バッドニュース☆グッドタイミング

食わず嫌いでもないけれど、たぶん自らすすんでは手を出さないだろう、というものってありますよね。 ウッキーは演劇好きだけれど、今まで行ったのはシェークスピアだったり、ドストエフスキーだったり、主に古典作品に興味を持っていました。 ところが、2週間ほど前に会社で「都合が悪くなって宙にういた演劇のチケットがある」と耳に入ってきて、何となく「行ってもいいけど〜」くらいの軽い気持ちでチケットを引き受けました。 それがきっかけで、こんな作品に出会えるなんて思いもせずに。

その作品は三谷幸喜作・演出の喜劇で、出演者は沢口靖子、伊東四朗、角野卓造さんら。 劇は2時間休憩無しのぶっ通し。 開演とともビゼーのカルメンが鳴り響き、まるでテレビドラマのオープニングのように、コミカルなポーズをした出演者たちが、スポットライトの中に浮かび上がります。 そのスピード感あふれる演出。 「す、すっげえ〜」 そして、場面はホテルのラウンジへ。 最初から最後まで同じセットで、ちょっと奇抜なのは、舞台左下から右上へ大きな階段があることと、右手にエレベーターが2台あることだけ。 その大道具が劇の中で、実によく活きてきます。 三谷幸喜って、CMでキムタクと絡むだけの変なおじさんだと思っていたら、すごい才能の演出家なんだなあ。

話は沢口靖子と生瀬勝久のカップルが、2時間後に始まる披露宴の打ち合わせを、ホテルでしているところから始まります。 このカップル、昔コンビを組んでいた漫才師「エントツとトンカツ」(伊東四朗と角野卓造)の娘と息子。 親同士は10年前にけんか別れして絶縁状態にあります。 そして、なんと披露宴当日まで両方の父親に結婚の報告を切り出せないまま、披露宴に呼んでしまったから、さあ大変。 ドタバタのうちに、勘違いした伊藤が漫才コンビを復活させようとしたから、さらに話が混沌として・・・・。 息もつかせぬスピード感と、吉本新喜劇などと質的に違う洗練された笑いの中で、瞬く間に2時間が経過します。 役者は全部で7人しか出ていなくて、各人の持ち味が見事に演技に出ています。 ウッキー、実は、沢口靖子は演技が下手だからあまり評価していませんでしたが、容貌はあの通りの見事な美形だから、劇中で真っ赤なドレスを着て登場すると、それだけで華があります。 それに、驚いたことに沢口さんって速い展開のコメディーにはすごい相性がいいと思いました。 彼女は三谷喜劇初登場だそうですから、本人にとっても新境地を開く舞台だったのかも知れません。 観客全部が間違いなく満足して家路についただろう、と思うほど楽しい舞台でした。

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