北斎展

ウッキーが日本画を鑑賞することは、さほど多くはありません。 もともと西洋美術の方が好きなこともありますが、日本画の企画展が少ないことも大きな理由です。 でも、たまに日本画を観ると、あらためてそのすばらしさに魅了されることもあります。

福井県立美術館で開催されている、北斎展へ行ってきました。 日本の浮世絵が、西洋の印象派画家たちに大きな影響を与えたことは、よく知られた事実です。 モネやゴッホら著名な画家はもとより、その影響を受けなかった画家を捜す方が困難だとさえ言われるほどです。 とりわけ、風景画をはじめとする葛飾北斎(1760年〜1849年)の浮世絵が及ぼした影響は、絶大だったようです。
今回の企画展は、北斎の肉筆画、版画、版本約200展を展示する、内容の濃いものでした。

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最初の紹介は、冨獄三十六景の中から、「神奈川沖浪裏(かながわおきなみうら)」です。 北斎の代表作である「冨獄三十六景」は、天保2年(1831年)頃に制作された一連の作品で、当初36枚の予定でしたが、人気を博して10枚が追加制作され、全部で46枚残されています。 今回の展覧会では、そのうち16枚が紹介されました。 大変ポピュラーな版画ですが、実物を眺めてみると、その色の美しさ、絶妙な濃淡、線の柔らかさに目を奪われます。 まるで指先のようでユーモラスに見える浪のタッチは、実物を間近で眺めると一層魅力的でした。

北斎は、大変緻密に構図を計算したのだそうで、この絵でも対角線と左下角を中心とする円の交点する位置に、浪の先端と富士山の頂上を描き、観る者の視線が自然と浪から富士へ移行するように、作意されているのだそうです。 (中村秀樹著 新・北斎万華鏡からの受け売り知識です)

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次に紹介するのは、西洋では「ホクサイ スケッチ」として知られている「北斎漫画」です。 人から動植物、風俗、家財道具など、あらゆる分野に及ぶ3900を越える図柄からなっています。 これも一旦は10編で完結したにもかかわらず、その後15編まで続刊されているのですから、当時の北斎がいかに人気画家であったのかを、うかがい知ることができます。 この中の何点かは、すでに北斎の存命中にヨーロッパの書籍に転載され、浮世絵ブームの火付け役を果たしたそうです。

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版画作品を間近で見ると、版の木目が浮き出ていたりして、木版特有の趣があります。 木でできていますから、刷るにつれて細部がつぶれてしまい、本当にきれいな作品は極限られるのだと聞いたことがあります。 また、もともと長期保存を前提としていない作品なので、色の劣化も止めることはできません。 今でも十分鑑賞に堪える色彩ですが、刷り上った頃には、もっともっと鮮やかで美しい色彩を放っていたのでしょうね。

会期 2004年10月8日〜11月7日   会場 福井県立美術館 (福井市)

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