序
蓋聞、清きものは靡きて天と濟り、重きものは固まりて地と成る。本朝は太古神祖の開闢る御洲にて、皇祖降臨まして鴻基を治む。爾來風氣を維持て王朝は聯緜たり。
聖明の徳澤は普く臣民に達し、文化は駸駸て人材を輩む。典律は自から茲に備り、四海は静謐りて治まる。皇國は天壌の窮ること無く繁榮て、以て國躰の精華を知る。
臣民、姓は帝より賜ひ、氏は其封邑及官職より興る。本支は百世にして、濟濟多士。諸氏の譜は其の修むる處、先人の偉業を擧げ、忠君愛國るを鑑と爲す。
是れ草創の宗祖、守成の系流を知り、以てその昭穆を明かしむ。此れ一族の榮枯を録し、以てその盛衰を卜ふ也。
先賢曰く、獨り世譜の備はらず、氏姓の根源を知らず、祖靈の眞意を思らざるの族輩は、下は孝に非ず、上は忠を害ふと。實に嘆きの至りと云ふ可きか。
當に此れを撰する處の意は茲に在り。豈に先人の忠勲を念はざる哉。厥のコを聿べ修む。庶幾はくは遺漏の莫らん事を欲す。
撰者謹識