リスベート・ツヴェルガー絵本原画展

 

2002年師走、ウッキーは転勤のため、故郷若狭で暮らすようになりました。 そして、久々に京都で絵を鑑賞する機会が巡ってきました。 場所は京都駅の伊勢丹にある、美術館「えき」KYOTOです。

リスベート・ツヴェルガーは、1954年ウィーン生まれの女流画家。 「オズの魔法使い」や「不思議の国のアリス」のようなお馴染みの物語をはじめ、「ノアの方舟」や新約聖書に題材をとった作品まで、110点に及ぶ美しい作品が紹介されました。

zwerger.jpg (19524 バイト)

作品は、絵本の原画にふさわしく色彩鮮やかで、独特の空想の世界を描き出しています。 パンフレットの表紙(写真上)になっているのは、「Christian Morgenstern」という詩人にインスピレーションを得た作品の一点(偉大なラルース)で、小さな頭と大きくて真っ赤な体をしたうさぎ(?)の姿がユーモラスです。 作品全般に、洗練されて都会的なセンスが感じられます。
 
ところで、この人の絵は、こういう童話的な絵ばかりではなくて、大人っぽい絵もあり、それがまたすばらしいのです。 O・ヘンりーの名作「賢者の贈り物」を描いた連作がありましたが、女性らしい感性にあふれた水彩の作品でした。
 
若くて貧しい夫婦が、お互いにクリスマスプレゼントを贈ろうとします。 夫ジムは、最愛の妻デラにきれいな装飾の髪飾りを買い求めます。 ひざの下まである栗毛の長い髪が、デラの自慢だったから。 ところがデラは、ジムが大切にしている金時計にお似合いの鎖をプレゼントするために、髪を売ってしまったのです。 そして、同じようにジムは妻への贈り物を買うために、自慢の金時計を手放してしまっていたのです。
 
このせつない物語を、女性のやさしい視点で表現します。 きれいな髪を切った後で、振り返りながら鏡を眺めているデラの姿が印象的でした。 時期的にクリスマスシーズンだったから、一層記憶に残ったのかもしれません。 美術館を出る頃には、京都の街がすっかり夕闇に包まれていました。

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