鉄 iron 26Fe=55.85

Fe 鉄 iron Fe d=7.87 mp=1535ºC bp=2750ºC
主要鉱物は、赤鉄鉱Fe2O3磁鉄鉱Fe3O4黄鉄鉱FeS2など。 灰白色の金属で、延性,展性に富む。 乾いた空気中では安定であるが,湿気があると酸化されてさびを生じる. 常温では強磁性であるが、キュリー温度770℃以上で常磁性に変わる。 希酸に可溶で、濃硝酸とは不動態をつくるので反応しない。 微粉末になると光沢はなくなって黒い粉になり、表面積が大きいので空気中で自然発火する。


Fe2O3 酸化鉄(III) iron oxide Fe2O3 d=5.24g/cm3 mp=1565ºC
三二酸化鉄(iron sesquioxide)ともいう。α型(赤鉄鉱,ヘマタイト)とγ型(マグヘマイト(maghemite))の2種がある。1)α型.赤茶色の三方晶系結晶。コランダム構造で融点は1570℃とされるが、高温で酸素を失ってFe3O4になるため正確には測定できない。室温では絶縁体で塩酸に溶けてFe3+を与える。各種磁性体の原料やべんがら等の顔料、ガラスの研摩材、触媒などに用途がある。2)γ型.淡褐色の立方晶系結晶でスピネル構造。フェリ磁性体で磁性材料やその原料として用いる。


Fe3O4 四酸化三鉄 Fe3O4 d=g/cm3 mp=1600
四酸化三鉄(triiron tetroxide)ともいう、磁鉄鉱(マグネタイト)として産出し逆スピネル構造の黒色立方晶系結晶。 不定比性があり,最大約3%の鉄欠損がみられる。多く物性はO2-を配位子とする錯体として説明できる。フェリ磁性体で、キュリー温度585℃.常温付近では半導体的であるが、高温では金属伝導性を示す。磁性粉、触媒、顔料などの用途がある。


FeCl3 塩化鉄(III) iron chloride FeCl3•6H2O
六水和物は黄色いが、無水物は黒褐色の六方晶系結晶。Feは6個のClに8面体状に囲まれ、400℃での気体分子は塩化アルミニウムの気体と同じ形の2量体である。エタノール,アセトンによく溶ける。塩酸水溶液から室温で析出する黄色の六水和物(trans‐[FeCl2(H2O)4]Cl・2H2O)が析出する.これは潮解性でエタノール,アセトンにも溶ける。水溶液は加水分解のため酸性を示す。濃塩酸中で正4面体イオンをもつH[FeCl4]として存在し、これはエーテルなどで抽出される。Fe3+は酸化力が強いので、銅や銀をイオン化することができるので、プリント配線などにおける金属表面腐食剤に利用される。また、フェノール類と反応して、紫系の色を示す。


FeS 硫化鉄(II) iron sulfide FeS d=4.6〜4.8g/cm3 mp=1170
磁硫鉄鉱(ピロータイト)などとして産する黒色の六方晶系結晶で、基本的にはヒ化ニッケル構造の反強磁性体である。加熱に対しては安定だが、酸とは反応して硫化水素を発生する。


Fe(NO3)3 硝酸鉄 iron nitrate Fe(NO3)3 d=1.81 mp=47.2
六、九水和物があり、いずれも潮解性。九水和物の実体は[Fe(H2O)6](NO3)3・3H2Oで、無色に近い紫色の単斜晶系結晶。水溶液にするとFe3+が水和して黄色になる。エタノール、アセトンにも溶ける。


Fe_alum 鉄ミョウバン (NH4)Fe(SO4)2
Fe3+が水和していないので結晶は薄い紫である。紫水晶の色もFe3+によるものである。単独のFe3+の塩は加水分解しやすいが、これら複塩は安定でFe3+の溶液をつくるときに用いられる。


FeSO4 硫酸鉄(II) iron sulfate FeSO4•7H2O d=3.35
薄緑はFe2+の色。
無水塩は淡緑色の斜方晶系結晶。水に可溶。室温で水溶液から青緑色のFeSO4・7H2O(=[Fe(H2O)6]SO4・H2O)が析出する。空気中で酸化されてFe3+の水酸化物塩になりやすい。


FeSO4 硫酸鉄(III) Fe2(SO4)3 d=



(NH4)2Fe(SO4)2 硫酸鉄(II)アンモニウム iron(II) ammonium sulfate (NH4)2Fe(SO4)2
イオンの組み合わせは、ミョウバンと同じ。淡緑色の六水和物があり、モール塩(Mohr's salt)という。正8面体構造の[Fe(H2O)6]2+イオンが存在する。エタノールに不溶。風解および酸化を比較的受けにくいので、この塩の水溶液は容量分析における標準溶液として、また固体は低温まで使える磁化率測定の標準物質として用いられる。


K3FeCN6 ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム K3Fe(CN)6 d=1.87
[Fe(CN)6]3-イオンは8面体構造で 遊離酸H3[Fe(CN)6]は緑褐色の固体で強酸、水、エタノールに溶ける。 多数の金属塩があり、アルカリ金属、アルカリ土類金属塩は水に易溶たが、重金属塩の多くは不溶である。 Fe2+イオンの検出に用いられる.[Fe(CN)6]4-イオンは置換活性でCN-を解離しやすく有毒である。水溶液では容易アクア化されて[Fe(CN)5(H2O)]2-を生ずる。アルカリ溶液は強い酸化力を示し、Cr3+をCrO42-に酸化する。 K2[Fe(CN)6]は赤血塩(red prussiate of potash、フェリシアン化カリウムpotassium ferricyanideとよばれ赤色の単斜晶系結晶。アセトンに可溶,エタノールに難溶。


K4FeCN6 ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム K4Fe(CN)6
[Fe(CN)6]4-イオンは8面体構造で、無色の陽イオンの塩は一般に淡黄色である。 [Fe(CN)6]4-イオンは安定で置換不活性であり、CN-イオンに由来する毒性を示さない。 K4[Fe(CN)6]は古くから黄血塩(yellow prussiate of potash、フェロシアン化カリウムpotassium ferrocyanide)の名で知られた三水和物のは黄色の単斜晶系結晶である。 Fe3+イオンと反応してプルシアンブルーを生成するので、Fe3+の検出に用いられる。

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