「人」へと導く福祉の授業

私たちは家庭生活や学校生活などを通して人との関わりの中で毎日を過ごしている。
言葉や文字のやり取りによってコミュニケーションを図ることは、子どもたちの生活の場では当たり前のことである。


1.さまざまな形のコミュニケーションがあることに気づく。
   
   コミュニケーション…人とのふれあい・通じ合い・気持ちを伝える

言葉
文字
動作(身振り手振り)
表情
空書
口話
手話(指文字含む)

点字

「この中で日頃よく使っているのは?」……「言葉」「文字」
「では、今からゲームをしてもらいます。言葉を使わないで誕生日順に並んでください。」
「では確かめます。」
「どうやって並びましたか?」……「空書」「口話」「動作」
「相手に尋ねるためにどうしましたか?」……「肩に触れた」「合図で話しかけた」
「どんな手段を使うにも、まず相手に働きかけることが大切になりますね。」
「それが、人と人とのコミュニケーションです。」



2.相手を理解し理解されたいと思ったとき、どのように接したらよい  か、さまざまな人との出会いの中で自分はどうしていくかを考え  る。
  

 

自販機の前で悩む全盲の私                   

門真市 川田隆一

 飲み物の自動販売機には温かいものと冷たいものが一緒に入っている。 全盲の私には、それがとても悩ましい。  先日、冷たいコーヒーを飲みたくなっ た。ところが、自販機にあるそれがジュースなのか、コーヒーなのか、私には知るすべがない。しか たがないので、冷たいものなら何でもよいことにした。  小銭を入れて適当なボタンを押した。 しかし、出てきたのは熱い缶だった。  また違うボタンを押した。やっぱり熱い。 もう一度、挑戦しようと思ったが、背後に人の視線を感じて、なんだかとても恥ずかしくなってやめた。別の販売機でさらに二回試したが、ど うしても熱い缶しか出てきてくれない。  私は研修のため、三月までアメリカで生活していた。アメリカの自販機にも、点字の表示はほとんどなかった。  でも、みんな気軽に声をかけてくれた。  私もなんのためらいもなく「どれが冷たいコーヒーなの?」と、だれにでも聞いていた。  もちろん日本でだって、尋ねれば親切に教えてくれると思う。けれど、 なぜか、私にはどうしてもそうすることができないのだ。これは日本の社会のバリア(障害)なのか。それとも私自身がバリアを張っているだ けなのだろうか?  ポケットの四つの缶はとても重かった。(97年5月15日、朝日新聞)

幼稚園の子にぼくは負けた


阿南市 山田祐一郎 (小学生11歳)


 ぼくは小学校6年生です。6ヵ月くらい前に思いがけない出来事があった。
 それは学校の帰り、鳥居の下に足の不自由な人がいた。そこを通ったら幼稚園の子が自転車で遊んでいた。すると幼稚園の子は不自由な人にこう言った。「足が痛いん」と言うと不自由な人は「うんちょっとな」と言った。すると二人の子の一人が「この自転車に乗り。ぼくは歩くけん」そしたらもう一人の子も「荷物持ったん」と言った。
 ぼくには言えなかったのに、どうしてまだ小さい子どもができて、11歳のぼくができないのか。その二人は心の中にやさしさというものがたくさんつまっていると思う。こういうすばらしい光景に見とれていた。自分がとてもはずかしくなった。
 二人と不自由な人はとても楽しく帰って行った。もう6ヵ月たった今でもわすれないのだから一生覚えているにちがいない。今まで体の不自由な人を見ると、ぼくの心の中は、「かわいそう」ぐらいしか思ってなかった。それをあの二人は思う心でなく実行し助けているのだから。あんな光景を見たのは初めてだった。

さまざまな人と出会いコミュニケーションをはかるために、点字や手話を覚えることは大切なことだが、それ以上に大切なことは何かを考えていく。

相手の立場になって考え、理解し合おうとすることがいかに大切な事か、深く考えさせたい。

 

3.普段何気なく使っている言葉や文字の働きを認識し(生きる価値・生き甲斐にもつ  ながるということ)、他者を理解しようとする態度を育てる。
  

耳や目から入る情報は大量にあり、その情報が入ってこないということはその人が当然受けられる権利も知らされていない可能性があることに気づく。
当たり前の情報を得るために、手話や点字が大切なことを知る。

★4年国語「手と心で読む」より
【自分で自由に使える文字を持つことが、どんなに楽しくどんなに大切であるか】


4.手話・点字の現状や課題を知る。


  手話…失聴年齢や失聴の原因によって、
      筆談中心の人・手話と口話を併用する人・手話のみの人など、
      コミュニケーションの方法に多少の違いがある。
  点字…特別な道具が必要
     
 点が潰れる
       字の大きさが一定
       書き込みや傍線・振り仮名が付けられない
       かさばる(辞書B55p位のもの→点字本では100冊)
       拾得開始の年齢が遅くなるに連れて、読む速度はだんだん遅くなり、       50歳を過ぎて始めた人の中には、触読が身に付かないケースもでている。
     
 指先の触読は、気温の変化によって著しく影響を受ける。
       摂氏5度以下になると困難になってくる。
       暑いときも、指が汗で濡れて読みにくくなる。(適温12度から25度)

 

5.手話(学校生活の中で使う挨拶)・点字(点字ペン)の体験する。

体の不自由な人たちのために役に立つことの一つとして、自分に出来ることを体験する。