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会報巻頭文

澤野義一

2018年1月
憲法9条の会・関西 次回学習会 2018年7月14日






会報91号巻頭文 2018年1月

安倍改憲と国民投票法の問題   代表世話人 澤野 義一

 安倍首相は、本年1月4日の年頭記者会見で、「今年こそ、新しい時代への希望をうみだすような憲法のあるべき姿を国民にしっかりと提示し、憲法改正に向けた国民的論議をいっそう深めていく」と述べた。昨年10月の衆院選挙で改憲勢力が8割になった状況下で、改憲を本格化させるつもりなのであろう。自民党は、安倍首相が提案した改憲4項目(自衛隊明記、緊急事態条項創設、教育無償化、参院合区解消)を中心に改憲案の論点整理や作成に取りかかっており、早ければ本年中に通常国会ないし臨時国会で改憲を発議し、国民投票にかけるスケジュールを想定していると思われる。

 しかし、自民党改憲案の内容や改憲日程等がメディアや国会で問題にされている一方、国民投票が依拠する現行国民投票法の問題がほとんど議論されていない。もし、その問題点が検討されることなく、同法に基づいて投票が早急に行われることになれば、自民党等の改憲勢力に有利な結果をもたらす。野党が同法の修正を国会で実現することは議席的に困難な上に、修正論議をすることは改憲を促進することにもなるため、安倍改憲に反対する立場からは、投票法に対しては廃止を含め適用すべきでないことを主張すべきである。  

 憲法改正国民投票法の主要な問題点は以下の通りである。

 @広告規制については通常選挙と異なり有料広告やその資金源に規制がないため、自民党は最高額の政党交付金のほか財界や神社本庁等からの寄付金(何百億円ともいわれる)を基に、電通や博報堂等の広告代理店が支配するテレビCM等を通じて改憲をPRできる。これは野党や市民にはできない。国民投票協議会を通じた無料広告については政党が中心で、市民団体に認められないのではないかといった問題もある。

 A公務員と教員の地位利用による投票運動は禁止されているが処罰規定はない。しかし公務員法等で処罰される恐れがあり、公務員や教員の改憲にかかわる表現の自由を抑制することになる。

 B改憲反対派にとっては改憲のPRや運動が制約される中、改憲発議から国民投票までの周知期間(60日から180日以内)が短い。

 C関連しない改憲項目(自民党改憲案の「お試し改憲」項目を含む4項目等)であっても、同時に改憲発議し投票にかけることが憲法審査会の議決で行われてしまう恐れがあるが、これは単純に賛否を問う国民投票のあり方としては不適切である。

 D国民投票に関し最低投票率規定がないことは、積極的に改憲を支持する少数の有権者の賛成だけで改憲が成立する恐れがある。

 E国民投票が承認される国民の過半数については、棄権や無効票が含まれないため、通説の投票総数でなく、実質的に有効投票となっていることは改憲提案側に有利である。

 F投票無効訴訟については、投票行為や投票数の計算の問題等に限定され、現行憲法の3大基本原理が改悪された場合(憲法改正の限界を超える改正)の違憲訴訟は想定されていない。


89号 2017年11月発行 巻頭文


第4次安倍政権下の改憲発議の危険性

                                   代表世話人 澤野義一


10月22日の衆院総選挙を経た11月1日、自民・公明与党による第4次安倍政権が発足した。自公は総選挙で国会の改憲発議に必要な3分の2(310)を上回る313議席を獲得し「圧勝」したこと、また安倍首相・政権への不信から議席を減らすと予想された自民党が選挙前の議席数をほぼ維持したことから、安倍首相は選挙公約が有権者に支持されたとして公約を実行しようとしている。

公約の重点項目とされた改憲については、選挙後の23日の記者会見で首相は、「公約に書かれた基本的な考え方にそって具体的な条文案件について党内で議論を深め、自民党としての案を国会の憲法審査会に提案していきたい」とし、「与党、野党にかかわらず幅広い合意形成をするように努力を重ねる」と述べた。この発言は、今回の選挙で、維新の会や新たな希望の党などの改憲派野党議員を含めると改憲勢力が8割にもなることを考慮したものと思われる。

なお、自公の313議席は、民進党が解党して希望の党に吸収されたため、選挙前(参院選)のような4野党共闘ができずに小選挙区制の下で野党分裂的な選挙が行われたことが、自公を有利にした結果得られたものである(小選挙区制による「虚構の多数議席」)。4野党共闘が実現していれば、62の小選挙区で野党が逆転勝利していたというシミュレーションもある。この計算によれば、与党は251議席どまりで、与党だけでは改憲議席を得られなかったことになる(日経新聞10月25日、類似の指摘として朝日新聞10月24日)。

それはともかく、安倍首相は改憲日程についてはスケジュールありきではないと述べているが、改憲勢力が8割ある中で在任中の改憲を行うためには、これまでのような、あれやこれやの「お試し改憲」提案でなく、選挙公約に掲げた4項目(自衛隊の明記、緊急事態対応、教育の無償化、参院の合区解消)を中心にした改憲を提案するであろう。最短では、年末に自民党案をまとめ、来年の通常国会中の憲法審査会で改憲原案を採択し、本会議で改憲発議を行う。そして9月の自民党総裁選後に国民投票を行うという案が想定される。

 しかし、このようなスケジュールが予定通りに実行できるとは思われない。理由はいくつか考えられる。①野党第一党が改憲指向の希望の党でなく、安倍改憲に明確に反対する立憲民主党になったこと。 ②希望の党の当初の勢いがなくなり、改憲のスタンスも不鮮明になってきていること。 ③改憲項目については他党の同意を得られるとは限らないし、9条改憲には公明党も消極的なこと。 ④国民投票の場合は総選挙と異なり小選挙区制のような与党に有利な得票が得られず、むしろ比例選挙に照らせば安倍自民党案に反対する投票が多数となる可能性があることを自民党が警戒していること。この点を踏まえて、安倍改憲の危険性を市民に知らせ、改憲勢力による改憲発議をさせない運動が必要である。



  No.88  2017年4月18日 発行

国連総会「平和への権利宣言」を採択            代表世話人 澤野義一



 国連総会は2016年12月19日「平和への権利宣言」を採択した。イラク戦争を契機にスペインのNGOが提唱した国際会議の様々な討議の成果である。ラテンアメリカ・アフリカ・アジア(中国・北朝鮮を含む)諸国を中心に131カ国が賛成。アメリカ・EU諸国・韓国・日本等34カ国が反対。イタリア・トルコ等19カ国が棄権。この宣言については日本では政府もメディア(東京新聞は別)もほとんど報じておらず、一般的に知られていないので、軍事的緊張を煽りながら防衛・軍備増強論や排外主義が偏って報じられ、愛国心教育や大学への軍事研究が期待される状況があるなか、重要と思われるので紹介しておくことにする。

宣言「前文」には、国連憲章、国際諸人権、平和と人権に関する国際宣言や取組みの歴史を再確認しつつ、「平和」は紛争のない状態だけでなく、紛争が相互理解と協力の精神で解決されるものであること、また人間の固有の尊厳に由来する不可譲の権利の享受により促進されるものであることを確認し、現在及び将来の世代が将来の世代を戦争の惨害から免かれるという願望で、平和のうちに共に生きることを学ぶことを現在の世代が確保すべきであることを、関係者らに招請すると述べられている。

宣言の条項は次の5カ条から成っている。

@すべての人は、すべての人権が促進及び保障され、並びに、発展が十分に実現されるような平和を享受する権利を有する。

A国家は、平等及び無差別、正義及び法の支配を尊重、実施及び促進し、社会内及び社会間の平和を構築する手段として、恐怖と欠乏からの自由を保障すべきである。

B国家、国際連合及び専門機関、特に国際連合教育科学機関(ユネスコ)は、この宣言を実施するために適切で持続可能な手段を取るべきである。国際機関、地域機関、国家機関、地方機関及び市民社会は、この宣言の実施において支援し、援助することを奨励される。

C平和のための教育の国際及び国家機関は、寛容、対話、協力及び連帯の精神をすべての人間の間で強化するために促進されるものである。このため平和大学は、教育、研究、卒後研修及び知識の普及に取り組むことにより、平和のために教育するという重大で普遍的な任務に貢献すべきである。

Dこの宣言のいかなる内容も国際連合の目的及び原則に反すると解してはならないものとする。この宣言の諸規定は、国連憲章、世界人権宣言及び諸国によって批准される国際及び地域文書に沿って理解される。

 上記の宣言は、一切の戦争と軍備放棄を規定した下での平和的生存権保障をうたう日本国憲法ほどには徹底しておらず、条約でないため国際法的効力も当面ないとしても、国内外で参照され実行されていけば国際法的拘束力をもつようになることが期待できる。




憲法と通信傍受と共謀罪

         この道もいつか来た道・・・・・

 

            交野市 千本忠一

*日本国憲法第9条は、国権の発動たる戦争と武力の行使を永久に放棄し、交戦権を認めない。

 ところが、平成26年7月、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定がなされ、平成28年の国会で、国際平和支援法と称する法律の制定と共に「平和安全法制整備法」が多くの人々の反対にかかわらず、強行採決されたことは記憶に新しい。現在、すでに南スーダンに自衛隊が派遣されている。

*日本国憲法は、第21条で「検閲はこれをしてはならない。通信の秘密はこれを侵してはならない」と定め、重要な基本的人権のひとつとして保障している。通信傍受に関する法律が、犯罪捜査のための通信傍受に関する法律として平成11年8月に制定され、同12年8月15日から施行されている。この法律の制定施行にあたっても、「盗聴法」とも呼ばれるように、通信の秘密を侵す憲法違反の法律であると強い反対の声があがった。いわゆる監視社会となる「盗聴法」が施行され、16,7年が経過する。

*今年平成29年度の通常国会において「共謀罪に関する法律」が、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規則等に関する法律の一部改正案が「テロ対策法」として制定されようとしている。

 この共謀罪に関する法律は、今世紀に入ってから何度も国会で取り上げられながら、「一定の犯罪について話し合っただけで処罰の対象とする」こと等に対する各界からの反対により廃案となっている。今回の法律制定の動きに対しても、いわゆる刑事裁判の基本原則である「行われた犯罪に対して法律に基づいて罰する」ことを否定するものであり、合意だけでの処罰や、極めて多くの犯罪類型が処罰の対象とされること等から、大きな反対の声が上がっていることは、昨年10月15日に行われた学習会の報告(本年1月号)によっても明らかなところである。

*ところで、共謀を処罰する法律が制定され、通信傍受に関する法律と共に施行されるとき、日常の生活は常に捜査機関の監視にさらされることに他ならない。これら、捜査機関による共謀罪の対象とされる行為についての通信傍受が、明らかにされることはない。

 通信傍受に関する法律の制定・施行によって、すでに計り知れない情報が傍受されていることは疑う余地がない。そのうえ話し合う行為を処罰の対象とする法律が制定・施行されたとき、これまでと異なる多くの人々が捜査機関の監視の下に置かれ、捜査の対象とされることを直視しなければならない。

 今また、いつか来た道をたどることを避けるため、ひとりひとりの反対の声が求められている。

【追記】           事務局より

 安倍政権は3月21日に「組織犯罪処罰法改定案」を閣議決定しただちに国会に上程した。2月末に公表された政府案がいくつか手直しされている。@「対象犯罪(罪種)が多すぎる」という公明党の主張に配慮して676から277に減らした。A「2020年オリンピック実現のためには『テロ等準備罪』が絶対に必要だ」という喧伝にもかかわらず、法案のどこにも「テロ」という文言がなかったことから「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」という様に書き換えた。B何を指すのかが曖昧な「準備行為」については「資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の」を付け加えることによって何でもありにした。

 当初案→上程された法案へのこのやみくもでかつ泥縄的な変更に、とにもかくにも=何が何でも今国会で、「テロ等準備罪」に名を借りた「共謀罪」を成立させたいという安倍政権の強い意思が示されている。ABに「その他の」が入ったのだが、言ってみればこの言葉は何でもありということに等しい。ATMでお金をおろしても「資金調達」とみなされるし、旅行又は散歩をしても「下見」とみなされる。たとえ二人で計画しても「組織的犯罪集団になった」とみなされうる。それを決めるのは権力を持った者の恣意的判断にゆだねられるのだから恐ろしい。

 法案は4月6日衆議院での審議が始まった。衆議院では30時間の審議で採決→参議院へ→5月中成立(遅くとも6月18日国会終了時点)を狙っている。戦前の治安維持法について知らない人が多くなっているという。もう一度学習し直し「現代版治安維持法」を何としても廃案にするために一人でも多くの人によびかけましょう。