愛欲の港  1948 スウェーデン  イングマール・ベルイマン監督

8年間船員の仕事をしていたイェスタは海での仕事に嫌気がさし陸に上がる決意をする。彼は、上陸した港で入水自殺を試みた少女を見掛ける。数日後、イェスタは鬱憤を晴らすために訪れたダンス・ホールでその少女ベーリットと偶然にも再開する。二人はたちまち恋に落ちるが、彼女はいつも不安におびえている。それは、愛を失うことに対しての、根源的などうしようもない不安だった。ベーリットはイェスタと二人で訪れた海辺のホテルで、偶然に彼女の昔の秘密を知る友人に出会ってしまう。ベーリットは不良少女だった彼女の過去を思い切ってイェスタに告白するが・・・・・・。
 両親の不仲に精神的に苦しめられてきた哀れな少女ベーリット。子供にとって、両親の存在とはいかに大きいものか。それを自分では選ぶことができないというおぞましさ。ラストが明るくて救われるが、やはり、ベルイマンならではの、心理的な苦悩がひしひしと押し迫ってくるかなり深刻な作品。
参考hp イングマール・ベルイマン


夏の遊び  1951  スウェーデン   イングマール・ベルイマン監督  ★★★
ストックホルムの王立オペラ座でリハーサルを終え、疲れ果てている、28歳のプリマ・バレリーナ、マリーの元に小包が届けられる。小包の中から出てきた日記を手にしたマリーは13年前の短かった恋のことを思い出す。初恋の人、ヘンリックと過ごしたひと夏の煌めくような日々への回想。マリーは思い出の別荘を訪ねる。だが、別荘にはマリーとの復縁を願う叔父のエルランドが待っており、ヘンリックの日記を使って呼び出されたことを悟ったマリーは、彼を冷たくあしらい劇場に帰る。
マリーには現在、年下の恋人で新聞記者のダーヴィッドがいたが、ヘンリックとの思い出があまりにも儚く無残な形に終わってしまったために、恋に臆病になってしまい、素直になれずいつでも彼と口論になってしまう。しかし、マリーは幸せになりたかったのだ。彼女は泣きながら、自分を理解して欲しくてヘンリックの日記を彼に手渡す…。
派手さはないが、個人的にものすごく好きな作品。「不良少女モニカ」にも通じる海辺での瑞々しい男女の戯れ。楽屋でのバレリーナたちの赤裸々な本心の吐露(ドガの踊り子を思わせられた)、輝くような北欧の夏の風景など、すべてにおいて満足できる仕上がり。ベルイマン自身も一番好きな作品に挙げていたというが、本当に彼の心理描写は絶品だ。女性のもつ計り知れない魅力や烈しさを彼ほどうまくひきだせる人はいないのではないか。悲しくて、せつなくて、美しくて、激しい、ああ、二度とは戻らない青春の日々。

参考hp イングマール・ベルイマン  BEAMエンターテイメント


マイ・フェア・レディ  1964 アメリカ  ジョージ・キューカー監督  ★★★
 バーナード・ショウの戯曲「ピグマリオン」のミュージカル! おせっかいで皮肉な言語学者ヒギンズ教授(レックス・ハリソン)は、下品な花売り娘イライザ(オードリー・ヘップバーン)のひどいなまり言葉に呆れながら興味を抱く。ヒギンズの殺人的な訓練により、イライザは美しいレディに変身してゆき、イライザの社交界デビューは大成功を収めるが、ヒギンズに思いを寄せるイライザにとって、ヒギンズから、ただの実験人形のように扱われることは、耐えられないことだった。女心のまったく通じないヒギンズだったが、イライザが家を飛び出すと、彼は淋しくなってしまい・・・・・・
 オードリーがやっぱおしゃれ。前半の汚い、ドブネズミみたいな彼女と、後半のあまりにも彼女らしい、ドレスアップした妖精のような姿との対比がものすごくいい。あと、レックス・ハリソンの唄う、女についての皮肉な歌が的を得ていて(男尊女卑ともいえますが、確かにあたってるもん)、おもしろかった。曲もいいし、衣装も、ストーリーもいい。ちょっと長いけど、ユーモアたっぷりで、(もちろん昔の映画なので、流れはあくまでもゆったりしてますが)最後まで楽しめますよ。

参考HP http://www.satonao.com/cinema/myfair.html   CinemaScape/マイフェアレディ (1964/米)


81/2    イタリア 1963 フェデリコ・フェリーニ監督 ★★★★
売れっ子映画監督のグイド(マルチェロ・マストロヤンニ)は、心身ともに疲労が重なって体調がすぐれない。そこで、気分転換もかねて、温泉に治療へでかける。旅先でのんびりしたかったグイドだが、次々とわずらわしい現実が追いかけてきて、彼はますます疲れていく。彼が追い求める美女クラウディア(クラウディア・カルディナーレ)との情事もむなしく立ち消え、彼の悩みはどんどん深刻になってゆく。(うーん、書きにくいなあ。まあ、フェリーニの場合、筋は問題じゃないのですよ)

 二十歳前にみたときは、まったく理解不能だった。が、25を過ぎてみかえせば、これほどの映画があったろうか、そして、これから果たしてうまれるだろうか? というほどの衝撃をうけました。私がみたなかでは彼の最高傑作だと思う。三日続けてみた映画はこれだけなので。評論家じゃないので、この映画のことをうまく説明することはできないのですが、自分の内面を恥ずかしいほどさらけ出して、思いっきり下世話なのに、これ以上ないほどの完全な芸術に仕上げている。白黒だったからよけいなのかな、圧倒的なイメージの世界と共にいられることに、ものすごい喜びを感じました。ファーストシーンの夢のシーンと、ラストの祝祭的雰囲気はとにかく素晴らしい。映画をみているというよりは、映像とともに、フェリーニの世界を飛んでいるという感じかな。フェリーニのなかではけしてわかりにくい映画ではないと思う。まあ、大人の映画ですが。特に妻(アヌーク・エーメ)や愛人(サンドラ・ミーロ)に対する彼の愛情とわずらわしさの表現が、きっと男の人にはほんとに、よく伝わるんじゃないでしょうか。たいていの男って女よりずっと中途半端で弱いですもんね。
参考hp OTTO E MEZZO    http://www.zaziefilms.com/library/fellini/lib_fel_002.html  

シェーン  1953  アメリカ ジョージ・スティーヴンス監督
1890年、ワイオミングの開拓地。ぶらっとやってきた一人のガンマン、シェーン(アラン・ラッド)は、農民のジョー・スターレット(ヴァン・ヘフリン)の家で水をもらい食事をごちそうになる。ジョーは妻のマリアン(ジーン・アーサー)と息子のジョーイとの三人暮らしで開拓農民のリーダー格の男だった。彼は牧場主ライカー一味と対立しており、シェーンはジョーのために彼らと戦う。
 よくありがちな西部劇ですが、夫に愛される幸せな妻が、またたくまにシェーンに惹かれて、シェーンもまた彼女を好きになってしまうが、その感情を二人ともがどうにかしておしとどめようとしているあたりが抜群におもしろい。ジョーイとシェーンの交流とか、最後の「カムバーック」って叫ぶ有名すぎるシーンも、まあ、いいんだけど、やっぱりよろめき主婦、マリアンの押さえても溢れてくる愛情のやり場のなさが、この映画をここにあげた理由でしょうか。アラン・ラッドは男前だけど、西部劇のヒーローにはあまり似つかわしくない体の華奢さが異色で、逆に目立ってました。繊細な感じがしてなかなかよかったです。
参考hp   かりんのウェスタンサイト


ロッキー  1976 アメリカ  ジョン・G・アヴィルドセン監督   ★★★
フィラデルフィアのスラム街に住むロッキー・バルボア(シルベスター・スタローン)は、気が進まないながら、悪党の手先などをしながら生計をたてている、うだつのあがらない4回戦ボーイのボクサー。彼は近くに住むこれまた、とてつもなく引っ込み思案のために、いきおくれた女、エイドリアン(タリア・シャイア)に恋をしている。最初はちぐはぐだった彼ららが、一度結ばれると、その絆はどんどん深まってゆく。そんな彼が、思いがけないことから、「アメリカ建国200年記念祭」のタイトルマッチに、チャンピオンのアポロ(カール・ウエザース)の挑戦者として選ばれた。妹であるエイドリアンをとられてやけくそ気味のポーリー(バート・ヤング)や老トレーナー(バージェス・メレディス)らの励ましをうけて、地獄のトレーニングを開始。数々の人間ドラマをはらみながら、とうとう試合の日をむかえる。
スタローンはこういうのが絶対似合ってると思う。彼、変なペットばかり飼ってて、亀に話し掛けたりするの、くだらないジョークいったりして、女の口説き方も下手だし、でもすごくあったかーいやつで、人間味たっぷり。口がきけないのかと思うエイドリアンには、いいかげんいらいらしてしまったが、こんなでこぼこコンビだからこそ、ラストの「エイドリアーーーン!」で感動するのね。
あと音楽がいかにもスポ根っぽくてぴったりでしょ。そして、トレーニングによりしだいに鍛えられてゆく彼が、軽々と階段を駆け上がり、喜びと自信に満ち溢れてガッツポーズするランニングのシーン。あれは最高だったな。アメリカの夢。
 参考HP  CinemaScape/ロッキー (search result)(1/2) 

恋人たち  1958 フランス ルイ・マル監督  ★★★★
 フランスはブルゴーニュ運河のほとりのディジョン。ブルジョア社会の裕福な生活にうんざりした新聞社主の妻(ジャンヌ・モロー)と、若い考古学者ベルナール(ジャン・マルク・ボリー)との恋。
 私はこれほどありきたりな話で、ここまで美しい映画をみたことがない。いままでも、おそらくこれからも。ルイ・マル監督26歳のときの作品だが、ラブシーンをここまで至高の芸術として描いたその早熟の天才ぶりには舌を巻く。人を心から好きになる瞬間に、理屈も、道徳も、へったくれもないといった感じ。こういうのは日本はもとより、アメリカ人やイギリス人にはとても描けないだろう。とくに昔の映画では、ラブシーンでしらけないのは、ヨーロッパ映画だけでは?  満月の夜、乾杯を交わす男と女。ブラームス、詩のような愛の言葉、二人を乗せた小さなボート、柔らかな月の光、水面がゆれ、ゆっくりと漂うようにボートは流されてゆく。見つめあい、愛を交わす二人の姿に、まったくエロチックなものはない。そんなものをはるかに越えた、永遠に脳裏に焼き付けておきたい、美しい絵のような瞬間。
参考hp  今週のスター ジャンヌ・モロー   Louis Malle ルイ・マル



大いなる西部  1958 アメリカ ウィリアム・ワイラー監督  ★★★★
 巨匠ウィリアム・ワイラーの西部劇大作。1870年代のテキサスに、東部からジムという男(グレゴリー・ペック)がやってくる。彼は土地の有力者、テリル少佐(チャールズ・ビッグフォード)の娘パット(キャロル・ベイカー)と結婚することになっていたのだが、水源地マラゴン牧場をめぐって、テリルはルーファス一味と争い、憎みあっていた。
 ジムは、争うことに違和感を抱き、水源地を巡って反目する二つの勢力を、武器を使わずに平和へ導いていこうとする。争いの中には決して平和を見出せないというリベラルな主張は、製作に携わったグレゴリー・ペックとワイラーの政治的意見をそのままに反映したものと言える。
 タイトル負けしない、本当に壮大な感じの映画でした。画面は美しく格調高く、西部劇らしい見せ場(決闘、殴り合い、荒馬など)もたっぷり用意されているのだが、それよりも増して、人間として、平和のためになにをすべきなのか、という大きなメッセージを強く感じました。どうも、こういうお上品でリベラルな役をペックが演じていると、あんまり地そのものって感じがしてこなくもないが、でも西部劇にこういうメッセージを説教くさくなくこめられるという点で、ワイラーはやはり素晴らしい。
そして、やっぱりジム(ペック)についてゆけるのは、理想を抱いた大いなる女性だけなのね。彼の前では、普通の女が、どうも「ダメ女」にされて、かわいそうな気もします。簡単に好きになってはいけない人なのね。きっと。

参考hp ベスト・オブ・西部劇   CinemaScape/大いなる西部 (1958/米) 


カサブランカ 1943 アメリカ マイケル・カーティス監督   ★★★
 うう、いまさらって感じで登場してきました。なんか、急に思い出して。とりあえず好き嫌いを抜きにして、イングリット・バーグマンが美しいの一言につきますね。あと、黒人ピアニスト、サムの弾くテーマ曲「時の過ぎ行くまま」の甘い郷愁たっぷりのメロディ、そしてボギーの、くさーい、セリフ。いってしまえば御伽噺っぽいメロドラマなので、そんなに好きじゃないのですが、これが第二次世界大戦のまっただなかにつくられていたことを考えると、日本はなんと無謀なことをしてたんだろうと、そういう感じです。
ストーリーは、ナイトクラブを経営するリック(ハンフリー・ボガード)が昔の恋人イルザ(バーグマン)と再会する。しかし、イルザはいまでは反ナチス運動家ラズロ(ポール・ヘンリード)の妻となっていた。リックは未練たらたらで彼女にからむが、二人の誤解がとけると、イルザ夫婦のアメリカへの亡命を助けようとする。っていうもの。
 ボギーのいったセリフで忘れられないのが、「君の瞳に乾杯」なんかじゃなくて、(これは笑うよ)「女嫌いじゃなかったのか?」ってきかれて、「あの女だけは別だ」って言ったの。そんなこと、一生に一回でいいから、いわれてみたいですよね、女ならだれでも。(バーグマンだからいわれるんだけどさ。)
あとハイライト、二人の緊張感高まる夜でのキスシーン、はじめてレンタルしたとき、ビデオがそこだけのびていた。みんな、そこで巻き戻して何回も見たんだろうな。あたしも美しい状態でみたかったのに。。。
参考hp http://www.minipara.com/special/bijyo/bergman/   CinemaScape/カサブランカ (1942/米)
     http://matuzawa.net/fin/movie/csb/


戦艦ポチョムキン(1976年、完全復刻版)  1925 ソ連 セルゲイ・エイゼンシュテイン監督 ★★★★
1905年のロシア。民衆は皇帝専制に対する不満をつのらせており、第一次ロシア革命の波が高まりつつあった。その頃、オデッサ沖に碇泊中の戦艦ポチョムキンでは水兵のワクリンチュクとマチュシェンコが密かに反乱の機会をうかがっていた。
 ある日、水兵たちが蛆のわいた肉入りスープを飲むのを拒むと、艦長が残酷な処刊を行おうとしたため、兵士たちの不満が爆発、彼らは将校に反旗を翻した。乱闘により、将校は海に投げこまれる。水兵たちは果敢に戦い、ついに戦艦を占領してオデッサに入港する。しかし、ワクリンチュクは下士官に射たれて死ぬ。
 ワクリンチュクの遺体が横たえられた海辺には死を悼んで多数の市民がつめかけた。やがて、「一人は皆のために、皆は一人のために」(すご、懐かしくないですか! この言葉、まさかここが発祥だったわけ?)のスローガンのもとに、市民は水や物資を運んで水兵を激励し、互いにツァーリズム打倒を誓い合った。 だが突然、ポチョムキンに声援を送ろうと港へ通じる階段を下りていた市民を、コサック兵たちの列が追ってきた。一斉射撃か始まり、赤ん坊、子供、女、年寄り、すべての人々が虐殺され、周りは一瞬のうちに凄惨な地獄と化した。港内からこの惨劇を目撃したポチョムキン号は報復として軍司令部を砲撃。その結果、黒海艦隊の僚艦12隻の攻撃を受けることは必至となった。 ポチョムキンの行手を塞ぐために、黒海艦隊が夜闇の中を迫ってくる。艦隊を抑え撃つ決意を固めたポチョムキンの前にあらわれたのは、赤旗をかかげた同士たちだった。
 オール・ロケによる記録映画的手法と、モンタージュ理論を駆使して描いた、映画史上の金字塔といわれている作品。だれもが真似する「オデッサの階段」シーン。やっぱりすごかったです。最初に「ストライキ」を見て、この監督はなにかが違うって思って、それから有名なこちらをみたわけですが、たとえプロパガンダ映画だとしても、これだけの激しさや迫力を映像にこめられるというところで、まさしく天才の技。音声なんかいらないんですよねえ。映像が強すぎて。あの蛆虫だけみても、なんか尋常じゃないです。それにほとんどが素人をつかってるのでしょ。残虐シーンを全面に押し出し、スターを使ったスピルバーグの「プライベート・ライアン」などに比べても、こちらのほうが、衝撃が格段に大きい。いいたいことがはっきりしてるっていうか。白黒で、大昔の映画だというのに。
全体的にいえば「ストライキ」のほうがまとまってなくて、よかったのかもしれないけど、映画を勉強している人も、あたしのように、趣味で楽しんでいる人も、絶対見ておくべき映画だと思います。ああ、そして、ショスタコビッチの音楽が最高に素晴らしい。とくにこの映画のラストなんか、身震いしましたね。たしか「ストライキ」もそうだったと思うが、天才がつくった映像に、天才がつくった音楽が互いに激突して火花を散らしているようでした。ショスタコビッチだけ聴くのって重苦しくて耐えられないけど、エイゼンシュテインの映像にはどうしても欠かせない要素の一つになっていると思う。フェリーニにとってのニーノ・ロータのように。(うわー、長くなったなああ、読んでくれた人どうもありがとうございました)

参考hp http://www.ivc-tokyo.co.jp/yodogawa/database2/BronenosetsPotyomkin/text.html
     Yomiuri ON-LINE □■ 旅ゅーん!■□


夏の嵐  1954 イタリア ルキノ・ビスコンティ監督
1866年、オーストリア占領下のヴェネツィア。ヴェネチアの伯爵夫人リヴィア(アリダ・ヴァリ)は、敵方のオーストリア軍将校フランツ(ファーリー・グレンジャー)と、ヴェルディの「トロヴァトーレ」が上演されるオペラの劇場で知り合った。最初はフランツと従兄弟ロベルトの決闘を回避させるためであったが、リヴィアはフランツを思うようになり、逢い引きを重ねるうちに激しい恋におち、なりふりかまわず彼に尽くし、彼と一緒にいたいがため軍資金まで渡してしまう。しかし、若くモテモテの彼にとって、彼女はすでに重荷でしかなかった。騙されて取り返しがつかなくなったと悟ったとき、婦人は男を密告する。
オリジナルタイトルのSensoとは、「官能」の意。何不自由なく暮らしていた伯爵夫人リヴィアの平穏で安定した日常を、悲劇に変えてしまったのは、若いオーストリア将校フランツとの恋(官能)であった。うーむ、ヴィスコンティにしては、とってもわかりやすい、しかし、美しく着飾った(ため息がでそうな軍服姿に、伯爵夫人のひらめくドレス)貴族の墜落してゆくざまがたっぷり味わえる、彼ならではの激しいメロドラマ。嫉妬に狂ったヴァリの顔、醜くて、すさまじく、しかし、女してたよなあ。

参考hp   http://www.helmut-b.com/salon/vis_sekai.html    
        CinemaScape/夏の嵐 (search result)(1/4)


ある結婚の風景  1973 スウェーデン イングマール・ベルイマン監督
大学教授のヨーハン、弁護士のマリアンネは十年という長い年月を経て幸福な家庭を築いていたはずだった。しかし、ある日ヨーハンは若い女性の元へと去っていってしまう。失意のマリアンネはヨーハンの事が忘れられない。再会する二人、離婚の話し合いがまとまり、マリアンネの心がようやくヨーハンからはなれたころ、逆に私生活がぼろぼろのヨーハンはマリアンネにしがみつく・・・。
 ベルイマンがTV用に制作した作品。TV版(300分)では6話にわけて構成されているがベルイマンが再編集して映画用に仕上げている。二人には子供はいるが作品中にはほとんどでてこない。魅力的で深いダイアローグがすべてといっていい作品。最初の室内での写真撮影での場面から、すぐに惹きこまれてしまう。勘のいい人なら、もう、あそこで、あの夫婦のひずみは感じとれるはずだ。とにかく、喧嘩のシーンはすごいです。結婚前にみるべきシーンではないかもしれない。問題は、ああいう身勝手な男(ベルイマンも何回も離婚してますわ)に、どうして女はひかれるのか? まあ、彼は極めて知的で才能があり、魅力的ですが。 夫婦とは本当に難しい。セックスの問題、親戚づきあい、両親との関係、そして世間体をはばかる女と、お金がなけりゃ愛情なんて、あっけなく破綻するといいきる男。そう、結婚はおそろしい。しかし、一人では生きてゆけないのが人間。
ごたごたと愛憎がからみあい、もろくてかつ、しぶとくて複雑な夫婦の関係に、これでもかと肉迫した、非常にベルイマンらしく心理的描写の著しい作品でした。
参考hp  イングマール・ベルイマン
  CinemaScape/ある結婚の風景 (1973/スウェーデン)



市民ケーン  1941 アメリカ  オーソン・ウェルズ監督  ★★★
ウェルズ26歳時の処女作。映画界に彼の天才ぶりを堂々とつきつけた傑作。「バラのつぼみ」という謎の言葉を残して、広大な邸宅で孤独のウチに死んだ新聞王ケーン(オーソン・ウエルズ)。彼という人物をもっと赤裸々にあかそうと、記者たちは、彼と深く関わった人々にインタビューをいどむ。ケーンはもともと貧しい生まれで、富豪にひきとられるため、幼くして愛する母と別れさせられる。大学卒業後新聞社を起こし、「市民のため」を旗印に野心と正義感に燃えながら突き進んでゆく。彼はビジネスには成功するが、政界に興味を抱いたころから、すべての歯車が狂ってゆくのだった。
 映画史上に残る金字塔とかいわれてますが、たしかに、26歳が撮ったとは思えない。ただ、「バラのつぼみ」の種明かしがいまいちよくわからなかった。だから、何だったの? っていう感じ。あんな言葉になぜ、重要な意味をもたせたのだろう。そんなのなくても、十分、ケーンの存在自体が際立っているので、おもしろいのに。ウェルズは監督としても俳優としても、ものすごく優れていると思う。しかし、この映画はもちろんすごいけど、好きにはなれない。とても暗いし、ケーンのことがいまいちよくわからないし、最初の奥さんも、二番目の奥さんも、やっぱり愛されてはなかったんでしょう。彼は自分の思いどおりにすべてをコントロールし、支配したい、愛でさえも。かわいそうな人でした。……「バラのつぼみ」かあ。なんなの? だれか教えてほしい。
参考hp avant05.html
 

誓いの休暇  1959 ソ連 グリゴリー・チュフライ監督  ★★★
17歳の少年兵アリョーシャ(ウラジーミル・イワショフ)は、通信兵として前線に赴く。彼はドイツ戦車2台を対車砲をうちまくって炎上させ、将軍から勲章のかわりに6日間の休暇を認めてもらう。彼は母親に会ってこわれた家の屋根を直してあげたかったのだ。負傷兵の面倒をみているうち、汽車を逃した彼はやっとのことで乗った貨物列車でシューラ(ジャンナ・プロホレンコ)という女の子と出会い、最初は互いに戸惑っていたが、いつしか淡い恋心が芽生えはじめる。しかしそれも戦時下でのつかのまの夢。アリョーシャは母にひとめでも会うために先を急ぐのであった。。。
 ほんとうに、明快で、優しさにみちあふれた映画。青少年向きといってもいいでしょう。ぜひ多感な時期にみてほしい。アリョーシャは、青少年の鏡といったふうに描かれている。もちろんちゃめっけがあって等身大だが、その行動は大人よりもずっと大人、しかし好きな女の子へのあの初々しい真っ直ぐな態度はどうだ。もちろん場所は特殊だが、きらめくような青春のひとこまに心が洗われるようだ。(あまりにも清いのでみていてはがゆくなってしまう方もおられるかも)。もちろん、この映画の最大の名場面は母親との再会にかかっているが、最初から終りまで、アリョーシャの実直であたたかい人柄を全面に押し出すために、すべてのエピソードがこまかく設定されているような感じ。この作品もまた、泣けます。おお泣き。冒頭のシーンから泣いてしまうのは、戦争による母親と子供の別れというのが、あまりにも悲しいことだからでしょう。

参考HP   http://www.people.or.jp/~russia-eigasha/   CinemaScape/誓いの休暇 (1960/露)

ベルリン・天使の詩  1987  西ドイツ・フランス  ヴィム・ヴェンダース監督  ★★★★
東西に分裂され、戦争の傷跡をいまだに残すベルリン。天使ダミエル(ブルーノ・ガンツ)は、サーカスのブランコ乗りをしている女マリオン(ソルヴェーグ・ドマルタン)に一目ぼれする。彼は彼女に夢中になり、テレビの人気者で撮影のためにベルリンにきていたピーター・フォーク(ほんものの!コロンボだ!)から、ぜひ人間になるようにと勧められる。ピーターは元天使だったので、彼と話すことができるのだった。ダミエルはとうとう人間になり、夢みていたマリオンに会いにゆくのであった……。
はじめてみたとき、寝ちゃって、きづいたら、エンドロールが流れてた思い出が。でも25すぎてからみたら、この映画の素晴らしさがよくわかりました。コロンボが元天(なにそれ?)っていうのがうまい設定だなあって感心します。天使のときはモノクロ、人間(現実の世界)のときはカラーであらわした、それらの交錯する美しい映像が見事。映像にだけできることを丁寧にみせてくれているし、天使がそのへんに(図書館とかにも)いっぱいいて、子供たちにはみえるけど、大人にはみえなかったり、ダミエルが人間の自殺を優しく止めようとしたりするところがすごく愛らしかった。恋愛ものでもあるのだけど、ファンタジックで、それでいて単なる夢物語っていう感じでもない。それに、マリオンを演じたソルヴェーグ・ドマルタンがものすごい美人で、あんなきれいな人、現在のハリウッドとかではあんまりみられないなあって、ひたすらみとれておりました。いっかいみて寝てしまった人も、年とってから、ようは経験を重ねてからみると、絶対(?)わかるはずだから、試してみてくださいね。
参考HP http://www.iris.dti.ne.jp/~tosicarz/berl.html   
     CinemaScape/ベルリン・天使の詩 (1987/独=仏)




グリーンマイル 1999  アメリカ フランク・ダラボン監督  ★★★
 処刑室へ送られる受刑者が、最後に歩む緑色のリノリウムの廊下、この生と死の分かれ道を人はグリーンマイルと呼ぶ。1935年のコールド・マウンテン刑務所。ここに、ひとりの受刑者が送られて来る。彼の名はジョン・コーフィ(マイケル・クラーク・ダンカン)。
物語は、大恐慌時代、アメリカ南部の刑務所で死刑囚舎房の看守主任を務めていた主人公ポール(トム・ハンクス)の回想形式で綴られていく。
双子の少女を殺した罪で、ポールの元へ送られて来たジョン・コーフィ。おそろしい巨漢とは裏腹に子供のように純粋な心を持つ彼は、体にそなわった不思議な力でポールの病を治し、死の影が宿る刑務所を奇跡の光で満たしていく。神様の贈り物のようなこの男が、本当に罪を犯したのか? 疑問にかられるポールと、仲間の看守たち。
やがて奇跡を目の当たりにし、真実を知った彼らは、自分自身の果たすべき義務と、人間としてなすべき正しさのあいだで、激しい葛藤を強いられることになる。
 俳優陣がすごくいい。とくに、悪役監守、パーシーを演じるダグ・ハッチソンがとても、憎たらしくて、よかった。この映画はまったく感動的なのだが、ジョンが魔法をつかうので、そこで、「んなあほな」ってさめてしまうと、もうだめかもしれません。魔法じたいにはあまり重要度はなく、この映画でのみどころが、もっとほかのところにあると気づけば、ぜんぜん大丈夫だと思うのですが。私は大泣きでした。
参考hp   http://www.musashino-k.co.jp/eiga/data/bank/youga/fghij/greenmile.html   
 CinemaScape/グリーンマイル (1999/米)


未知との遭遇 (特別編) 1980 アメリカ スティーブン・スピルバーグ監督 ★★★★
消息不明だった戦闘機が、突然メキシコの砂漠に現れたのをきっかけに、アメリカ各地でUFOが目撃される。ロイ(リチャード・ドレイファス)はある夜、UFOに遭遇、その体験は限られた人だけに可能なものだった。彼が目にしたものにとりつかれたことによって、現実の生活は一変し、仕事はくび、家庭はむちゃくちゃになる。研究家達(ここにフランソワ・トリュフォー扮する博士がいる。)はUFOからのメッセージを受信、彼らとのコンタクトに成功する。そしていよいよ彼らは地球に異星人をむかえるのである、、、。オリジナルは1978年。「特別編」は巨大宇宙船の内部、ロイの家庭場面を追加、再編集したものである。
 最後のほうになると、涙がぼろぼろこぼれてまともにみていられなかった。全体的にできがよかったかどうかは別として、絶対にみるべき映画だと思う。スピルバーグ監督のやさしさ、あたたかさが本当に強くでている。彼はいつかテレビのインタビューでこういっていた。「僕はね、宇宙人が地球にきて、悪いことをするなんて、絶対に考えられないんだ」
 莫大なお金をかけただけあって、宇宙船のきらきら度がものすごい。ただ、ただ圧倒される。ただ、あくまでも、この話にはどこか無理があり、(たとえば、家族と彼との関わりかた、家庭崩壊の単純さ、彼の行動の奇怪さなど)まとまりにもかける。それでも、そんなことを完全に忘れさせてくれるくらい、未来への希望に満ちた、人間であることに誇りをもたせてくれるような映画なのである。トリュフォーが、博士お似合い。あと、宇宙人とのコンタクトに使われる「レミドソド」の単純なコードのくりかえしが印象的。そして、ラストに流れるジョン・ウイリアムズの音楽、彼の曲ってそんなに好きじゃないけど、こればっかりは、素晴らしいと思いました。あー涙。涙。涙で心が洗われる。
 参考hp http://www.urban.ne.jp/home/ubik/cinema/cinema125.html   
  CinemaScape/未知との遭遇 <特別編> (1980/米)


太陽に灼かれて  1994 ロシア・フランス ニキータ・ミハルコフ監督  ★★★
1936年、ソ連の夏、田園地帯の避暑地。別荘でやすらかにときを過ごす革命の英雄コトフ大佐(ニキータ・ミハルコフ)。彼は美しい妻マルーシャ(インゲボルガ・ダヴコウナイテ)と愛娘(ナージャ・ミハルコフ)との生活をなによりも大切に思っていた。そんな彼らのところに、妻のかつての恋人、ドミトリ(オレグ・メシーコフ)が十年ぶりに現れる。かつての恋人を動揺させずにはおかない、彼のかくされた目的は、スターリンの独裁体制によって強化された秘密警察による、大佐の粛清にあった……。映像が美しい。そして監督の実の娘、ナージャがあまりにも愛らしい。マルーシャと変装してあらわれたドミトリの出会いの場面。彼がピアノをひきはじめた瞬間、彼だと悟ったインゲボルグの顔がうつり、たったそれだけで、彼となにかあったのだとわかってしまった。(彼らはひきはなされ、結ばれることはなかったが、お互いにひどく愛し合っていたのだ。)話の中心は野性的で魅力的なドミトリと、今は幸せであるがゆえ、彼に振り回されたくないマルーシャの心の葛藤であるが、最後になるとどんどん政治色が濃くなり、恐ろしくなる。かなしくて、美しい、ロシアの歴史や、奥行きの深さを感じさせる一本。
参考hp CinemaScape/太陽に灼かれて (1994/仏=露)  http://homepage2.nifty.com/oleg/index.htm


アイズ・ワイド・シャット  1999  アメリカ スタンリー・キューブリック監督  
キューブリックの遺作。美しい妻(ニコール・キッドマン)と何不自由ない幸せな日々を送る内科医ビル(トム・クルーズ)は、マリファナを吸った妻から、旅先で見かけた将校の眼差しに性的欲望を感じ、何もかも捨ててもいいと思ったという告白を受けた。
衝撃を受けたビルは町をさまよい、売春宿にはいり、大学時代の友人のピアニストから探り出したある館に潜入する。仮装の衣装を借り、館に入ると、みたこともない大規模な乱交パーティーがおこなわれていた……。ビルはしだいに深入りしてゆき、そこに犯罪のにおいが漂いはじめる。
 なんなのよ。これ、っていう感じがしないでもない。けむにまかれるっていうか。でももちろん単なるエロじゃない。乱交パーティーっていっても宗教的儀式のような荘厳さを醸し出していて、そこらじゅうで乱交しててもあいかわらず怪しく美しいし、ニコール・キッドマンとトム・クルーズのはかない(現実では離婚しちゃったわね)、それでいてあたたかみのある夫婦愛の描き方も秀逸。なにより、ビルが犯罪にまきこまれてゆくからストーリーに飽きがこない。夢か現実かわからない犯罪ですけど、やっぱりそのへんはうまいなあって思いました。単なるラブストーリーじゃつまらないものね。でも、これが最後の作品だと思うと、(監督は満足していたようですが)やっぱりピークは過ぎたのかなって思う。まあ、これはこれで嫌いじゃないけど。
とりあえず、キューブリックよ永遠なれ!

参考HP Unofficial Kubrick Fan Site in Japan   スタンリー・キューブリック全作品


フルメタルジャケット  1987 アメリカ  スタンリー・キューブリック監督 ★★★
 前半は、バリス島の海兵隊新兵訓練所を舞台に、「殺人マシーン」となるため、地獄の特訓をうける兵士たちの模様。後半はベトナムのフエを中心とする戦闘シーンにおける兵士たちの地獄。これは、べつに、前半、後半にわかれている映画ではないのですが、どうも、二つに断絶されたような感じをうけます。前半、とくに最初に教官(彼ってほんものの教官だそうです)が、入りたてのほやほやたちに投げつけるダーティーワードがすっごい強烈。あの言葉だけで私はもうおなかイッパイ。さすが、キューブッリック! そう、前半の部分はなんやかやとあって、すごくハイでよかったんですが、後半なぜか、ありふれた感じに。一応ジョーカーっていう主役がいるんですが、彼が「私をうって」っていう息たえだえの少女をうってしまうところが中心なの? あれは戦争による人格変貌ではなく、ジョーカーの優しさだと思うのですが。話の中心にもってくるほどメッセージ性が強いとは思えない。ラストももうひとつ、なにかたりなかった。前半飛ばしてただけに、ちょっと残念でした。

参考HP STANLEY KUBRICK  CinemaScape/フルメタル・ジャケット (1987/米)


バリーリンドン  1975     イギリス  スタンリー・キューブリック監督  ★★★
 完璧な映像美で話題をさらったキューブリックの歴史映画。18世紀の貴族社会。故郷アイルランドを後にしたバリー(ライアン・オニール)は、あぶれものたちから人生を学び、ねらっていた病身貴族の妻、リンドン婦人と結婚する。前半はそこらへんまでのバリーの遍歴。後半は成長した継子とバリーの確執、そして決闘までを中心に描いている。長いんですけどね、時代絵巻みたいに。そして悲喜こもごもなのに、全体的にはコメディタッチといえます。私はいまひとつ、バリーって人がわからなかった。彼って最初はものすごく芯のとおった、そして瑞々しい感性をもった、強い人っていうイメージがあって、でも後半リンドン婦人と結婚してからは、したいほうだい、愛も身もない怠惰で放漫な生活を送るわけで、まあこんなもんだよ、人間なんて、っていわれればそうなんでしょうけど、もうひとつ主人公に一貫性が欠けるのですよねえ。実子を亡くした悲しみはよく伝わってくるのですが、あれだけやりたい放題やってたら、そんなに同情もわかないし。(かわいそうなのは婦人だ。)ただ、クライマックスの、義理の子との決闘のシーンはやっぱり見もの。あそこでバリーの本来の性格があらわれて気持ちよかったです。それに、決闘場面の納屋に満ち溢れるうっすらとした白っぽい光が素晴らしかった。あんなふうに劇的でいながら静謐さを漂わす場面をつくれるのはキューブリックだけでしょうね。

参考hp CinemaScape/バリー・リンドン (1975/米)

時計じかけのオレンジ   1971 アメリカ  スタンリー・キューブリック監督  ★★★★
近未来のロンドン(近未来語に、近未来服、近未来アジト)を舞台に、暴力と麻薬とセックスにあけくれる非行少年、アレックス(マルコム・マクドウエル)。彼は仲間の裏切り(このあたりもすごく丁寧にビビットに描いている。彼は細部まで本当にとことんこだわる人である)によってとうとう捕まり少年院いき。政府の洗脳実験で暴力嫌悪の無抵抗人間に矯正される。この映画ではジーン・ケリーの「雨に唄えば」とベートーベンの「第九」がものすごく効果的につかわれている。(崇高とは反対の意味での象徴にされてしまっているが)作曲家のなかでベートーベンを最も尊敬している私は、第九の使われ方には思い切り泣きましたが、作家の家のドアチャイムの鳴り方までが「運命」の最初のフレーズであることに気づいたとき、思いっきり笑いました。
★四つつけたけど、名画だ! とか素晴らしい! とかいう形容詞からはまったくはずれています。育ちのいい人はとても見てられないかもしれない。でもね、これがキューブッリックです。私は「博士の…」と「2001年…」そしてこの作品をキューブッリックの三大傑作だと思っています。(でも、やっぱり、ぜひ見てねとはいえません)
参考hp CinemaScape/スタンリー・キューブリック


ロリータ   1962 イギリス スタンリー・キューブリック監督
 ナボコフ原作「ロリータ」の映画化。主人公の中年作家ハンバート(ジェームス・メイスン)は15歳の少女ロリータ(スー・リオン)に一目で惹かれ、彼女の母親シャーロット(シェリー・ウインタース)と結婚する。妻は偶然にも事故死、とうとう娘を手に入れた男は、狂うほどの愛欲により自滅してゆく……。
これは、原作があまりにもすごいですから、だれがどうやったって、原作ほどいいのができるわけない。だからキューブリックはよくやったといえるのでは? よかったのは、ハンバートに最後までつきまとう、この映画のカギを握る謎の男を演じたピーター・セラーズですね。彼にはキューブリックらしさがもろにあらわれていた。そしてラストの直前、変わり果てたロリータに再会する場面では、(小説では別にどうってことなかったのですが)、さすがに音楽がからまってせつない雰囲気を醸し出しておりました。ちょと胸きゅんでした。でも、まあ、小説ですよ。これは、原作を読んでください。原作がどれほど素晴らしいかわかれば、この映画にたいする評価も、もうちょっと上がるのでは?
参考hp  キューブリック監督作品のページ  CinemaScape/スタンリー・キューブリック

スパルタカス  1960  アメリカ   スタンリー・キューブリック監督 ★★★
総指揮、主演カーク・ダグラスによる大作史劇。伝説の奴隷剣士スパルタカスの運命をダイナミックに刻みこんだ一大スペクタクル。彼は奴隷剣士達を指揮して脱出、ローマ帝国に反旗をひるがえす。ローマ各地の奴隷を解放して反乱軍を拡大し連戦連勝していくが、反乱軍は壊滅し、彼には過酷な結末が……
 キューブリックらしくない、とてもハリウッド的な映画だったと思います。カーク・ダグラスの色が濃い。でもはらはらしどおしで、長さは感じなかったです(197分もあるの)。心に残るシーンが多いからかな?

参考HP http://www4.justnet.ne.jp/~emily/list/kubrick/kubrick.htm
CinemaScape/スタンリー・キューブリック


現金に体を張れ   1956 アメリカ    スタンリー・キューブリック監督  ★★★
キューブリック監督の本格的デビュー作。刑務所をでたジョニー(スターリング・ヘイドン)が仲間を集め、レース中の競馬場の金庫から2百万ドルを強奪。だが、仲間の妻(こいつがものすごいヤな女)に知られていたことによって、計画にはほころびがみえはじめる。
緻密です。すきがないというか、すべてに行き届いているというか、もちろん映像は古いのですが、どこをきってもキューブリックしてるんです。これがデビュー作なんて、やっぱすごすぎ。
そして、なによりもラストです。もちろん教えることはできません。 叫ばずにはいられないあのシーン、私は叫んでから「あははっ」って笑ってました。(けっこうみんなそうみたい。「あーっ、、、、ははっ」ってなっちゃう)でもかわいそうなんですけどね。犯人さんたち、みんな。それにしてもあのシーン、絵ですね。あんなふうに見せることができるなんて、ただただ尊敬の一言。

参考hp   CinemaScape/現金に体を張れ (1956/米)
 http://www4.justnet.ne.jp/~emily/list/kubrick/killing.htm

俺たちに明日はない  1967 アメリカ  アーサー・ペン監督  ★★★
全米を所狭しと荒らしまわった実在のギャング、ボニーとクライドの物語。1930年代のアメリカ。不況に苦しんでいたこの時代、こそ泥クライド(ウオーレン・ビーティ)とウェイトレスをしているボニー(フェイ・ダナウェイ)のふたりは出会い、強盗を働くことになる。二人はゲームを楽しむように強盗を繰り替えしていく。やがて、若いC・Wモスとクライドの兄バック(ジーン・ハックマン)と彼の妻ブランチ(エステル・パーソンズ)が加わり、五人組の名はアメリカじゅうに轟きわたるようになる。しかし、順調に見えていた彼らの行く手にもとうとう陰りが見え始める。
 ラストがあまりにも有名なのですが、(確かに一回目みたとき、若かったので心に焼きついたのはそこだけだった)見直してみると、やっぱり細部までよくこだわった映画だと思います。見てのとおりクライドはめちゃかっこいい。でも、ボニーの気持ちに肉体的にこたえることができない。ようするに男になりきれないわけです。まず、そのギャップがおもしろい。それからなんといっても、バック夫婦に彼は異様に気をつかう。ブランチってはっきりいってアホですよ。でも「兄貴の嫁さんに失礼 だろ」って。そればっかり。ハックマンはまあ、典型的長男タイプなんでしょうね。なんか兄弟のかけあいだけで、クライドっていう人のお人よし度がきわだってしまう。彼がマッチョでもなく、傲慢でもないところが、この映画をとても魅力的にしていると思います。とにかく五人組はすべて役者がすばらしかった。まあ、いってみればあのラストのために、のこのこ牧歌的な強盗ごっこを(最後のほうは命からがら)つづけてきた、哀れな二人。彼らを憎むことなど、映画をみている人にはだれもできないでしょう。
参考hp CinemaScape/俺たちに明日はない (search result)(1/13)

ライフ・イズ・ビューティフル  1997 イタリア ロベルト・ベニーニ監督  ★★★
愛する妻(ニコレッタ・ブラスキ) を得て、子供(ジョルジオ・カンタリーニ)をつくり、親子3人の幸福な家庭を築いていたグイド(ベニーニ)。(ここまですごいおちゃらけ)だが、戦争の色が濃くなり、幸せだった家族には強制収容所行きの過酷な運命が訪れる。絶望と死の恐怖に支配された生活のなか、グイドはさまざまな"嘘"で子供の恐怖を取り除く・・・。

 泣けました。すごい感動でした。でも、なんといったらいいのか、ホロコースト自体があまりにも重すぎるテーマですから、あれは涙なんかでないほどの乾ききった世界でしょう。ジョークとか子供のための嘘とかそういう次元を越えたおぞましい世界であるわけです。だからどこかに違和感がある。親子や夫婦の愛を評価するならほとんど満点をあげられるんでしょうけど、ナチスをからませたところが、なんとなくずるいのかな、って思ってしまう。でも、すばらしい映画にはちがいありません。ライフ・イズ・ビューティフル。ほんとに、そう思いますよ。

参考hp  ライフ・イズ・ビューティフル
  CinemaScape/comment: ライフ・イズ・ビューティフル

キリングフィールド  1984 イギリス ローランド・ジョフィ監督
70年代、ポルポト政権下の戦乱のカンボジアを体験した、ニューヨークタイムスの記者、シドニー・シャンバーグの手記を映画化。彼とカンボジア人通訳のディズ・プランの友情、そして生還のドラマ。
ハイン・S・ニョールの演技が、ものすごくリアルで、演技じゃないみたいでした。ノンフィクションですから、カンボジアの混乱部分がすごく丁寧に描かれている。彼の運命は本当に過酷。だからこそ生きて帰れたという事実じたいがものすごい重みをもつ。そこに、まさに、ここで一発という感じで、ジョン・レノンの「イマジン」が流れてくるのですが、どう考えても狙いすぎ。でも、私は素直に泣けましたよ。
参考hp CinemaScape/キリング・フィールド (1984/英=米)


羊たちの沈黙 1991 アメリカ  ジョナサン・デミ監督  ★★★
連続猟奇殺人の犯人像を追う、FBI研修生のクラリス(ジョディ・フォスター)は自分の過去を話すことを条件に、監禁中の殺人鬼、もと天才精神科医レクター(アンソニー・ホプキンス)に協力を求める。クラリスは犯人の心理をレクターに教わり、いつしか犯人に接近していく……
有名なのでみんなみてると思いますが、非常にできのいい映画だと思います。この映画のポイントはレクター博士が、クラリスが捜査中の事件には直接関わっていないことですね。そのぶん、変態皮ハギ男が画面上でなんやかやと動いているのですが、彼の存在のなんという卑小さ。それにくらべて、レクターは情報を、レクターは知性と判断力、すべてをもっている。彼が野蛮人ではない、紳士とさえいえる(?)人食い男、というところが、これほどまでにヒーローに祭りあげられてしまった理由なのでは。と思われます。(彼が獄中でバッハのゴールトベルク変奏曲を流すシーン、好きだなあ。)
しかし、ラストの緊迫感はものすごい、手に汗握るとはまさに、このことでしょう。一回みてると安心できますけどね。ジョディ・フォスターはあの声がいいんですよ。大人っぽくって。ちなみに、この映画はホプキンスがほとんど動かないといっても、常識では考えられないほど恐ろしいことをするので、お子様にはけしてみせないでください。

参考HP 羊たちの沈黙  CinemaScape/羊たちの沈黙 (1991/米)

私の中のもうひとりの私  1988 アメリカ  ★★★
NY。50才を過ぎた哲学科の大学教授(ジーナ・ローランズ)は、自分の人生に満足しているつもりだった。彼女は再婚で、実の子供はいなかったが、再婚相手とも、彼の子供ともうまくいっていた。彼女は論文を書くために1年間の休暇と、書斎用のアパートメントを借りる。ふと気付けば空気口を通じて隣りのセラピストの声が筒抜けであった。そしてある患者(ミア・ファロー)の切実な悩みをきいているうちに、完璧なキャリアと満足な人生だったはずの日々がむなしく、おぞましいものに思えてくるのだった...ジーナが50才台のキャリアを持つハイソで知的な女性をまさに好演。果たして、彼女の内面を知り抜いて、彼女の本質を愛する男はだれか?  彼女の心の空白と秘められた情熱を見抜いていた作家にジーン・ハックマン。彼がでてくるなんて、ちょっと感激でした。あいかわらずハンサムではないんだけど、味がある。
そうですねえ、この映画ではミア・ファローの言葉が強烈でした。「彼女はすべてをもっているようにみえて、実際はなんにももっていないのよ。彼女の人生は空虚なのよ。なんて不幸な人なんでしょう」女だから、ここまでずばっといえる。それをいわせるウディって男はまったく何者? 内面をみつめて、つきつめてゆく、とても大人の、哲学的、ベルイマンっぽい映画でした。題名もベルイマンしてますよね。苦しみぬいてようやくふっきれた、ジーナのラストの表情が、清新で潔くて好き。
参考hp  http://www.ponycanyon.co.jp/shop/dvd/p16523.html    
CinemaScape/私の中のもうひとりの私 (1988/米)  

セプテンバー  1987 アメリカ
 避暑地バーモントのサマーハウスに集まった、六人の男女の夏の終りの二日間を描いた、哀感たっぷりの恋の物語。往年の大女優である母親(エレイン・ストリッチ)との確執で苦しむ、内向的な娘レーン(ミア・ファロー)、彼女の親友ステファニー(ダイアン・ウイースト)との友情と、一人の作家の卵(サム・ウオーターストン)をめぐっての三角関係を中心に、ストーリーはジャズのスタンダードとともに、進んでゆく。レーンが暗い。しかし、母親のせいか? あんなおばさん気にせず、好きにやったらいいのにってはがゆくなってしまう。暗い過去を引きずってしまう気持ちはわかるが、彼女を心から愛する男もちゃんとそばにいるのだから……ピアノの音と、しっとりとした雰囲気はよかったのですが、どうももうひとつパッションにかけた映画のような気がしました。でもウディはなぜ、女の親子の確執を描くのが好きなの? 
参考HP   Woody Allenのページ  CinemaScape/セプテンバー (1988/米)

ラジオ・デイズ  1987 アメリカ 
1940年代の始め。このころはラジオが家庭の団欒の中心であった。NYのロッカウェイで暮らす、ユダヤ人一家の人間模様をラジオ界の人々のエピソードを交えながら、ウディがノスタルジックに、そしてもちろんコミカルに描いている。
 この映画で語りを勤める僕はラジオドラマ「覆面の騎士」に憧れる少年。僕の父と母はいつも議論をしている。伯父のエイブ、伯母のシール、祖父、祖母、エイブの娘ルーシー、結婚を夢見るビー叔母さん、こんな家族の面々が愛をもって描かれている。のちに第二次世界大戦が始まり時代は暗く変わってしまいます。明るい人々によぎる一抹の不安感が胸にしみてくる。この陰りがあるから様々なエピソードも生きてくるのだろう。しかし、基本的に楽しい映画でした。
参考HP CinemaScape/ラジオ・デイズ (1987/米)
http://www.infoaomori.ne.jp/~sinohara/cinema/woodyalen.htm

ハンナとその姉妹  1986 アメリカ  ★★★
ニューヨークに住む三姉妹、ハンナ(ミア・ファロー)、ホリー、リーと彼女たちをめぐる男たちの人間模様。ハンナの元旦那役がウディ・アレンで、彼はテレビ局に勤めている、病的に心配過剰男。ウディはあいかわらずって感じなんですけど、ほかのひとたちも一見正常にみえて、実はものすごくごたごたしているんです。ハンナの妹、リーに惚れてしまう、ハンナの二番目の亭主役のマイケル・ケイン。彼の知性と良識のあいだで押さえきれなくなった情熱の現れ方がおもしろかった。本人は一生懸命なんでしょうけど、みていると笑えるっていうか、ほほえましいというか、みっともないんです。ハンナは愛情に満ち溢れていて、出来すぎていて、彼が彼女を愛しながらも、そこから逃げ出したくなるっていう気持ちがわかる。ホリーは、かわいそうな人。手当たり次第体当たりでぶつかってゆくが、なにをやってもうまくいかない人っていますよね。リーは、自分のことがまったくわかってない人。なにをしたらいいのか、なにを信じたらいいのか、手探りですがりつくものを探している。さて、この姉妹たち。どうなってゆくのでしょうか。ぜひ、みてください。とりあえず、ウディはハッピーな結末を迎えます。これって珍しい。ウディのくせに、ほろにがくなーい。

参考hp  ハンナとその姉妹 CinemaScape/ハンナとその姉妹 (1986/米)  http://www.infoaomori.ne.jp/~sinohara/cinema/woodyalen.htm

カイロの紫のバラ   1985 アメリカ  ★★★
 粗野な夫と苦しい生活のため、あまり幸福でない、ウエートレスをしている淋しい人妻(ミア・ファロー)が映画をみている。女はもうこの映画「カイロの紫のバラ」の筋を覚えてしまうほど熱中してみている。すると、画面にいる男優(ジェフ・ダニエルズ)が突然彼女にはなしかけてくる。「きみ、5回もみにきてくれたんだね」……彼は画面をぶっちぎり、飛び出してきて……二人は恋におちる……最初は何これ?って訝る、ファンタジーっぽい夢の世界。しかし、そこにはきちんと現実が描かれているのだ。主人公であるミア・ファローがかわいすぎる。(この映画でのミア・ファローは本当にきらきらときらめいていました。とくに、バンジョー、もしかしてウクレレだったかも? を弾くシーンが好き)彼女の夢はけっきょく夢と終わるのですが(この残酷さが人生なのだ)、ラスト、やっぱり彼女は映画をみているのですね。(確か、画面ではフレッド・アステアがダンスしてたと思う。)それもきらきらと輝いて、心から熱中して。現実は残酷で厳しい。しかし、映画はいつもそこにあって、夢を与えつづけてくれる。すべての映画ファンにウディがおくる、あったかい逸品。
参考hp    CinemaScape/カイロの紫のバラ (1985/米)  http://www.infoaomori.ne.jp/~sinohara/cinema/woodyalen.htm

ブロードウエイと銃弾 1994 アメリカ  ★★★  
 おもしろかったなあ、これ。最高でした。20年代のブロードウエイの舞台裏を描いた傑作です。劇作家(ジョン・キューザック)がギャングをスポンサーに、その情婦を押し付けられて稽古に入るが、彼の台本が悪いようで、どうもしっくりいかない。そんな折、情婦のボディガード、チーチ(チャズ・バルミンテリ)の思いもよらぬ才能が花開く。彼にアドバイスをうけた芝居はどんどんよくなってゆく。残る問題は、ギャングの情婦の演技のまずさだった。
キューザックが惚れている大女優、ヘレン(ダイアン・ウイースト)の粋なセリフや、情婦オリーブ役のジェニファー・ティリーの大根役者ぶりが楽しい。なによりもウディならではの皮肉な芸術談義がおもしろい。ウディはでていませんが、彼の代わりのジョン・キューザック、とってもキュートでした。きっとウディがやっていたら、あくどくなってしまっただろうと思います。
参考hp     CinemaScape/ブロードウェイと銃弾 (1994/米)   
         http://www.infoaomori.ne.jp/~sinohara/cinema/woodyalen.htm


ブロードウェイのダニー・ローズ  1984 アメリカ 
昔、ブロードウエイに名物男がいた。彼は売れない芸人の面倒をみている、冴えないマネージャー。彼、ダニー・ローズはようやく一人の男、カーノバーを売り出すことに成功しかけるが、彼は恋人(ミア・ファロー)がそばにいないと歌えないという。ダニーはしかたなくニュージャージーまでカーノバーの恋人を迎えにゆくが……
 この作品のミア・ファローはつんとしてて、あんまり似合ってないと思いました。こういう洗練された役はダイアン・キートンのほうが圧倒的にいいのでは? おもしろかったのですが、ウディにしてはもうちょっとっていう物足りない感じがしました。
参考hp おいしい生活  CinemaScape/ロードウェイのダニー・ローズ (1984/ ...     
     http://www.infoaomori.ne.jp/~sinohara/cinema/woodyalen.htm

インテリア 1978 アメリカ 
結婚三十年になる夫が妻との生活に疲れ、別居を切り出したところ、家庭は崩壊してゆく。3人の娘たちと親との複雑にからまったいびつな関係、母親が完璧であることによる窒息しそうな雰囲気、ウディがベルイマンを意識してつくったといわれるだけあって、シビアな世界でした。冷たく、暗く、寒々しい静かな画面。彼にはあまり、向いていないかもしれない。とはいえ、人の内面をとことん見つめるその真摯な眼差しはよく伝わってきました。あと、インテリアという題だけあって、部屋の内装が素晴らしい。一週間でもいいので、あんなおうちに住んでみたいなあ……
参考hp おいしい生活  CinemaScape/ウディ・アレン  http://www.infoaomori.ne.jp/~sinohara/cinema/woodyalen.htm
  

チャップリンの殺人狂時代  1947 アメリカ  チャールズ・チャップリン監督
これは、戦争による大量殺人を皮肉った作品なんですね。彼が演じるのは銀行をクビにされた、家族思いの紳士、彼が保険金殺人を次々に犯してゆくのは、彼が妻をこのうえもなく愛していたから。ヒューマニストとしてのチャップリンは消えています。笑いは少ないけど、(といっても要所要所ではむちゃくちゃ笑える)すべてにおいてすごく完璧につくられているという感じがしました。
うーん、でも、ちょっとブラックすぎて、ロマンチックな私としてはあんまり好きな作品ではないです。
参考hp CinemaScape/チャップリンの 殺人狂時代 (1947/米)
    http://www.paoon.com/film/ukaxlikt.html

チャップリンの独裁者  1940 アメリカ  ★★★
チャプリン初のトーキー作品。39年、9月、ドイツがポーランドに侵入した、第二次世界大戦勃発の月に(勇気あるなあ)製作は開始された。ナチスの狂気とユダヤ人迫害をまっこうから批判した傑作。チャップリンは独裁者ヒンケル(ヒトラーのもじり)と、彼に瓜二つのユダヤ人の床屋の二役。彼が独裁者と間違われ、占領国での演説台にたち、平和への願いを訴えるシーンは感動。(チャップリンにしては説教くさいかもしれないけど、こういう映画ではしかたないのではないか。彼がどうしてもいいたかったのは、まさにあの演説の内容なのだから)ヒンケルも、彼が演じていると、かわいらしさというか、人間くささがあって、よけいに作品の深みが増している。
参考hp チャップリンの独裁者  CinemaScape/チャップリンの 独裁者 (1940/米)


街の灯  1931 アメリカ   ★★★★
 私がみたチャップリン映画のなかでも、特に気に入っているものの一つ。「チャップリンってほんとに、すごい人だなあー」って見終わってから、涙に濡れたまま、しばらくぼうっとしていた覚えがあります。
 浮浪者チャーリーは、盲目の花売娘に恋をして、彼女のために必死に金をかせぐ。 チャーリーはあるカモをみつけるが、彼は酔っ払っているときだけ豪勢になるチンケなブルジョワだった。チャーリーのおかげで、娘は目がみえるようになるが、チャーリーは濡れ衣のせいで刑務所送りに。ラストシーン、目が見えるようになった輝くばかりの彼女を、ぼろぼろの格好をしたチャーリーが見つめている。彼女は彼がだれだか、理解することができない。しかし……うえーん、おもいだしたら、また泣けてきた……
参考hp CinemaScape/チャールズ・チャップリン

サーカス  1928 アメリカ  ★★★
サーカスに紛れ込んだチャップリンが、曲馬乗りの少女に恋をし、またまた珍騒動が……
これ、めっちゃ笑えました。サーカスより、チャップリンが追いかけられてるのをみているほうがずっとおもしろい。
メインに綱渡りのシーンがくるんですが、ここがすごいです。ぜったいみるべきだあ。(絶叫)
参考hp チャールズ・チャップリン(Charles Chaplin)  CinemaScape/チャールズ・チャップリン


巴里の女性  1923年 アメリカ 
 運命の悪戯から愛する恋人と駆け落ちに失敗してしまったマリー(エドナ・パービアンズ)はパリで金持ち紳士の妾となる。恋人との再会後、理想とかけはなれた生活をおくる彼女に落胆した彼は、死を決意する……
 チャップリンサイレント期の名作。「運命の女」風、物語。ありふれたドラマなんだけど胸に迫り、かつわかりやすかったです。あと、昔はやったのであろう、衣装がおもしろかった。
 CinemaScape/巴里の女性 (1923/米)  CinemaScape/チャールズ・チャップリン

キッド  1921 アメリカ   ★★★
チャップリンと彼が育てた捨て子が巻き起こす騒動。 ある母親がどうしようもなくなって捨てた子供をチャップリンが拾う。彼は貧乏(いつもだけど)だったので、迷ったがしかたなくその子を育てるようになる。 子供はすくすくと育ってゆく、チャップリンといろんな悪さをして、生計をたててゆくお手伝いまでしてゆくうちに、二人は離れがたくなる。しかし、運命のいたずらから実の母親と出会い、子供は金持ちになったその母親のもとへ帰されることになってしまう。こうやって書いても、どうも雰囲気が伝わりにくい。なぜって、チャップリンは、ストーリーはともかく、彼の劇中の動作がほとんどすべてなので、見なくちゃはじまりません。まあ、とにかくこの作品、私大好きです。子供と引き離されるところが涙、なみだでしたが、最後はめでたし、めでたしなので(あっけなかったというか、ものたりなかった気がしないではないが)、ご安心を。

参考hp チャップリンの無声映画の世界   CinemaScape/チャールズ・チャップリン



レオン  1994 アメリカ  リュック・ベッソン監督
 ニューヨークに生きる、腕利きの殺し屋(ジャン・レノ)が、家族を虐殺された十二歳の少女マチルダ(ナタリー・ポートマン)に出会い、仕方なしにはじめた命がけの交流が彼の人生を変えてゆく。
ナタリー・ポートマンがうまかったなあ。すごい目付きしてました。そしてベッソン映画では常連のジャン・レノはこれが極めつけみたいな感じ。ストーリーもテンポよく、フランス映画的あやふやさは見当たりません。終盤の死闘はものすごいです。(でもランボーみたいなうそ臭いしらけた感じにはならないところが、やはりフランス的なのでしょうか)悪役のゲイリー・オールドマンも変態っぽくてえげつなかったし、とにかく出てくる人みんな、真に迫っておりました。
参考hp Luc Besson

太陽がいっぱい  フランス 1959   ルネ・クレマン監督   ★★★
 貧しい野心家の美青年、トム・リプレイ(アラン・ドロン)が、まばゆいばかりの地中海の輝きのもと、完全犯罪を企む。彼の策略は見事に成功し、なにもかもを手に入れたかにみえたが……
アラン・ドロンが青春の痛々しい輝きを見事に演じきっています。この一本で彼は一躍世界スターになったわけですね。(これをビデオ屋さんでレンタルしたとき、テープがのびかけていてすごくショックだった。それくらい借りる人が多かったのかしら)
 リプレイと金持ちの息子フイリップ(モーリス・ロネ)は同性愛者だと、故淀川さんは断言してましたけど、私にはよくわからなかった。だって、リプレイは彼の恋人に惹かれて、彼をあんな目にあわすわけですし、ストーリーからゆくと、つじつまがあわないじゃん、って思いません? でも、たしかに最初のほうでは二人のいかがわしいような雰囲気は窺えましたが…
 とにかく、ホモかどうかはいまだになぞですが、ラストまで目がはなせない、ストーリーのおもしろさと映像の美しさ、そして音楽、ニーノ・ロータのあの甘美な物悲しい旋律が一体となった、素晴らしい作品だとおもいます。
参考hp http://www.simple-net.co.jp/amy/meiga%20.html     CinemaScape/太陽がいっぱい (1960/仏=伊)  http://homepage1.nifty.com/Kinemount-P/EIGA-KO-taiyouga.htm


ミツバチのささやき   1973 スペイン  ヴィクトル・エリセ監督  ★★★
 これは、ストーリーがどうとか、こうとかではなく、一遍の美しい詩か、絵画をみているような作品でした。みるもののイマジネーションによって、どんなふうにもとれるし、どんどん想像がふくらんでゆくのです。といっても別に難解ではなく、いちおう、二人姉妹が公民館でみた映画「フランケンシュタイン」が核となって話は進んでゆきます。幼いアナ(アナ・トレント)は姉のイザベル(イサベル・テリエリア)にフランケンシュタインは怪物ではなく精霊で、死んだのではなく、村はずれの一軒家にかくれていると教えられる。アナの幻想と現実はいつしかごちゃまぜになってゆく……
 アナを演じた女の子の目がものすごくイノセント。姉妹の会話や動作、彼女らの両親の感覚的な描き方、画面のなんともいえない色調、ほとんどつくっていないように自然でいながら、効果的な音楽、カメラワーク、どれをとっても芸術でした。
参考hp  CinemaScape/ミツバチのささやき (1972/スペイン)  http://plaza7.mbn.or.jp/~uchronia/spiritofbeehive.html
   
黒衣の花嫁  1968 フランス・イタリア  フランソワ・トリュフォー監督
結婚式の当日、いたずら半分に撃った弾丸で夫が殺された花嫁。犯人は五人のうちの一人だが、彼女は現場にいたすべてを一人ずつ着々と殺してゆく。これは、サスペンスなんですかねえ。あるいはミステリーとかいわれてますけど、ジャンヌ・モローが男を順番に完全制覇してゆく過程がおもしろいのであって、筋書きじたいには、それほど魅力はかんじませんでした。彼女の最愛の夫はすでに死んでますから、恋愛はからまないのでね。ちょっと、物足りない感じもします。が、モローは怪しく、美しく、そして残酷。黒い花嫁衣裳なんて、モロー以外にだれが似合う?


サンセット大通り  1950  アメリカ  ビリー・ワイルダー監督  ★★★★
 グロリア・スワンソンが、サイレント時代の大女優、ノーマ・デズモンドを熱演。サイレントからトーキーへ変わってしまったハリウッドの残酷な内幕を描く、かなりシリアスな内容でした。映画は、死体となってプールに浮かぶ主人公(ウイリアム・ホールデン)のモノローグで始まり、過去の栄光にすがって生きる、化石と化したかつての大女優の囲いものとなって暮らす彼の生活が、回想形式で浮かび上がる。彼の口から飛び出すシニカルなセリフに彼のやるせなさがもろに感じとれる。そして、デズモンドの執事に扮した、シュトロハイムがまったくけなげでした。(おまえがそんなだから、彼女がいつまでたっても大人になれないんだよ、っていいたかったけど。)ラスト、警官につきそわれ、フラッシュのなか、階段から降りてきてポーズをとるスワンソンこわかったです。(カメラにちかよりすぎー。よるなよるなー。あれはニュースカメラだってゆうのに)
参考hp CinemaScape/サンセット大通り (1950/米)   http://www.geocities.co.jp/Hollywood/5710/sunset-blvd.html

ストレンジャー   1946 アメリカ オーソン・ウエルズ監督
オーソンウエルズ主演、監督のサスペンス。コネチカット州の小さな町を舞台に、若い妻と結婚して静かに暮らしているナチの残党を政府のエージェント(エドワード・G・ロビンソン)が追いつめてゆく。ウエルズを信じきっていた妻がしだいに、身近なものへの恐怖にのみこまれてゆくかなしさ。ラスト、教会の時計塔での壮絶なシーンがウエルズならでは。 自称正義の味方、アメリカ人にとって、やっぱりナチはああなるべきもんなんでしょうね。
参考hpOrso'n Welles 「ザ・ストレンジャー」 監督 ...

赤い靴   1948 イギリス エメリック・プレスバーガー、マイケル・パウエル監督  ★★★
 ファンタスティックで悲しいバレエ映画。バレエ団を主宰するボリス・レルモントフ(アントン・ウォルブルック)は芸術至上主義者。彼は新人バレリーナ、ヴィッキー・ペイジ(モイラ・シアラー)の才能に目をつけ、厳しいレッスンで鍛え上げる。同じく彼がみいだした新人作曲家ジュリアン・クラスター(マリウス・ゴーリング)が参加した、創作バレエ「赤い靴」は大好評を得て、ヴィッキーは一躍スターダムにのしあがる。ボリスの野望は大きくなるが、ジュリアンとヴィッキーの恋をしると、彼は激憤。ジュリアンを解雇してしまう。ヴィッキーはボリスの目指す芸術のさらなる高みと、ジュリアンへの愛の板ばさみになり、最後の悲劇が訪れる……。
 約10数分にも及ぶバレエシーンが圧巻。でも、私はボリスを演じたアントン・ウオルブルックがすごいと思いました。彼の貫禄、プライド、冷徹さ、そして芸術と、ヴィッキーへの愛、彼は自分が嫉妬しているなどと知りたくもなかったのでしょう。彼はバレエの成功よりも、ヴィッキーを求めていたのだと、ぜったいに認めることができない、かわいそうな男なのです。
参考hpマイケル・パウエルの世界

アンタッチャブル  1987 アメリカ  ブライアン・デ・パルマ監督 
 ケビン・コスナー演じるエリオット・ネスが、30年代、禁酒法下のシカゴの暗黒街を舞台に大活躍。アル・カポネをデ・ニーロが演じていまして、すごい不気味でこわかったです。が、この映画ではなんといっても、昔は腕利きだった老ストリート・コップを演じたショーン・コネリーが光っていました。(彼はこれでアカデミー助演男優賞をとりました。)彼も年をとるほど渋さがまして、演技も風格も円熟してくる人ですよね。ストーリーは単純明快で、テンポもよし、セントラル駅での銃撃戦、(赤ん坊が乳母車ごと階段から落ちてくるところ)が、緊迫してて印象的だったと思います。
参考hp アンタッチャブルサイト -



ブリット 1963 アメリカ ピーター・イェーツ監督

坂の町、陽光溢れるサンフランシスコを舞台に、上院議員の政治的圧力に屈することなく、重要裁判の証人殺人事件の真相をつきつめようと奔走する、一匹狼的刑事、ブリット。スティーブ・マックイーンって私の大好きな俳優さんなんですが、あのクールさにはなんともいえないくらいしびれるんです。クールなんだけど、ときおり熱く、淋しく、やるせなく、弱さまでがかっこいーくみえてくるのが不思議。この作品ではサンフランシスコでのカーチェイスが(今では珍しくないけど)迫力ありました。ストーリーもわかりやすく、刑事ものがきらいな人にもおすすめです。
参考hp  CinemaScape/スティーヴ・マックイーン (search result)
 

ニュールンベルグ裁判     1961  アメリカ スタンリー・クレイマー監督   ★★★
 戦争裁判の矛盾を問うクレイマー監督の法廷ドラマの傑作。裁判ものってあのドラマチックさが大好きなので、いままでにいっぱいみてきましたが、これは特に出来がいいと思われます。
 第二次世界大戦終結後、ドイツのニュールンベルグで第三帝国憲法に携わった司法関係者の裁判が始まる。
自身の罪を認め、無罪になることを頑なに拒否する高潔な裁判官にバート・ランカスター、そして彼を裁くことに苦しむ主役の老裁判官にスペンサー・トレイシーですが、やっぱり、バート・ランカスターは目がいいですね。深い、どこまでも沈んでゆきそうなあの目、寡黙でいながら、憂いにあふれたすべてを語り尽くす目です。でも、この作品ではオスカーをとったドイツ人弁護士役のマクシミリアン・シェルが迫真の演技でした。もう裁判に勝つためならなんでもやります。絶叫ですね。彼の弁論をきいていると、見ているほうも熱がはいってきて、「そうだ、そのとおり!」などとうっかり彼の思うツボです。(腕利きの弁護士は詭弁家でもあるってことかしら。)あと、マレーネ・ディートリヒやモンゴメリー・クリフトといった豪華なキャストが揃っていて、けっこう長い作品ですが、最後まで集中してみていることができました。
参考hp CinemaScape/ニュールンベルグ裁判 (1961/米)


ニュー・シネマ・パラダイス   1989  イタリア・フランス ジュゼッペ・トルナトーレ監督  ★★★
 とても有名なので、解説はいらないかもしれません。とにかく、涙なしではみられない、ぬくもりにみちた傑作です。モリコーネ作曲のテーマ音楽も涙腺を刺激します。映写技師アルフレッド(フイリップ・ノワレ)と少年トト(サルバトーレ・カシオ)の友情、なんといっても二人の映画への愛が、全編をとおしてひしひしと伝わってくる、ノスタルジックでありながら、生き生きとした躍動感溢れる作品なのです。ラストはきっと監督が最初からこれだ! と決めていたんでしょうねえ、思い出すたびに、うるうる、そしてあったかーい気持ちになります。

参考hp http://www.u-gakugei.ac.jp/~b012701/movie.htm

アポロンの地獄     1967 イタリア  ピエル・パオロ・パゾリーニ監督 ★★★
ギリシャ悲劇「オイディプス王」の映画化。「父を殺し、母と交わるであろう」というアポロンの神託をきいた、彷徨える青年オイディプス(フランコ・チッティ)の過酷な運命を、力強く、真っ向から、完璧な映像美によって表現しきっている。
実は、私はこの監督を知らなかったので、見るまではたいして期待していなかったのでしたが……いやあ、まいりました。
最初から最後まで素晴らしかったです。実の母親役にシルバーナ・マンガーノ(はまり役)、このいつまでたっても老けない美貌の女王を、まさか本当の母親であるとは知らずに愛してしまう、青年の魂の疼き、太陽が、そう、原始の、太陽がギラギラ輝く、光りの渦のなかでの父親殺し、有名なスフインクスの登場、そして、自分を追いつめてゆくことを知っていながら、自分の過去の消息をたどらずにはいられない彼の悲しみの過酷さ。両目をえぐるところ、どうなるかと冷や冷やしておりましたが、まあ、ホラーにはなっておりませんでした。リアルはリアルですが、なんといっても彼の悲しみこそがリアルですからね。それにしても、イタリア人だから、こんなふうに、描けるのでしょうか? あつくるしいとも確かにいえますが、それ以上に美しいでしょう。いまも、彼らの着ていた衣装や乾ききった風景、空のおそろしいほどの青さ、すべてが目に焼き付いております。
参考hp  CinemaScape/アポロンの地獄 (1967/伊)  ピエル・パオロ・パゾリーニ研究  



失われた週末  1945  アメリカ  ビリー・ワイルダー監督
 どうしようもない渇望とおそろしい禁断症状にさいなまれるアルコール中毒作家に、レイ・ミランドがなりきって演じている。
私は彼の恋人役のけなげさに涙があふれました。本当に辛いのは本人でしょうが、彼らの周りにいる人こそが真の犠牲者なのではないかと思います。「酒のバラの日々」に似てますが、ラストはこっちのほうが希望はあるのかな? とにかく、みなさんも淋しさや自信のなさをまぎらわすために飲むのはやめましょうね。
参考hp 失われた週末 The Lost Weekend

第十七捕虜収容所  1952 アメリカ  ビリー・ワイルダー監督  ★★★   
第二次世界大戦下のドイツの捕虜収容所。その一匹狼的な性質からスパイ容疑をかけられた軍曹(ウイリアム・ホールデン)が、内部スパイを見つけ出し脱走にいたるまでの人間ドラマ。ホールデンの顔って、実はあんまり好きではないのですが、このときのホールデンはむちゃかっこよかったです。
参考hp CinemaScape/第十七捕虜収容所 (1953/米)


お熱いのがお好き   1959 アメリカ  ビリー・ワイルダー監督 ★★★
禁酒法時代のシカゴ。ギャングが密告者を殺す現場にたまたま居合わせてみつかってしまったバンドマン、ジョー(トニー・カーティス)とジェリー(ジャック・レモン)は、ギャングから逃れるため女装して女性だけのバンドに紛れ込み、マイアミに逃走する。
二人はともに、歌手のシュガー(マリリン・モンロー)に一目ぼれするが、ジェリーは金持ちの初老の男からぐいぐいせまられプロポーズされてしまう。ジョーとシュガーの仲はジョーの策略により順調に発展していったが、再びのギャング登場によって一気にクライマックスへ……とにかくおもしろかった。女装した二人にほんものの男がからんでくるところが、とくに好きです。モンローもぴったりの役でした。
参考hp Marilyn Monroe  ビリー・ワイルダー監督作品リスト
http://www.slis.keio.ac.jp/~ueda/movie/wilder.html

七年目の浮気   1955 アメリカ  ビリー・ワイルダー監督
 マリリン・モンローのスカートまくれ上がりシーンが有名な、ワイルダー監督の傑作コメディ。
妻子を避暑地に送り出し、浮気の虫にうずうずする男と、上階に引っ越してきたCMモデルとの微妙な関係。
純でいながら、お色気たっぷりなモンローへの熱い思いと、愛する妻子への思いに挟まれて、ふらふらになるトム・イーウエルがおかしい。ラストのモンローにちょっと、キュンとします。
参考hp Marilyn Monroe  ZAKZAK  ビリー・ワイルダー Billy Wilder

麗しのサブリナ  1954 アメリカ    ビリー・ワイルダー監督  ★★★
 ロングアイランドの大富豪、ララビー家のお抱え運転手の一人娘、サブリナ(オードリー・ヘップバーン)は、ララビー家の次男デヴィッド(ウイリアム・ホールデン)に恋しているが、まったく相手にされない。ところが、父親にすすめられて訪れた、二年のパリ生活によって、見事なレディとなって帰国する。まるで、見向きもしなかった冴えない田舎娘の突然の変貌に、女泣かせのデヴィッドまでが、たちまち夢中になる。長男ライナス(ハンフリー・ボガード)はビジネスに夢中で、デヴィッドとサブリナの仲が会社運営のための、策略結婚の邪魔になることを気にして、なんとか手をうとうとするが、サブリナと時間をともに重ねてゆくうちに、彼女の心に異変がおきはじめ、ライナスもついに、ある決心をするのであった。
 という感じのストーリですが、おしゃれになって帰ってきたヘップバーンの衣装が最高。ドレスをきてテニスコートでハンフリーボガードとダンスするシーンが、すごく素敵でした。「いま、ここに弟がいたら、キスして欲しい?」「んー」「……(ここでキス)」「弟の変わりのキス。兄弟だからね」って平気でキスしたあとボギーがいうんですが。もう、たまりません。うっとりです。
参考hp 麗しのサブリナ Sabrina  ビリー・ワイルダー Billy Wilder