第23章 ポンセット2号機の追尾精度の向上対策(VNS型は2レール式より優れた方式か)

追尾精度の向上対策

今回ポンセット2号機はVNS型を採用したが、はたして、追尾性能や全体的精度が2レール式の1号機とくらべて優れているのだろうか?実際の星空で検証した

出来上がったままの状態(切削加工したまま)では少し引っかかるような動作もあり、ピリオディックモーションエラー(PE)も約+-10〜20”とあまり思わしいものではなく、こと追尾性能にかんしては、VNS方式の優位性はかんじられない。今回はなにが問題なのかを明らかにするため、1つずつ対策を行うたびに実際の星を観察し効果を確認しながら検証することとした。
考えられる追尾不良の原因と対策は

1 モータ支持の弱さ
モータの振動がでやすいのでおもいきり弱くしていたためモータが駆動中一見して判るほど動いていた。共振点を避ければ問題なさそうなので。補強した
2 ウオームの横方向の剛性不足
前回あまり問題でなかったが今回は支持方法を変えたためか横剛性が弱くなり、追尾速度の変動が不規則に発生した。ピアノ線で補強した

3 ウオーム、ギヤの仕上げ精度-
前回同様、面の平滑化となじみをよくするため、ウオームとギアの摺り合わせを行った。当たり面がスムーズでないと、びびりやひっかかり
がおこる。最終摺り合わせは研磨砂だけでは不十分で、ベンガラや酸化セシウムなどで鏡面仕上げをしたい。

ここまで行ってから実際の星を観察しながら追尾性能を確認したところ、引っかかりや振動はまったくなくなった。しかし時に不安定な動きがある そこで

4 ウオーム、ギヤの刃当たり不良、浮き上がりなど--------ウオーム、ギヤの山の先端を少し削った。
再びフィールに持ち出し実際に星で確認したしたところさらにスムーズな動きとなっており、明らかな、改善の成果がみとめられた。がピリオディックモーションエラー(PE)はあまり変わらない(±10〜15”)

5 ウオームのピッチ(傾斜)の不ぞろいの修正----------前回同様 割りナットを作り、摺り合わせ
を実施した。この結果は劇的で、これまで何をやってもさっぱり効果がなかったPEがこれを実施したとたん、劇的に改善された。それまでPEが±10〜15”であったものがたった1度の摺り合わせで少なくとも±5”以下になった。眼視200倍くらいではPEはほとんどわからない、やはりウォームのネジの傾斜が一定でない(1回転ごとに周期的に変化する)ことがPEの原因だったのだろう。

6 ウオームの軸受けの球面化と摺り合わせ
さらなる高精度をめざし、ウオームのスラスト軸受けを旋盤加工、球面化したが、その効果は思ったほどではなかった。しかしその後この軸受けを砂摺りを行ったところ驚くほど効果があった。スラスト受けにも凹凸があったのだろう。現在のPEは±1〜2”程度に収まっているがこれなら高級赤道儀にも負けるまい。充分満足できる精度だ。
                             


どのくらいの傾斜の狂いがどのくらいの追尾速度エラーとなるのか?たとえば市販赤道儀クラスのPE=10”とすれば、1分間の追尾で動く角度=15*60*60”/60=900”だから10/900=0.0111。ゆえに筆者の例では1分間の送り=ピッチ1.5mmの90分の1。1.5/90=0.016mm。つまりウォームが一回転する間にわずか16μの誤差があるだけで10”のPEが出るのである。

もしオーダメード最高級赤道儀なみに1”の誤差に収めたいのであれば誤差はなんと1.6μしか許されないことになる。こんな精度はどんな高級な工作機械をもってしても、(少なくとも切削加工だけでは)歯が立たないオーダーだ。超高精度を得る方法は唯一摺り合わせしかない。
 

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