ワーグナー:エルザの大聖堂への行列(歌劇《ローエングリン》より)


吹奏楽経験者ならおなじみ(古い?)の『エルザの大聖堂への行列』は歌劇《ローエングリン》の中の曲だ。《ローエングリン》は「第3幕への前奏曲」「第1幕への前奏曲」「結婚行進曲」が有名だが、この「エルザ」についてはオーケストラでは単独で演奏されることがなかった。全曲盤でないと聴けないが、全曲盤LPも私が高校時代はあまり発売されてなかった。ひたすらNHK-FMで放送されるのを待ち続けた気がする。

吹奏楽で演奏したクラシック曲の原曲を聴いてはクラシックファンになっていった経緯がある。「エルザ」もオケの演奏を聴きたいと思った。《ローエングリン》全曲盤のCDを入手したいま、ようやく願いがかなう。というは大げさで、ウソだが、「エルザ」を聴くのは本当に久しぶり。

いままでオケの演奏をいくつか聴いたがあまり感動するのがなかった。とくに歌劇では突然行列が遮られてしまうので、曲が中途半端に終わる。吹奏楽アレンジは独自に追加されたものだったのだ。そのため、はじめてオケの演奏でこの曲を聴いたとき、大いに欲求不満に陥った。

結局、吹奏楽コンクールのテープで豊島十中や首里高校の演奏を聴いていたように思う。もちろん、自分の高校の演奏も。たぶん解釈は自分たちの演奏が一番好きだった。

サヴァリッシュ/バイロイト祝祭管弦楽団の《ローエングリン》は、冒頭、第一幕の前奏曲から、会場ノイズが気になる。この曲の弱音の美しさに浸ろうと思っても、ざわざわゴホンゴホンとうるさい。しかし演奏はとてもいい。途中を飛ばして、さっそく「エルザ」を聴いてみる。曲の見出しには、第2幕第4場「幸ある道をお行きなさい」とある。

「エルザ」でも咳がうるさい。

が、かえってその会場ノイズが、吹奏楽で演奏を思い出す。

冒頭、フルートがたっぷりとふくらませて歌ってくれる。いい感じだ。でもオーボエソロにひきぐつあたりに近づくと、結構あっさり気味になる。オーボエはもっと息を長く粘っこくてもいいし、クラリネットはさらにそれより妖艶に演奏してほしい。この曲は、歌劇のシーンとは関係なく、ゆっくりねっとりした演奏(カラヤン風?)が好みだ。が、サヴァリッシュの演奏もいい。さっぱりしすぎているかと思ったが、蕭々と続く行例に荘厳さを感じて良い雰囲気だ。途中から合唱が加わるが、このあたりからが特に美しい。合唱とオケが絡み合って盛り上がりを見せ、金管が加わるところは圧巻。

このまま吹奏楽アレンジで終わってほしい。なんて思う。いいなあ、この「エルザ」。

佐渡裕/シエナはどんな演奏しているのか聴きたくなった。

そういえば「第3幕への前奏曲」も演奏した。


月 - 9 月 8, 2008   01:17 午前