証はその先に



 破壊の爪後残る白い建築物の群れ、ここがリグレットたちの楽園。その始まりだ。
「レプリカの世をつくることで世界を予言から解放する」
 身に溜る憎しみすら乗り越え愛せた男はそれを理想とした。
 リグレットは淡い金の髪をきつく結いあげた。決戦の時が近い。
 預言は可能性の一つ選択肢は数あると信じている彼等が、この新天地に乗り込んでくるのだ。
 自分達の崇高な目的を知らず立ち向かってきたとき以上の覚悟。
 しかしリグレットの覚悟も彼等の比ではない、それに勝ると自負していた。
「いよいよですね」
「ああ、世界は運命から解放される」
 それだけのために、滅ぶまでの穏やかな時間とレプリカ以外の新たなものを作り出すことを全て捨てた人。
 世界の解放が成就した暁にリグレットもヴァンも自分の足跡を世界に残さない生き方をしなければならない。
 オリジナルは一切残ってはならない。レプリカたちが世界を委ねられるほど成長するのを待って功労者たる彼等は静かに世を去る日を待つのだ。
「解放以外を手にしようとは思わぬよ。いずれ消すことは手間だ」
 だからこんなにも想いが近いのに彼が手を伸ばすことがない。
「閣下、下層に突入されるまでもう間がありません。私は、…これで」
 ティアも来る。この人に妹の血で手を汚させるなんてさせない。ティアに、道を譲りこの人の命を渡すことも論外。
 必ず、必ず仕留めねば。
 リグレットは愛用の銃の握りを軽くさする。
 この拳銃にかけて。
 しかし、もしもの場合が起こった時は。
 リグレットはヴァンに背を向けた。
 求めてはならない。自分と彼が想いあった証など。
 ここから先の未来にオリジナルが産み出すものは存在させない。この想いすらも。
 誰より愛する彼の信念に従うこと、それがリグレットの唯一ヴァンにできること。
 この土壇場でそれに反するなんてしない。
「リグレット」
 動きが遅れた間を縫ってリグレットはは低く穏やかな声に名を呼ばれた。
 けれど振り向かない。背を向けて答える。
「何でしょうか」
「リグレット、私達がこの後も残せるものがある。何かわかるか?」
「…………レプリカ達、でしょうか」
「レプリカを産むのは手段だ。『未来』を残すための」
「お前が私を想い、力を貸してくれたからこそ残った未来だ。滅びずこの星が残り、未来があり続けるかぎりそれが証だ」
 消えるものより、あり続けるものを選んで証にしてくれる人。
 この一言で、永遠を信じて進んでゆける。
「はい、…閣下」
 後ろは向かない。次にあの愛しい姿を目に収めるのは永遠を獲得してからだ。
「行きます」
 迷いのない靴音を残し、リグレットは信念をゆだねる者の元を去った。
 たとえ…、例え二度とこの場所を踏みしめることがなくともヴァンが願いを叶えたら。
 この星が生き続けるのなら。
 命と想いの価値はありつづけるのだから。

                  END
---------------------------

べつにヴァンもリグレットも話書くほど好きなわけじゃないんですが。
なんとなく
通学中に
出てきたので
つい
書きました、だからキャラ違う!って思った方
…すみません。
しかしリグレットがヴァンに殺意満々だったとは攻略本読むまで
知りませんでした。裏設定多いなアビス。


2006/2/6
戻る