水彩の力、素描の力

ブリヂストン美術館

 

東京から若狭に戻って、もう1年3ヶ月。 たまに上京して、晴れわたった空と乾燥した空気の東京の冬にふれると、懐かしささえ感じます。
さて、今回は出張の合間に時間を見つけて、八重洲のブリヂストン美術館へ足を運びました。

開催されていたのは、「素描と水彩画」というテーマの下に、50点あまりの所蔵品を紹介するコーナー展示でした。
入念に準備され、時間をかけて完成された油絵や彫刻と比べて、一見地味でささやかにみえる」素描や水彩画の表現にふれてほしい、という趣旨の展示です。(「 」内はリーフレットから引用)
さて、実はウッキーは展覧会へ行って、素描があっても、あまり時間をとらずに、通り過ぎることが多いのです。 絵の色を楽しみたいという割合が、比較的大きいからです。 という訳で、今回の展示でも、どうしても素描より水彩画の方に目がいってしまいます。 必然的に、紹介する作品も水彩画に・・・。

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まず最初は、ギュスターヴ・モロー(1826〜98年)の「化粧」(1885〜90頃)という水彩画です。 グワッシュという不透明絵の具で描かれています。 ツヤのない絵の具の質感と、水性画ならでは紙のそり具合が、本当にいいのです。
33cm×19cmという小品なのですが、それはそれは存在感のある、すばらしい作品で、展示室の中では群を抜いて輝いていたと思います。 モロー独特の妖艶な雰囲気、鮮やかな色使い。 しかし、派手すぎず落ち着きがあります。 緻密で、細部にいたるまで神経が行き届いた秀作です。 画家の技術の高さを、これ見よがしに見せつけているかの様な、本当に完成度の高い作品でした。

次に、ドガ(1834〜1917年)の「踊りの稽古場にて」(1895〜98年)を掲載します。 

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ドガが得意とした踊り子達が題材で、稽古場の片隅の一瞬を描写したスナップ写真のような作品。 水彩画は、扱いの手軽さから、即座に描きとめるのに適した手法でした。 でも、本音を言うと、これはやっぱり習作という感じ。 モローの作品と比べると、完成度に差があります。

ウッキーの嗜好は、必ずしも企画側の目論見と合致しませんでしたが、それでも水彩画だけで、十分に楽しむことのできる展示でした。

会期 2004年1月2日〜3月31日   会場 ブリヂストン美術館 (東京 京橋)

 

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