしくて感激。日本で食べるべーグルはぱさぱさしているけど、こちらのべーグルはふっくらしていて、べーグルに対して持っていた観念がくつがえされました。

 ホテルバイキングみたいでした 肉も野菜も米も果物もたくさんあり

 結局このデリには毎日のように通うことになる。店員さんもとってもフレンドリー。夜に行くと「おやすみーおやすみぃ〜」と投げキッスを送ってくれたりした。
 この店だけでなく、ニューヨーカーはとても明るくて親切な人ばかり!
 イケてなかったのはホテルの従業員くらい?一流ホテルのわりには洗練されてなく、仕事も遅くてイライラしてしまった(ただひとり、バーのお兄さんは優しかったけど)。

 そしてブロードウェイへ行く。ホテルから歩いて行ける距離なのでありがたい。
 今日もおしゃれして出かけた。うーん、楽しいわね!
 チケットは日本でネットで予約した。あれこれ検索して70ドルのチケットを45ドルで買った!支払いはカードで済ませて、受け取りは当日に劇場窓口にて、とのこと。
「ちゃんと取れてるだろーか」 やっぱり英語に不安な私は気が気でない。
 こわごわ窓口へ。ちゃんと取れてたー!ばんざーい!!

「美女と野獣」は私の希望で。「オペラ座の怪人」と迷いに迷ったけれど、アメリカに来たのなら『ハッピー&ファンタジック系』を観て、楽しい気分にひたりたいではないか!
 人気作なので当日券は手に入らないかもということで日本で予約。手数料は8ドルくらいだったので思ったほど高くはなかった。我ながらいい仕事をしたわ。

ラント・フォンテーヌ劇場 開演前・ワクワク〜♪

 劇場は思ったほど大きくはなく、こぢんまりした印象。そしてやはり子供が多い。親の趣味か、コスプレな子供がいっぱいいた。
 我々の後ろには不運なことに乳幼児様がいらっしゃり、上演中ずうっと背中を蹴られ続け・・・。そおしさんが日本語で何度もゲキを飛ばし、親も『ストップ、ストップ』と注意はしていたものの・・・乳幼児に耳なし。仕方ないわね。
 でもすごく面白かった!!!絶賛!!!舞台装置はきれいだし、音楽も生オケだし、セリフはきれいな英語だし、踊りも変身シーンも迫力があった。夢子ちゃん、感動のあまり泣く。
 最後は迷わずスタンディングオべーション!
 出演者もお客も盛り上がって一体化。最高に楽しかった!!


 あまりの盛り上がりに「もう一本、観よう!」ということになりかけたけれど、他にも行きたいところがたくさんあったので断念。
 タイムズスクエア周辺をウロウロし、そおしさんの希望で99セントショップやお土産屋をのぞきながら、ニューヨーカー気分を満喫。


 一旦ホテルに戻り、防寒の用意をしてタクシーに乗る。行先はエンパイアステートビル。NYに来たならばマンハッタンの夜景を見たい!昨日みたいに遅い時間になってしまってはたまらないので、日暮れと共に出発。
 厳戒体制。荷物は全てX線に通され、身体チェックもあり。そのせいで2時間くらい並んだかしら?
 地上443m、102階建て。展望台は86階にある。料金は12ドル。少々お高い。強風でかなり寒かったけれど、360°拡がる夜景はなかなかよかった。けど、ココは一度行ったらもういいや、って感じかな。
 夢:「神戸の夜景とどっちがいい?」
 私:「神戸」
 こんな程度です。帰国してダーリン(神戸市内勤務)に写真を見せたら「おお!やっぱりでかいな!」と感動してたけれど。
 

おおっ!写真で見るとなかなかスゴイな!

 そして夜。「ジャズを聴きにいこう!」ということになり、ガイドブックで探す。夜遅いのでホテルからなるべく近いとこに行くことに。
 NYの夜・・・しっとりとジャズを聴きながらお酒を呑みたい、と思ったが、今夜の演奏はジャズというよりビッグバンドっぽい。総勢30人ほどの男性たちが金管楽器を吹きまくる。
 えーな、えーなぁ、ニューヨークやなぁっ!
 吹奏楽出身の私は血が騒ぐ〜〜〜。特に印象に残ったのはテナーサックス吹きの人。サックス以外にフルートも吹いてたのにはびっくりでした。
 誰とでもすぐ仲良くなれる夢子ちゃんは演奏後のバンドマンに駆け寄り、写真を撮ってもらっていた。その積極性を王子にも発揮してよーん♪

ライブハウス「Birdland」ここでジャズの音色を楽しみました。

 タクシーでホテルへ戻る。今日も遅くまで遊んでしまった。デリで買い物をし、部屋で一息。
 とりあえず今日で「丸一日フリータイム」は終わり、明日は王子と一日中、行動を共にする。
 王子は何をして過ごしていたのだろうか。泊まってるホテルも同じなので、どこかで会えるかもと思っていたけど、全然。
 
「近藤さん、全然姿を見せんね。スケジュールどおりじゃなくってちょっとくらい顔出せよなあ。例えば昨日のオペラの後とかさ、夜景くらい一緒に見にいったってバチは当たらんよ!」
 次第に王子のそっけなさについて文句爆裂。
「バスの中でもず−っとスタッフとふたりで楽しそーに話しこんでさ、ちっともファンのとこには来てくれない」「誰のためにここまで来たと思ってるの?」「もっとサービスしてほしいわな」
 まーまーまー、出るわ出るわ、愚痴の嵐。さらに私は空港での王子の「早く帰りたい発言」を蒸し返しに返して、本気で腹がたってきた。

 こんなとこ、来るんじゃなかった・・・こんな現実を知らされるくらいなら、日本で夢を見ていた方が幸せだったのではないか・・・

 そおしさんが風呂に入ってもなお、私と夢子ちゃんの愚痴は続き。「明日聞いてみようか『近藤さん、早く帰りたいですか?』って!」「だーれも『取って食やしない』よ!警戒しすぎ!」「つまんない!つまんないよー、こんなツアー」「今度こそホントに冷めた」「もうファンやめる」
 ひとしきり愚痴をはきまくったところで、夢子ちゃんがぼそりとつぶやいた。

 夢:「今はさあ、こんなにブーブー言ってるけど、明日ピアノ弾いてるとこ見たらさぁ、『きゃあ♪やっぱり好き!!』ってなっちゃうんだろうなあ」
 私:「・・・私もそう思う・・・明日の今ごろはきっと『ああーん、ステキ』なんて言いながら枕抱きしめてるんやろなあ、私たち」
 夢:「で、帰りに空港でまた冷たくあしらわれてさあ」
 私:「ホンマ、彼に翻弄されるわ・・・」
 夢:「魔性の男だよねえ」 

 魔性の王子との再会は明日。ブーブー文句言いながらも私と夢子ちゃんは「ひたひたコラーゲンたっぷりマスク」を顔に貼りつけて寝たのだった。

10月11日(月) 
 11:30  ブランチ
 13:00  専用バスにてウエストチェスターへ
 14:00  Mさん宅でホームコンサート
 17:30  レストラン「KITTLE HOUSE」にて会食
 19:00  専用バスにてホテルへ
 21:00  ホテル着
 その後ホテルのバーで呑む(閉店時間過ぎてます、と言われるまで)
 

 朝、おなかがすいたのでデリへ行く。ブランチ前なのでひかえめに。寿司の誘惑に負けてしまい、3人で1パック購入。まぐろとアボガドの巻き寿司。海苔ではなくゴマが振ってあった。
「おいしーい♪♪♪」
 この米はカリフォルニア米だろうか。しっとりしていて味は日本の寿司に負けてはいない。もっと食べたいところだったが、成田での教訓があったので我慢する。またあの時のように「王子を目前に寿司が逆流」だけは避けたいところ。
 せっかくこんな遠くまで、気まづい思いをして仕事を休み、貯金は底をつき、母に叱られながらもダーリンを置き去りにして追っかけてきたのだから。私はきっちりモトを取るぞ!100%、この旅を満喫して帰国するのだ!!!

 レストランに入る。すごく小さなお店だった。
 さ!王子の近くに座るでぇ〜〜〜!ところがスタッフが袋を片手に叫んでいた。
「皆さん、クジを引いてくださーい!1番から8番のクジを引いた方は近藤の近くに座れます。空クジの方は適当に空いてるとこに座ってください」

 クジ引きかよぉ・・・・・・ 王子への道のりはやはり遠いのだった。

 私は念じに念じてクジを引いたが、空クジだった。夢子ちゃんも空。ところがそおしさんは7番(王子の隣)を当てていた。
 じゃあね・・・そおしさん。アタシたちは空クジ引いた負け犬だから遠くから見ているわ・・・と適当なところに座ろうとしたけど、王子の周りはいつまでたっても人が座らない。逆に王子から遠い席ほど満席状態なのだった。
 これはいったいどういうことだ?なぜ近くに座らんのだ?1等当たっても取りに行かないとはどういうことだ?
 それじゃあ私が座っちゃうよーん♪王子のななめ向かいを陣取り。夢子ちゃんはそおしさんの隣。
「夢子ちゃん、アタシの隣においでよ。その方が王子の顔がよく見えるよ」
と、誘ってみたが「ううん、ここでいい」と夢子ちゃん。だからアボガド寿司なんて食うんじゃなかったんだよー。
 私の隣には北海道からお見えの方が座った。なんと彼女は王子と話したこともなければサイン会すら出たことがないと言う。
 私:「どうして!どうしてですかっ?この機会にお話しましょうよ」
 彼女:「絶対ダメ!緊張して卒倒しちゃう!」
 私:「介抱しますから!!」
 彼女:「皆さんそうおっしゃってくださるんだけど・・・」
 今回は彼女のように控えめな方ばかりが参加されてるようだ。私だけなのかなぁ・・・こんなに鼻息出してんの・・・私っておかしいかなあ、変かなぁ・・・。
 だってさ、素敵な人としゃべりたいやん?素敵な人と話すと心にキラキラしたものが満ち満ちてくるやん?そういうのってすごくうれしいやん?「私もこの人みたいになろう!」って元気が出てくるやん?
 ウチのダーリンが一番心配していた「ケガするなよ」の言葉は忘れてよさそうだ。せっかくバンドエイドと消毒薬と湿布を持ってきたけど用事なさそう。←他の方々との「王子争奪戦」の結果、突き飛ばされ・床に倒され・踏みつけにされる自分を想像しながら家を出てきたんですが、私は。
 もちろん倒されても踏みつけられても起き上がる覚悟でおりましたがね。

 食事が運ばれてきた。あれ、なんて言うのかな、キッチュ?野菜と卵のパイみたいなやつ。すごく大きくて食べきれないほど。
 食ってる場合ではないぞ。王子と話をしなければ!私はひとことふたこと話しかけてみた(なんの話をしたかは覚えてない)。王子はひとことふたこと返答してくれたが、話の途中でスタッフが王子に別の話を切り出した。それ以来、会話の糸口をつかむことはできなかった。

 ななめ向かいに座っていながら、このありさま。
 黙々と食う。でかいキッチュを。食べきれず残した。
 しばらくしてウェイターがデザートを聞きにきた。
「チョコレートムース or プリン?」

 私は「チョコレート」と言い、王子は「プリン」と言った。

 もぅあかん・・・早く帰りたいのは私の方やっちゅーねん!!!
 食事が終わると早速写真撮影会になっていた。王子の隣に次々に人が座っては立ち・座っては立ち・入れ替わり立ちかわり・・・・・・

 ここは「ティアラこうとう」かっちゅーねん!

 ブーブー思いながらも私も一枚撮ってもらうことにした。
 王子の隣に座る。写真を撮ってもらう。そして私は座ったまま王子に向き直り、言った。

「近藤さん、私はモトを取りたいので、いっぱいしゃべらせてくださいね」

 言い終わり、席を立つ。
 今日の王子の退き具合、目測500メートルってとこかしら。
 席を立ってからも王子は上目遣いで私に何度も礼をするのだった。ま、王子のこんな表情を見るのは今回が初めてではない。
 でも私は負けません。絶対モトを取って帰るわよ。25万も払ったんだから。←ヤな女だな、私って。皆様はマネをなさらないように。←誰もマネしないって、ねえ?
 私の隣にいた女性も王子と写真を撮っていたので「彼女は北海道から来られたんですよ」と王子に言っといた。サイン会にすら出たことない彼女、王子と少し会話を交わされていた。うん、よかったよかった。一日一善。

 バスに乗る。これから郊外へ行き、Mさん宅でリハーサルを兼ねたホームコンサートが開かれる。
 王子はまたもやファンからぐーーーんと離れてスタッフとふたりきり。
 バスはNYの街を走りぬけ、ヤンキースのスタジアムを見ながらなおも郊外へと向かう。Mさん宅はここから結構遠いらしい。
「高速ではなく下の道を通って行きますので少々時間がかかります」
 ガイドの説明もそこそこに私は後部座席に耳を傾けた。
 あのふたり、何をあんなに楽しそうに話しこんでいるのだろう。
 夢:「後ろ、楽しそうだね、王子、さっきからゲラゲラ笑ってるよぅぅぅ」
 王子をあんなに笑わせるとは・・・いったいなんの話をしているのか。
 旅も後半にさしかかっているというのに、ファンと王子との間に依然として立ちはだかる厚い壁。
 ええいっ、壁をぶち壊せっ、そして叫ぶのだ!

 王子を解放せよ!民衆に光を!希望を!ここは自由の国、アメリカではないかぁっ!!

 と、心の中で旗を振ってみたりしたが、聞こえるのは楽しそうに笑う王子の声のみ。
 
 気を取り直し、考えた。そうだ、彼女を手本にして勉強しよう。モテない女のヒガミみたいに人のことをあれこれ言うのは私の趣味ではない。彼女を手本に、王子に笑ってもらうにはどうしたらいいのか研究するぞ!
 近:「モーツァルトはねぇ」
 モーツァルトがどうしたって?聞き取れない。やはり話題は音楽のようだ。
 夢:「Nさん(王子の隣に座る彼女)はね、元ユニバーサルの人で、古いつきあいだから近藤さんもあの人といると安心なんだって」
 安心、か・・・。私は先ほど500m退いた王子の表情を思い出し、うなだれる。
 

 大きな橋を渡った。橋の向こうには山が。ところどころ紅葉している!
 私の興味は次第に車窓の風景へと移る。山がきれいだわ、奥に行けばもっときれいかも!早く連れてってーー♪
 しかしバスは山の中へは入らず。やがて「TO NEW YORK」と書かれた道へ入った。ニューヨークから来たのに TO NEW YORK?と思ったけれど、山の近くだからそういうこともあろうと大して気に止めてなかったが、そおしさんが、
「あれ?道、間違ってない!?引き返してるよ!!だってさっきあの橋渡ってきたのにどう考えても戻ってるよ」
 私たちのすぐ前に座っていた社長がこっそりささやいた。
「道、間違えたんだよ」
 やはりそうなのか!
 社長:「最初、ガイドさん言ってたよな?高速ではなくて下の道で行きます、って。これ、どう考えても高速だよな?」
 目に写るは料金所。これは誰がどう見たって高速道路だろう。
 社長:「運転手がさ、間違えたんだよ。ところが『間違えただろ!』って言っても『間違えてない!』って言うんだよ。ホント、外国人はそうなんだよ、間違えたって絶対間違いを認めないんだからな」
 社長は困った様子で携帯電話を。Mさん宅に電話をしているのだろう。お仕事ご苦労様です。
 近:「えっ!マジ!?」
 やっと気づいたか。ずっとしゃべくってばかりいたから外の景色なんて見てなかったんだろうなあ。すごくきれいな景色だったのになあ、もったいないな。 
 バスは相当な距離を戻っていったと思う。かなり時間が経ってから山の中へと入っていった。
 まだほとんどの木が緑色だったけれど、ところどころ目の覚めるような鮮やかさで染まっている木があった。あちこちから「わぁっ」という歓声が上がる。
 窓開けたいよー、下りて風にあたりたいよー、木の真下から紅葉と青空を見たいよーーー。王子のことはしばし忘れる。

 そしてMさん宅に到着。意気揚揚とバスから下り、ゆるやかな坂道を歩いて登る。巨大が岩があり、その向こうには・・・。
 白亜の殿堂!まるで御殿のようなお宅が建っていた。
 すげーーーーッ!!!
 中に入ると犬がいた。大きな犬だったけどとってもおとなしくて人なつっこい。あっという間に皆のアイドルになって、写真を撮られまくっていた。
 部屋にはピアノが置いてあり、その部屋の向こうにはテラスがあって、きれいに刈られた芝生の庭が。
 こんな暮らし、どうやったら実現できるのだろうか。Mさんのご職業はなんだろうと気になったが、そんな現実的な質問、誰にしていいかわからないので黙っていることにした。
 カーネギーで王子と共演される荒庸子さんにここで初めてお会いした。
 夢&私:「かわいいーーーっ!」
 荒さん、なんてかわいい人なの!こんな可愛らしい人、久しぶりに見たような気がする。浮かれに浮かれて写真を撮らせてもらった。荒さんはとっても気さくな方で、話しかける人みんなに嬉しそうに対応されていた。かわいいだけでなく、気配り上手で上品でとっても素敵な女性だった。私が男だったら、もしかすると荒さんの追っかけしてたかも。
 そして王子は・・・口の横におできができていた。それを見つけたファンの方に、「そうなんですよー、だんだん大きくなってくんです」と答えていた。
 おできは口の横で日増しに大きくなっていくらしい。話によると、「刻一刻と中で菌が増殖していってるのがわかる」らしいのだ。
 大丈夫かな、王子さま。時差ボケがなかなか治らなくて、夜まだ早い時間に寝てしまって夜中に目が覚めてつらいって言ってたし・・・なんてその場ではそんな雰囲気漂っていたけれど、実は私は心の中で爆笑しとりました。
「刻一刻と菌が増殖していくのがわかる」と大真面目に言う王子・・・んなわけあるかい!お茶目だなあと思って笑ってたのは私だけ?(帰国してから数日間、思い出し笑いするくらいこの言葉がツボにはまっちゃったんだけど。私ってやっぱり変?)

 部屋の中にはワインやチーズ、ケーキ、フルーツがたくさん用意してあった。
 もちろんワインとチーズは外せないが、ケーキもおいしそう!とりあえずはワインとチーズを取りに行き、座席に座る。
 部屋の中にはたくさんの椅子がおいてあり、ソファがひとつだけあった。ソファには誰も座ってなかったので私たち3人で座ることに。
 大きなソファ、ふかふかソファ・・・あー極楽。
 しばらくして演奏が始まった。明日のカーネギーでのコンサートと同じプログラムだったので感想は省略します。MUSICのページをご覧ください。

cake!cake!cake!しあわせ!

 王子の演奏は『月光』から。家で聴く、王子の演奏。
 ショパンはだいぶリラックスして聴かせてもらった。ソファに全身もたれ、天井を見上げ・・・そして目を閉じ・・・

  ここはどこ? 家です。私の家です、私の家 ・・・王子が私の家でピアノを弾いてくれているのよ・・・

 まるで小坂明子の「あなた」の世界・・・皆様、ご存知だろうか、「あなた」の歌詞を。
 ご存知ない方にお教えいたしましょう、下記をご覧ください。

もしも私が家を建てたなら
小さな家を建てたでしょう
大きな窓と小さなドアと
部屋には古い暖炉があるのよ
真赤なバラと白いパンジー
子犬のよこには あなた あなた
あなたがいてほしい
それが私の夢だったのよ
いとしいあなたは今どこに


そして私はレースを編むのよ
わたしのよこには わたしのよこには
あなた あなた あなたがいてほしい


 思わず歌ってしまったそこのあなた。あなたは私より年上でしょう。私はこの歌、中学の音楽の時間で習ったんですもの〜〜。(ゴメンなさい!)
 まっかなバラと白いパンジー、子犬の横には・・・
 あなた〜、あなた〜ッ!
 Mさん宅には暖炉もあったし犬もいた。そして何より「いとしいあなた」がわたしのよこでピアノを弾いていたのです。
 もう、めろめろです。しかし残念ながらこのアタクシには「レースを編む」などという芸当はできません。 

 ホームコンサートが終了し、またまた写真撮影会。そおしさんが「ピアノを弾いてるところを撮りたい」とのことで、王子にピアノに向かってもらうようお願いしていた。うひょひょ、アタシも便乗だーい!
 王子は椅子に座り、カメラ目線。でも「弾いてるとこ」を撮りたいのよねぇ・・・。
 近:「弾いてるとこを撮るんだったら、僕はこっちを見てない方がいいんですよね?」
 はいはいそうです!
 私:「いかにも弾いてるふうに」
 そ:「いかにも弾いてるふうに!」
 私:「目線は前で、片手を少し上げて」
 そ:「手を少し上げてください!」
 便乗組多数、あっという間に王子の周りには人垣ができていたので、そおしさんが大きな声でしきってくれた。こういうお友達がいると楽しいのよね!私はそおしさんのシキリに思いきりとりすがり、おいしい思いをさせていただいた。『ピアノ弾くふりの王子』の写真をココでお見せしたかったわぁ!
 王子さま、ムリなお願いにもニコニコと応じてくださった。なんやかんや言ってもやっぱり王子はステキなお人なのでした。

 大いに満足した我々は家の外でだべっていた。
 夢:「すごくよかったね〜!ソファにもたれてさ、ホントに家で聴いてるみたいだったぁ」
 実際、家で聴いたんだが・・・という野暮なツッコミはやめることにしよう。ココで言う『家』とはもちろん『自分の家』という意味ね。きっと夢子ちゃんも私と同じように演奏中に自己催眠をかけていたに違いない。
 ふと後ろを振り返ると、家の前で王子がひとりで立っていた!!!
 ついに王子解放、民衆のもとへ!ここはアメリカ、自由の国!!「あなた」と一緒に家の前で写真を撮らせて〜っ!それが私の夢だったのよぉ、とばかりにデジカメ片手に即行動。
 ところが王子は家の中に戻っていこうとするのだった。どうやら中から誰かが王子に話しかけているようだ。スタッフか?仕事の話はバスの中でするがよい。
 私:「近藤さん!」
 王子、玄関へと続く階段を登りかけていたが、
 私:「近藤さん、近藤さーん!」
 3回呼ぶと下りてきてくれた。
 近:「はい、はいっ!」
 私:「家の前で写真を」
 近:「はいはいどーぞ」
 王子の略奪に成功した我々は代わる代わる王子と写真撮影。私のデジカメはフラッシュが光らなかったので王子はとても気にしてくれた。
 近:「あれ、光らなかったけど大丈夫ですかね?」
 念のため確かめてみた。ちゃんと写ってた。
 近:「光らなくても、最近のカメラはちゃんと撮れるもんなんですよねー」
 キャッ☆ 王子、フレンドリーだわ♪ ブランチでの「モトとらせろ」発言が効いたんだろうか。
 そして会話に入る。
 私:「今日の演奏、素晴らしかったですねえ〜!」
 夢:「うん、うん!」
 近:「ありがとうございますー」
 私:「私、もぅこのまま帰ってもいいわぁ!」
 そ:「そんなこと言わないで明日も一緒に聴こうよ〜」
 ってなわけだったが、いつの間にか後ろにファンの列が。王子はみんなのもの。私たちは次の人に王子を譲った。
 結局この日は「演奏すばらしかったですねー」「ありがとうございます」で終わってしまった。こりゃ、サイン会並みのショボさだ・・・がっくり。

王子が弾いたピアノです。ライプチッヒと書いてたのでドイツ製?

 再びバスに乗り、夕食の会場であるレストラン「KITTLE HOUSE」へ移動。ここは社長のおすすめレストランだそうだ。
 社長:「ぜひともみなさんをここにお連れしたいと思っていました」
 社長、ファンサービス満点だ。シックで落ち着いた感じの店内、ワインも料理もおいしかった。
 私たち3人は王子のテーブルではなく、社長と奥様、お知り合いの方のテーブルへ。王子のテーブルとは背中合わせだったのでほとんど姿を見ずじまい。でも社長さんたちからとても楽しいお話を聞くことが出来たので、あの席に座ったことは大正解だった。

 王子が座っていたテーブルにはスタッフ込みで7、8人(?)くらいの方々がいたが、皆さまうっとりと王子の話に聞き入っていらした。
 ええなぁ・・・おいしい料理を食べ、ワインを飲みながら、時間も気にすることなく聴く王子の声。長い長い夢物語を聞いているかのような心境なんだろうなぁ。私たちのすぐ後ろのテーブルでは王子の甘い声がふわふわと響いているのだった。

 一方、私たちのテーブルはと言えば・・・

 社長:「近藤君は話が長いからねー。しかも内容がないんだよ。だから僕はいつも言うんだ、『もっと内容のある話をしろ』って」
 一同:「アハハハハ」(返答のしようがないので笑うしかない)。
 社長:「青柳君(ピアニストの青柳晋氏。彼も同じ事務所の所属)は話がうまいんだけどねー。コンサートではしゃべりたがらないけど、『やれ』って言ったら、実に上手くこなすんだ」
 あー、そんな感じだろうなあ。私は青柳さんのソロコンサートには一度しか行ったことないし、しゃべりを聞いたことはないけれど、なんとなく想像できる。
 私:「青柳さんって頭よさそうですよね。HPの文章、私とっても好きなんです」
 社長の奥様が激しく同意してくださった。
 奥様:「そうでしょ!いいでしょ〜〜〜!ねえ!」
 社長:「うん、確かに彼は文才がある。日記のページは特にいいね。あれは本を出せるよ」
 私&夢:「出してくださーい!買います!!」
 ほんとに出してほしいなあ。パソコンの画面ではなく、本として手にとってじっくり読みたくなる文章を青柳さんはお書きになるのです。 
 
 社:「でもね、話すことと弾くことっていうのは全く別の脳みそ使うんで大変なんだよ。近藤君もね、演奏前のトークが終わって袖に戻ってきたときには『このまま貧血起こして倒れるんじゃないだろうか』って思うくらいぐったりしてるんだよ」
 !!!!! 王子・・・・・・毎回そんな思いをしてまでトークをしてくださっているの!? 軽々しゃべってるように見えるけど、彼は毎回身を削るような思いでお客にサービスしてくださっているのです!「クラシック音楽を身近に感じてもらえるように、コンサートを心から楽しんでもらえるように」との王子の心遣いと熱意。私、心底感動しました。
 王子とつきあいの長い、社長の奥様が「昔はね、いろんな子(演奏家や学生)が来てね、そういう時、みんなそれぞれ交代でピアノ弾いて楽しんでたりしたんだけども、近藤君は一度ピアノに向かったらなかなか離れないの。ずーっと弾いてるんだから。近藤君はほんっとにピアノが好きなのよ」とおっしゃっていた。
 カラオケ行ったらマイク離さず、かのごとく、ピアノを弾いたら離れない王子。目に浮かぶわぁ、きゃっ♪♪♪ ほんの少し「ピアノにジェラシー」だわ♪←危。
 王子は来年、デビュー10周年。全国各地でコンサートをされ、多忙な毎日を送ってらっしゃるが、陰で支える事務所の方々も大変な苦労をされてるようでした。社長はかなり革新的な考えをお持ちの方で、コンサートばかりでなくサイン会やパーティなどを企画し、ファンと演奏家の絆をもっと深めていきたいとおっしゃっていた。
 社:「だって『ファンあってのアーティスト』じゃないの、そうでしょう!?近藤君は『特定のファンの人と親しげにするのはよくない』って思ってるみたいだけど、僕は『もっとファンサービスをしろ』って言ってるんです。いいじゃない、近藤君だってその場のお客さんのノリで楽しんだら。僕はそう思う」
 そおしさんの「王子と腕組み写真撮影」は知る人ぞ知る、って感じだが、
 社:「彼女のいいところはね、めいっぱい楽しんでくれるところ。近藤君と腕組んで写真撮って、今日は楽しかった!って言って帰ってくれると僕もうれしい」
 そうか!そう言ってもらえると勇気が出ます!単純に喜ぶ私なのでした。
 

 とても楽しい時間が流れた。ワインもたくさんいただいた。大満足!しかし王子との距離は遠い。
 私:「また隣に座ってるなぁ」
 スタッフのNさんはバスの中でも道でもレストランでもずっと王子の隣でサポートを。真面目に仕事をまっとうしているだけなのはわかるが、あんなに始終くっついてることもなかろう?Nさんは仕事熱心なだけではなく、足が長くて美人でおしゃれで英語も堪能らしい。
 社:「彼女はとても優秀でね、ホントはうちで雇えるような人材ではないんだよ」
 納得できるが面白くねえや、と私は「モテない女のヒガミ」路線へ逆戻りしそうになりつつ、ちょっとトイレへ。酒が入るとトイレが近くなるのよねえ。
 用を済ませ、席へ戻ろうとした。ところがこのレストランは入り組んでいて暗いので、情けないことに自分がどこから来たのかわからなくなってしまった・・・・・・。なので誰かに連れて帰ってもらおうとトイレの前で待つことに。
 出てきたのはなんとNさんだった。お、おまえが出てきたかぁっ!と恋敵(?)の出現に動揺したが、私は素直に「道がわからなくなりました」と言い、Nさんに連れて帰ってもらったのだった。
 Nさんは動作もテキパキ。アタシャ何も言うことございませんです、ハイ(泣)。

 そしてレストランを出てホテルへ戻った。同じテーブルだった方に楽しい時間を過ごせたお礼を言い、社長さんにも写真を撮らせてもらった。腕を組んでもいいですか?と言ってみたら、「いいよ、いいよ、ではこうして撮ろう!」と肩を抱いてくださった。こぉれは貴重な写真だぞぉ♪
 というわけで今日の収穫はたくさんあったが、肝心の王子との交流は全然ダメだった・・・。
 そおしさん、夢子ちゃんとホテルのバーで呑みなおす。ええぃ、ヤケ酒じゃーーー!!!しかしホンマによく呑むなあ、我々。さっきもワインをたらふく呑んだのにな。
 私はロングアイランドアイスティーとサイドカーを。サイドカーを呑んでる途中で「閉店過ぎてますよ」とバーのお兄さんに言われて焦り、ストローでごくごく一気呑み。こちらのカクテルはグラスも大きく、2杯も呑んだらおなかいっぱい。
 急に来た・・・・・・来た、来た・・・。気持ちわる〜〜〜い。
 そ:「ストローで呑んだら来るよ。よく呑むなぁって見てたんだけどね」
 それを早く教えてくれよぉぉぉぉぉっ!!

 カーネギーホールでのコンサートを明日に控えて、私はホテルの部屋で便座を抱えることになったのだった。夢子ちゃんとそおしさんがデリでカップラーメンを買ってきて食べていたが、私はお茶を飲みながら便所でゲーゲー。吐いたらラクになるよ、夢子ちゃんが言ってくれるが、ここで吐いたらあんまりみっともなさすぎゃしねーか・・・。
 王子を追いかけ、NYへ。ろくな会話もできずに最終日を迎えるアタシ。そして呑みすぎて便所でゲェゲエ・・・。
 
 NYへ来て4日目。そろそろダーリンが恋しくなってきた。


10月12日(火) コンサート開演まで自由行動 
 自由の女神を見学、その後5番街をうろうろ 
 19:30  カーネギーホールでコンサート
 22:30  レストラン「DELL’ARTE」にてパーティ

滞在中、何度か利用したニューヨーク地下鉄。意外と快適(夜は怖いらしいけどね)。

 昨夜は吐くまでには至らなかったが、目覚め最悪。気分はちっともよくならず。今日はそおしさんの希望で自由の女神を見に行くことにしていたので、私はビニール袋を2枚、バッグにしのばせて出かけた。これで何が起こっても大丈夫だ(違うか?)。
 地下鉄で南へ下る。なんとかビニール袋の活用は避けられた。駅を出て歩いていたら女神が見えた。
 3人:「遠いなぁ」
 遠くの島に女神が見えた。思ったよりも距離があり、小さくしか見えない。
 あー・・・・・・一気に気が重くなる。
そ&夢:「これは遠いなー、やっぱり乗って行こう」
 あー・・・・・・島へ渡るのか。私たちはチケットを買い、行列に並んだ。目の前に見えるは船。この船に乗ってあの島へ渡るのだ。

  船かァ・・・・・・ 
 

 燃料の匂い、波立つ水面、ゆらゆら揺れている船。これはマジでビニール袋の世話になるやもしれんぞ。

 ア、アタシ、今夜のカーネギーホール、行けるかな、いや、マジで・・・。

 船に乗るまで1時間は並んだ。ここでもセキュリティ−チェック厳し。夢子ちゃんが後ろに並んでいた外国人に「梅干味の茎ワカメ」をあげていた。
 夢:「あっこちゃん、梅干味って『プラムフレーバー』でいいんだよね?」
 いや、私はそれどころではない。アタマ使いたくないの、後ろ振り向きたくないの、首動かしたら吐き気がぁぁぁ! ということで適当に返事してしまった。
 私:「うん、いいと思うよ」
 でも、梅干=plumはなんとなく違うような気もするな。プラムピクルス?ドライドプラム?ソルティッドプラム?うーむ・・・わかんねえ!(正解はpickled plum またはsalted japanese apricot)。
 外国人:「(茎ワカメを食べながら)何、これ!?」
 夢:「シーフード」
 外国人:「シーフード?!何、これ!ホントにシーフード?」
 夢:「シーフード、だよねえ?」
 えーと・・・ワカメって英語でなんだっけ?ワカメ、ワカメ、ワカメ、わけワカメ。
 外国人:「シーウィード?」
 ああっ、そーそー、seaweed や!
 私:「イエス、イエス、シーウィード」
 アタマ、フラフラや。外国人は茎ワカメの味を『ユニーク』と言っていた。どうやらお口に合わなかったようだ。
 しかしseaweedは「海藻」という意味だから、そうなるとワカメも昆布も海苔もみーんなseaweed・・・???
 もう、考えるのはよそう。考えたってわかんないし・・・。

 やっと船に乗るもなかなか出発しない。私はトイレの場所を確認し、ずっと空を見上げていた。抜けるような青空を。さっき「梅干味の茎ワカメ」の英訳でアタマを使ったのがコタエた。
 船が出た。次第に遠ざかるマンハッタン。なかなか素晴らしい光景だ。思ったほど船も揺れない。

マンハッタンから遠ざかる船の上から


 どや!!これが自由の女神や!!

正面 真下 後ろ


 これがあの「自由の女神」かぁ。やはり目の前で見るのは独特の感慨があるもんである。昔は女神の内部まで入ることができたそうだが、今は警備が厳しく、台座の部分までしか入ることが出来ない。
 せっかくなので台座の中に入ってみることに。案内所で無料チケットをもらい、列に並ぼうとしたら係員に引き止められた。
「その荷物、ロッカーに預けなさい」とのこと。ここでもセキュリティーチェックがあるのだった。
 ロッカーは『指紋照合式』。日本のコインロッカーは『カギ式』だけど、こちらのは荷物をロッカーに入れる前に指紋をスキャンする。そうするとロッカーのカギが開き、荷物を出す際にはまた指紋をスキャンする。そうするとロッカーが開く、という仕組み。
 荷物を預けて列へ並び、エレベーターで登る。中は『自由の女神博物館』みたいになっていて、女神の顔や足の実物大モデルや年表などが展示されていた。
 

 見学を終え、荷物を取りに。ロッカーで指紋をスキャンするも「Bad scan」の音声が流れるのみ。何度やっても同じ。
 日本のロッカーはカギ式なので、カギに番号が書いてあるが、こちらのはカギがないので自分で何番のロッカーに入れたか記憶しておかなければならない。私と夢子ちゃんは番号を忘れてしまったが、そおしさんはちゃんと覚えていた。なのに開かない。
 私:「記憶違いかもよ。別のとこでやってみよう」
 今度は隣の番号でスキャンしてみたが相変わらず「Bad scan」。困ったな。埒があかないので係員を呼び、「番号忘れてしまった。多分このあたりなんですけど」と言ったらめちゃくちゃイヤな顔された。グスン。バカな日本人め、って思ってんだろーな、コイツ・・・。
 結局そおしさんの記憶は確かで、機械の調子が悪いだけだった。やっぱりロッカーはカギ式が便利だなあ。

 女神を堪能した私たちは再び船で戻った。私の体調はまだすぐれない。おかしい・・・あの程度の酒がここまで尾を引くとは思えない。だって時刻はもう昼をとっくに回ってんだぜ。
 わかった・・・私は疲れているのだ。この吐き気・・・仕事がキツかった時、帰りの電車で猛烈な吐き気と戦っていた頃を思い出した。1年くらい、ほとんど毎日吐き気がするので不安になって病院を2回変えて診てもらった。あの頃は「疲れてるんでしょう、薬を飲んでなさい」と医者に言われ、喉の薬と精神安定剤をもらった。
 アタシって繊細だから。王子の気配を感じつつ過ごす毎日に精神がまいってしまったのだよ。
 え、違う?毎日呑み続けてるからだって?うん、いくら酒好きでもこんなに毎日呑み続けることってないものなぁ。
 結局「呑みすぎ」なのね、この吐き気は。うーん、でもでもやっぱり王子と会話するのは緊張しますです。

 次は5番街を散策。夢子ちゃんが友達の出産祝いを買いに「ティファニー」へ行きたいと言うのでついていった。
 さすが本店って感じ。見ているだけでため息が出るほどのきれいなアクセサリーがたくさん。夢子ちゃんのお目当ては乳児用玩具。友達は医者に嫁入りし、お金に糸目をつけない日々を送っているそうだ。
 でも赤ちゃんはなんでも口に入れるっていうやん?シルバーなんか口に入れても大丈夫なんだろうか。
 夢:「銀は歯にいいんだって。だから口に入れてもいいらしいよ」
 へええええ、ひとつ賢くなったが、この知識を活用することは私にはなさそうね。
 

5番街(のはず)。奥に見えるのがエンパイアステートビル。

 ティファニーの次はカーネギーホールへ行って外観の写真を撮影。コンサートは夜なのでまだ明るいうちに写真を撮っておきたかったので。
 ホテルに戻り、オペラの時と同様、ドレスに着替えて髪をアップにしてヒールを履いて出かけた。
 コンサートの模様はMUSICのページに書いたので省略します。
 体調は依然としてすぐれなかったけれど、吐き気はおさまってました。

 コンサートは成功をおさめ、王子は確実に新たな一歩を踏み出された感がした。喜びに満ち満ちて私たちはパーティ会場へと。
 最後の夜だ。今日こそは王子と会話するぞ!!
 @対話する(一問一答ではなく、話をもたせる)
 A楽しく(かみ合わない気まづさからいい加減卒業し、王子から笑いをとる) 
 Bツッコミを入れさせる(もちろん王子に)
 壮大な目標を掲げ、パーティに挑む。BはムリかもしれないがせめてAくらいは達成したいところ。
 王子が登場。一番乗りをめざしたが先を越された。考えることは皆同じなのねー。今夜が最後だもの、王子とゆっくり話す機会なんて。
 私はいまだ体調不良。お酒を呑めそうになかったのでオレンジジュースで。こんなにめでたい席なのに呑めないなんて悲しい。しかしこの逆境を逆手に取ることに。呑んで酔ったふりして話をしよう。
 私たちは王子にコンサートの感想を述べ、お客さんの評判もよかったことを伝えた。王子はちょっと照れ模様。
 近:「今日はドレスアップして来てくださったんですね」(お!今日はなんだか勝手が違うぞ。これはいい感じ?)
 私:「この日のために!」」
 夢:「何ヶ月も前から!」
 私:「上司に根回しして休暇をもらい!」
 夢:「ダイエットもして!」
 私:「貯金も底をつき!」

 近:「それはどうもすみませんでした・・・・・・」

 早速スベった。
 あーあ、笑ってくれないなあ。夢子ちゃんゴメン、あの場は私が盛り下げてしまいました、トホホ。
 ※「貯金が底をついた」というのは私個人の「おこづかい貯金」が底をついたのであって、家庭の貯金には手をつけてはおりませんので念のため。


 今夜は昨日と違ってビュッフェスタイル。おいしそうだったけど食欲ないので少しだけつまむ程度しかできなかったのが残念。
 しばらくすると王子が各テーブルをまわり、挨拶を始めた。私たちの所に来ると、
 近:「あ、こちらはさっきお話しましたね」
 何度話してもよかろう。だって王子の「おしゃべり好き」は有名ではないか!コンサートでもラジオでもしょっちゅう言ってるではないか。「僕はしゃべってないとダメなんですよ」と。私はそれを聞くたびに「そうか、そうか、しゃべりたいのか、よっしゃ」とひとりで喜んでいるのでしたが、勘違いでしょうか?
 というわけで、とりあえずは写真撮影、まずは夢子ちゃんから。
 私:「ちょっとそれとそれ貸して!これ持って写してもらうから!」
 テーブルに置いてあったカクテルグラスをふたつ拝借し、ひとつを夢子ちゃんに渡す。そして撮影者・足が長くて聡明なスタッフNさんに、
 私:「カメラは縦向きで!」(私と夢子ちゃん、ちょっといい写真立てを買ったので、それにおさめる写真を撮るべく)
 私:「ハイ、近藤さんはこれ」
 もうひとつのグラスを無理やり王子に握らせ、完全・シキり状態。アタシ大阪のおばちゃんでっさかい、カンニンな!
 混乱の中、無事に撮影終了。いい写真が撮れたかしら・・・どうだった?夢子ちゃん。
 私ももちろん同じポーズで。Nさんがちゃんとカメラを縦に構えているかをチェックしたあと、隣でグラスを持つ王子に一言。
 私:「笑ってくださいね」
 近:「注文多いですね」
 聞き流し、撮影は無事終了。そして王子に座ってもらい2度目のトークに入る。
 「近藤さん、やっと帰れますねぇ」と切り出したのは誰だ?私か?多分私だろう。
 近:「?」
 覚えてない?私は覚えていますとも。空港でのあの一言は聞きずてならぬぞ!
 私:「近藤さん、こっちに着いた時、『終わったら早く帰りたい』って言ってたじゃないですか。こんなファンの集まりなんかどーでもいいみたいに聞こえました」
 アル・カイ−ダもびっくりの爆弾投下。
 近:「そんなこと言いましたっけー?」私:「言いましたよっ!失礼ですよねー、近藤さんって」近:「こまかいですねぇ、まいったなぁ、ハハハハハ♪」
 なーんて具合にはいかなかった。
 王子は真顔で一生懸命、ファンのみなさんとこういう機会が持ててうんぬん、と釈明するのだった。その『諭すような口調』に私はビビる。周囲は次第に重々しい雰囲気に・・・。
 またしてもスベった。今日もスベり出し好調だ・・・などと笑える状況ではない。王子、かなり困っているのが手にとるようにわかる。ゆっくりとひとことひとこと言葉を選び、一生懸命考えながら話し続ける王子の姿が痛々しい。いたたまれない。

 しまった・・・しまった・・・しまった・・・これはシャレになってないぞぉ・・・こりゃまるで「イジメ」じゃないか・・・

 
うぁぁぁぁアタシもぅこの場から逃げ出したいッ!
 長い間王子は釈明していたけど私は動揺のあまりちゃんと聞いてなかったです、ゴメンなさい。自分で言っといて自分で動揺するならそんなこと初めから言うなっちゅーねん。
 近:「たまにはね、こういう機会もいいですよね、なかなかできませんしね」
 あぁ、申し訳ないほど真面目な王子。まだ釈明は続く。
 近:「こんなこと言うとまたチャチャ入れられるかもしれないけど」
 うわぁ、『チャチャ入れ女』って言われたぞ・・・しかもこっち見ながら言ってるぞ。見ないでちょーだい、とばかりに顔を隠すリアクションをしてみたが、反応イマイチ。
 そして王子は隣のテーブルへ去っていった。
 あーあ・・・明らかに言いすぎだな。こりゃホンマに嫌われたかもしれんな。
 あーあ、今回もスベりまくりだな。スベって転んで頭打ったヒトみたいだな、私・・・・・・。

 パーティではいろんな方と話した。ピアノの杉山さんやご両親、荒さん、ニューリット・パクトさんにも勇気を出して英語で話してみた。サインもいただけて感激。やっぱり輝いている人と接するのは楽しい。自分の無力を意識せずにはいられないけれど、そういうことも必要ですね、豊かな人生を送るためには。

 ジュースを飲みつつひそかに休憩。たくさんの人が王子のそばで会話している。みんな楽しそう。王子だって絶対こんなふうな盛り上がりの方が楽しいって思ってるはず、と思えるくらいにいい雰囲気だった。
 私と夢子ちゃんはもういちど王子のもとへ。杉山さん・荒さん・パクトさんにサインをもらったので、王子のサインもほしい。
 夢:「すみませんがサインを。で、何か一言書いていただけますか?今日の感想とか決意とかなんでもいいので」みたいなことを言った。やるなぁ。
 王子、うんうん悩み、バーカウンターに座って背中を丸めてしまった。ペンはなかなか動かない。
 私:「この際こっちから言葉を指定したら?『素敵な君へ』って書いてもらい」
 と、夢子ちゃんに耳打ち、そそのかす。
 悩みに悩んだ王子、結局言葉が思いつかないようだ。
 近:「そちらから決めてもらった方が・・・」
 待ってましたとばかりに私と夢子ちゃんは声を揃えて、
 
 「じゃあ・・・『素敵な君へ』!!!!!」

 こうなったらとことんスベってやろう。もう起き上がれないくらいスベってやろう。

 近:「あ、じゃあこういうのはどうですか?君へ、じゃなくてお名前を入れるってのは」

 !!!!!王子から反応あり!これはちょっと、いや、かなりうれしいぞ!
 それにしてもその粋なはからい、魔性を感じずにはいられない。
 夢子ちゃん、「すてきなOOさんへ」と書いてもらった。うわぁ、アタシまで照れるなぁ。でもアタシは普通にサインだけでいいや。「注文多い」って言われたし、さっき思いっきりあげ足とって困らせたし。アタシ、いったい誰に向かってモノを言ってるのかしら。しばらくおとなしくしてようっと・・・。←ホントに真剣にそう思ったのです。
 私:「私は普通にサインだけでいいです」
 近:「?」
 私:「言葉はいらないです。サインだけでいいです」
 不思議そうに首をかしげる王子。
 私:「あんまりあれこれ言って近藤さんに嫌われちゃったら悲しいので・・・」

 近:「なぁーにをおっしゃいますやら〜〜〜」

 !!!!!えっ!ウケた?王子、笑ってるぞ、ウケたのか!?目標A、達成ということでよろしいか? 
 王子は『そんなこと言ってないでこっちへいらっしゃい』とばかりに腕を広げ、「さぁさぁ、ねっ♪」と私を呼んでくれた。きゃぁぁぁ王子が笑ってる、笑ってるよー!\(^0^)/
 今しがた「帰りたい発言」を蒸し返してあげ足とったのに怒ってないのん?なんて懐が深いお方なのかしら〜ん♪(ホント、すごい優しい人なんだなあと感動しましたです)。
 ファン歴3年半。スベり続けて3年半。
 2004年10月12日、やっと王子から笑いをとれた!熱い感動を胸に王子の隣に行く。浮かれに浮かれ、そして懲りずに調子にのる。
 私:「さて。私の名前は何でしょう?」
 近:「うー・・・えーっと、あ、あ?あ・・・」
 実はパーティ開始直後にパンフレットに「あっこちゃんへ」と書いてもらっていたので、私の名前が「あ」から始まることは覚えてくれていたようでした。
 また困らせてしまって気の毒なので、私はすぐに本名を名乗る。
 近:「XXさんですね」
 王子は私の名前を漢字で書いてくれた♪

 「すてきなXXさんへ」
 マジ照れ・・・ちょっとホントに恥ずかしい。直視できない。魔性の王子、やってくれるわ。
 と、ニヤニヤしつつも脳裏にちらつくは日本で待ついとしいダーリン。ダーリンには悪いが今日は特別な日。今日だけは私の脳裏から消え去ってもらおう!!てなわけでダーリンの面影、記憶のかなたへ無理やり押しやった。ゴメンねえ、ダーリン。
 ところが王子はこんな私の思惑を全て見透かしていたのだ。

「ダンナさんほったらかしで来てるんですよねーっ!よろしく言っといてくださいよぉ〜〜〜」

 思いもよらぬ王子の反撃に私は「棒で叩かれた犬」状態。キャイ〜ン!
 あわあわあわ、ちょっとその話題は、そのテの話はちょっと弱いので・・・あわわとロレツ回らず。
 王子、お見事!ズバリ言い当てるところが素晴らしい、人が一番気にしていることをッ!!! 
 ええ、確かにほったらかしですとも。会社の人にも友達にも親にも責められましたとも。でもまさか王子本人にまでこんなことを言われようとは。
 く、く、くやしーーーーーいっ!!!
 でもこれって、目標Bを達成してるよなぁ。「王子にツッコミ入れさせる」ってのに。狼狽しつつもこんなフレンドリーな王子に大変感動した私であった。これこそまさにアメリカン・ドリ−ムだ。
 私:「また今度、ふたりで聴きにいきますよ」
 と言うと、王子はとっても喜んでくれた。いいなぁ、うちのダーリン。王子に「よろしく」なんて言ってもらえてさ !←ダーリンにジェラシー。
 王子さま、結構呑んでらっしゃった様子。空のビールグラスを手に持ってたので。どうやらお酒が入ると陽気になるタイプみたいです。そういう人、アタシ、だーい好き♪♪♪
 しかし「今日くらいは独身のふりをさせて♪」と思ったりなんかして!←爆弾発言。

 しばらくしてひらめいた。ダンナの話が出たのでいい機会。去年の結婚記念日の謎について聞いてみようかなぁ。
 夢子ちゃんが「王子が今ひとりだったよ」と言うので、単独で行動開始、バーカウンターでくつろぐ王子に声をかけた。
 でも覚えてるかなぁと思ったので、一応コトの概要を説明したら、王子は覚えてくれていた(「結婚記念日、おめでとうございます・・・って言うべきでしょうか」の件です/MUSICページ;2003.12.25のレポート参照)。
 近:「結婚した、じゃなくて『記念日』ですからねえ、こういう場合はおめでとう、なのかなあと思って。でもあとで考えたら『おめでとう』でよかったんですよね。で、僕がそういうこと言ってもいいのかなぁという気もして、パニックになっちゃったんですねえ」
 そーか、王子もパニック状態だったのか、しかし私の方がパニックでしたわよ、絶対!!

 騒がしい店内の隅っこで、カウンターの脚長の椅子に腰掛けている王子。
 笑顔が素敵でピアノがうまくて、3年半もの間、楽しいときも苦しいときも、絶え間なく美しい夢を私に見せ続けてくれた王子さまに聞いてみた。
 「結婚って人生の墓場ですかねえ?」
 「そんなことないと思いますよ」
 即答。王子は照れる様子も戸惑う様子もなく当然のようにさらりと言った。「そんなことないと思う」と。
 胸、きゅぅぅぅぅん。
 かっこいい・・・かっこよすぎる、その口調、そのセリフ、その横顔。
 なんて素敵な人なんだろう。脚長の椅子に座っている王子の横顔を見ながら、私はそう思ったのでした。
 帰ったらダーリンにこのことをまっ先に話そうっと。王子さまはやっぱり素敵な人だったよ、これからもきっと美しい夢を私に見せてくれるよ、だからこれからもずうっと王子さまに恋をしていてもいい?って!
 それからいろいろ話して(どんな話だったかな、たわいもない話だったと思うので覚えてないのです)、王子の方からも話題をふってくれ、すごく気を遣っていただいたのですが、会話の内容全く思い出せず。私、ちゃんと答えられてたかなあ、頭の悪さが露呈してなきゃいいけどなあ(もうとっくに露呈しているという説もあり)。ホントに記憶ないので不安・・・。なんで覚えてないんだろー、もったいないなぁ。アタシのバカ、バカッ!
 留学時代の話をしたのかなあ。「近藤さん、ほんとに留学時代が楽しかったんだんだなあ」と思いながらホテルに帰った記憶がありますんで。

 王子、オペラはカルメンではなく、「ワルキューレ」を観たそうです。ヨーロッパで何回か観たんだけど、もう一回観たかったんだって。あと、語学は英語は苦手だけどドイツ語なら話せるとのこと。でもドイツ語できたら英語なんて簡単にマスターできるでぇ、もったいない!
 ドイツ語教えてほしいなぁ・・・。公開ピアノレッスンよりドイツ語レッスンやってくんないかな。『NHKラジオ、ドイツ語講座の時間です、グーテンターク!講師の近藤嘉宏です!』なーんてね。アタシ、1年くらいでドイツ語ペラペラになってるかもよー。
 ちなみに関西弁は話せないそうです(王子が子供の頃に4年間、関西に住んでたというのは雑誌などに載ってたのでご存知の方も多いはず。でも今は話せないそうです。残念!!!)。
 

 パーティはお開きに。もうじゅうぶん満足したので私たちは王子を待たずにホテルへ帰った。
 私:「つかれた・・・・・・」
 夢:「もう全部終わっちゃったからねえ」
 ベッドの上で抜け殻状態。疲れた・・・あとは日本に帰るだけ、と思うと更に脱力感が。
 でも楽しい一日だった。充実してました。王子に強烈なツッコミ入れられたし、関西人としてこんなに喜ばしいことはなかったです。

10月13日(水) 
 11:30  アメリカン航空にて成田空港へ(所要14時間30分)

 早朝、ホテルロビーにて集合。もちろん王子も一緒にバスに乗って空港へ。帰りは荒さんも一緒。楽器が重そうでした。
 空港では往路と同様、そおしさんがセキュリティで引っかかりました(安全ピンジッパーのついた服を着ると確実に引っかかるようです。皆様もお気をつけください)。
 で、ツアーの面々、昨日のパーティの賑やかムードはいずこへ?またもや、誰も王子に駆け寄らずモードに戻っていたのでした。私も同様。ひとことも話さず。でももう満足です、私。
 昨日のことは夢だったに違いない。今日からはまた「サイン会やパーティでちょっとだけ話せて喜んで」という日々が始まるのです。
 楽しかった夢の記憶を胸に、これからもファンを続けてゆきます。ありがとう王子さま&ごめんなさい・・・今度話す機会があれば非礼をお詫びせねば。でも当分サイン会には並べないなぁ、CD買うお金ないようううう。
 社長さんやスタッフの方にも感謝です。とても楽しい旅を演出してくださいました。ホームコンサートの場所を提供してくださったMさんにもひたすら感謝です。
 最後になりましたがそおしさん・夢子ちゃん。
 楽しい旅が出来たのは何よりもあなた方のおかげです。Thank You!これからもよろしくっ!

10月14日(木)
 14:50  成田空港到着
 
 
携帯の電源を入れると、ダーリンからメールが入ってた。「お帰り、楽しかったかぁ?ポン(愛猫・寅次郎の愛称)も押入れの中で待ってるから早く帰りぃな」
 うん!飛んで帰るわよおおお♪
 成田から伊丹への飛行機はビジネスに乗ることができたのでラッキー。リクライニングが電動だったので嬉しがっていろいろ試してみました。
 
帰宅し、寅次郎に再会。どーやら忘れられてはいなかったようだ。廊下で腹を見せてひっくりかえる寅次郎としばし戯れ。
 ダーリンは仕事で遅くに帰宅。玄関で飛び跳ね回って、最後には首に抱きつきほっぺにチュー。
 というわけで、めでたしめでたし。
 

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 半端でない長文、読んでくださってありがとうございましたっ。m(_ _)m NYの魅力と近藤さんの素敵な「人となり」が伝われば幸いです。
 王子さまは、音楽を心から愛していて・真面目で・シャイで・お茶目で・優しくて・ちょっぴり辛辣(?)で・やっぱりかっこよくて素敵な人で。ますます好きになりました。(*^.^*)