山が高ければ、谷もまた深い

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「筑紫哲也 NEWS23 年末SP大格差社会05 勝ち組負け組分かれ道」

予想通り、勝ち組=東京 、負け組=地方という構図であった。
筑紫哲也氏は、この構図が好きなようで、個人的にも「週間金曜日」に同様の文章を書いている。
http://www.kinyobi.co.jp/pages/vol585/fusokukei
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軽薄にして重篤なる1(筑紫哲也)
>
地方衰退(シャッター街)と都市繁栄(六本木ヒルズ族)の対照は鮮やかだ。

筑紫氏だけではなく、東京マスコミのほぼ全てが採用しているこの構図は、
当然のことであるが極めて疑わしく根拠のないものである。
東京の商店街が無事だとでも思っているのだろうか。
http://www.ne.jp/asahi/olive/akita/tuusin/021015/021015.htm
http://www.yorozubp.com/9905/990501.htm
http://www.shinjukuku-kushouren.net/maturi.htm

具体的に見てみよう。
http://www.eonet.ne.jp/~0035/kouri.html
これは、97年から99年にかけての地域別小売販売額の変動率(減少率)である。
(
元ページは
 http://www.pref.toyama.jp/sections/1015/ecm/back/2000jul/tokushu/index3.html )

金融機関の破綻が相次いだ97年は全国的に不況であった。
その2年後、現在の「勝ち組」が登場した99年は、東京だけがITブームだと言われていた。
その結果、東京にとってはそして東京だけが、景気の谷から景気の山への2年間になったのである。
 
普通に考えれば、東京の数字だけが突出して良好であっても不思議はないはずだ。
しかし、表を見て分かるように、東京の減少率はむしろ平均より大きい。

IT
ブームというのは、(もし、あったとしても)東京のごく一部の現象でしかなかったのだ。
東京だけがITブームによって不況から脱出したというのは、99年の時点ですでに嘘だったのである。

この傾向は現在も同様である。
消費者物価指数
http://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/zuhyou/0581h4.xls
デパート売上高前年同月比
http://www.depart.or.jp/jdsaWork/SalesReports/suii3-05-11-01/suii3-05-11-01.htm
http://www.depart.or.jp/jdsaWork/SalesReports/suii3-05-11-02/suii3-05-11-02.htm
いずれも、東京の突出が幻想であることを示している。

東京全体が「勝ち組」なのではない。
東京の「勝ち組」の山が地方より高いとすれば、
それを打ち消すように東京の「負け組」の谷もまた地方より深いのである。

「山が高ければ、谷もまた深い」
だから、東京全体の小売や個人消費の指標が全国平均並みかそれ以下なのだ。

これが、小泉派・反小泉派、自民・反自民、市場派・規制派、右派・左派、
どちらの勢力も直視しようとしない現実なのである。


僭越ながら、ここで筑紫哲也氏にアドバイスをしたい。
もし氏が、小泉改革に本気で警鐘を鳴らしたいのであれば、
従来の勝ち組=東京、負け組=地方、という構図は止めるべきである。
この構図は、上記のように根拠が怪しいだけでなく、インパクトに欠ける。

東京の中で、「勝ち組」と「負け組」を対比すべきである。
こちらのほうがよりショッキングであり、そのため社会に訴える効果も大きいのだが、いかがであろうか。

もっとも、筑紫哲也氏自身に「山が高ければ、谷もまた深い」ということを
直視できる勇気があればの話だが。

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