ヒロセ貿易システム

輸出管理(安全保障貿易管理) 2023年7月



 輸出管理とは、外国為替及び外国貿易法(外為法)第1条の「外国との取引の正常な発展と日本又は世界の平和や安全の維持」、「日本経済の健全な発展に寄与すること」を目的として行う管理である。そして、その特質上、安全保障貿易管理と呼ばれている。
 以前の東西を対抗軸とした冷戦型輸出管理とは異なり、現在は大量破壊兵器・通常兵器を使用した外国政府の紛争、テロリストの台頭を防ぐことを目的とした不拡散型と言われる輸出管理となっており、国際条約(核兵器不拡散条約, 生物兵器禁止条約, 化学兵器禁止条約)、国際輸出管理レジーム(核供給国グループ(NSG), オーストラリアグループ(AG), ミサイル関連機材・技術規制(MTCR), ワッセナー・アレンジメント(WA))の国際的枠組みの規定に基づき日本の法律である外為法関連法規が定められている。
 外為法関連法規により、いわゆる戦略物資とされる貨物とその技術については、海外への貨物輸出や役務提供に経済産業省の許可が必要となる場合がある。
大量破壊兵器・通常兵器に転用可能とされる貨物やその設計・製造・使用技術は、詳細に品目・スペックが規定されており、法律が毎年改正されるため特に注意が必要となっている。
そのため輸出や提供の事前に法律と照合しスペック等を確認する輸出貨物・提供技術の該非判定が常時必要とされている。また、特例規定として運用解釈や公知の技術の規定等に該当するもので許可不要とされるもの等もあるが、内容が限定的となっているため注意が必要である。
近年は、日本においてもロシアとウクライナにおける戦争に関する措置が度々取られていることが特記される。
また、技術流出防止に関し「みなし輸出」管理の明確化がなされる等数々の改正が行われている。





リスト規制とキャッチオール規制
 輸出管理は、外国為替及び外国貿易法関連法規の輸出貿易管理令別表第1・外国為替令別表の1項から15項までで構成されるリスト規制(武器、大量破壊兵器関連汎用品、通常兵器関連汎用品)と16項で構成されるキャッチオール規制(補完品目(大量破壊兵器・通常兵器関連汎用品))があり、品目・スペック等が各項で規定されている。
概観としては、リスト規制が全地域規制となっており、武器・大量破壊兵器(原子力、化学兵器、生物兵器、ミサイル)・通常兵器(ワッセナー・アレンジメントによる先端材料、材料加工、エレクトロニクス、コンピュータ、通信関連、センサー・レーザー、航法関連、海洋関連、推進装置、その他、機微品目)であり、キャッチオール規制がグループAと呼ばれる輸出貿易管理令別表第3の地域を除く全地域規制となっており、汎用品(関税定率法別表と連携し定められた品目で補完品目とされるもの)となっている。
 リスト規制は、ハイテクノロジーに重点を置いたものとなっているが、キャッチオール規制は、最終需要者や使用用途に重点を置いた規制であり、2つは異なる区分原理をもったものとなっている。このためリスト規制に対し、キャッチオール規制はローテクノロジーの品目が広く含まれ、また日用品等も含まれる構成となっている。
各企業は、基本的にリスト規制を中心としキャッチオール規制を組み込んだ輸出管理を展開している。
グローバルな緊急輸出に対応するため包括許可を取得する企業もあり、この制度によりスピーディーな対応が行えるようになっている。

また、品目の取引金額により許可申請が不要になる少額特例がある。
更なるシステムの改善により、申請の効率化と許可までの日程短縮が国際競争力を高める力となっている。


輸出管理上の国別カテゴリー
 2019年8月、経済産業省により、ホワイト国・非ホワイト国の通称がグループA〜Dのカテゴリーに変更された。
また、非ホワイト国は国際輸出管理レジームへの参加国であるか否か等により更に細分化され、該当する各カテゴリーに分類されることとなった。(下記の輸出管理規制分類参照)。これはグループA〜Dの順に貨物輸出・技術提供の基準が厳しくなり、場合によっては許可に日にちを要するケースや輸出禁止のケースも発生する。
グループAの国については、キャッチオール規制の対象からは外れており規制としては緩やかである。
グループDの国については、輸出規制国や紛争地域であり貨物輸出や技術提供が当然ながら厳しいものとなっている。なお、規制レベルは国際情勢を踏まえ適時変更される。



輸出管理規制分類 2023年7月現在





輸出管理関連法規
・外国為替及び外国貿易法
・輸出貿易管理令
・外国為替令
・輸出貿易管理規則
・仮陸揚貨物が核兵器等の開発等のために用いられるおそれがある場合を定める省令
・輸出貨物が核兵器等の開発等のために用いられるおそれがある場合を定める省令
・輸出貨物が通常兵器の開発等のために用いられるおそれがある場合を定める省令
・輸出貿易管理令別表第1及び外国為替令別表の規定に基づき貨物又は技術を定める省令
・貿易関係貿易外取引等に関する省令
・技術が核兵器等の開発等のために利用されるおそれがある場合を定める告示
・技術が通常兵器の開発等のために利用されるおそれがある場合を定める告示
・仲介貿易に係る貨物が核兵器等の開発等のために用いられるおそれがある場合を定める省令
・技術の仲介取引が核兵器等の開発等のために用いられるおそれがある場合を定める告示
・輸出貿易管理令の運用について
・外国為替及び外国貿易法第25条第1項及び外国為替令第17条第2講の規定に基づき許可を要する技術を提供する取引又は行為について
・外国為替及び外国貿易法第25条第4講の規定に基づき許可を要する外国相互間の貨物の移動を伴う取引について
・輸出許可・役務取引許可・特定記録媒体等輸出等許可申請に係る提出書類及び注意事項等について
・大量破壊兵器等及び通常兵器に係る補完的輸出規制に関する輸出手続等について

上記は、主な法律・政令・省令・告示・通達である。


以上、文責及びフロー図・表作成 廣瀬侑子



事業所歴:2015年8月 ヒロセ貿易サービスからヒロセ貿易システムへ名称変更
事業内容:工業関連輸出管理推進事業
代  表:廣瀬侑子  YAMAHAを経て後、メーカー精機事業部の輸出管理(安全保障貿易管理)業務に携わる。
     立命館大学大学院法学研究科修士課程修了。日本安全保障貿易学会会員。




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