1 0 8 枚 の 紙 芝 居
岡 嶋 大 輔

 楽しい語り口調の昔話「力太郎」(光村二年)。文章のどこをとっても表現が豊かで、子どもに分かりやすい言葉で様子をうまく表わしている。
 物語の世界を作り出している一つひとつの言葉に着目しつつ、頭に浮かんできた情景を具体的な形にして表わそうと、この「力太郎」を紙芝居にすることにした。
 場面が変わるところはもちろん、登場人物の動作が変わるところ、表情が変わるところ、というように私があらかじめこの物語を54に分けた。そして、クラスをランダムに2つのグループに分けた。10人程度のグループで54枚を分担するので一人が5、6枚の紙芝居を作るという寸法である。
 グループを2つに分けたのは、後で同じ箇所の紙芝居を作っている友達と意見を交わしたり相談したりするためである。

 8枚の挿絵や文章、言葉を手がかりに、いろいろな発見をしながら絵は完成されていく。
「なんで、ばあさまは目をほそめたの。」
「こんび太郎は、まっ黒だったんだね。」
「まっかになったというのは、怒った顔を描けばいいのでしょう。」
 一人ひとりに付き添いながら、つぶやきを拾い集めていく。授業の最後にそれらを紹介する。自然に話し合いが広がる。
「ばあさまは、うれしかったのだよ。こんな顔だよ、きっと。」と、にんまりした顔を披露してくれる子ども。
「力太郎は、初めからずっと、茶色だと思ってた。」
「弟も怒ると顔が真赤になるよ。」
 驚きや、納得といった表情をする子ども。言葉一つに、思いはさまざまである。
 ただ紙芝居作りという作業だけでなく、こういう交流の場が貴重だとあらためて学んだ。

 そして、紙芝居の完成。どの子どもも自分の紙芝居は自信作だという。今度は、実際に紙芝居をし、それをビデオに撮って昼の校内放送で流すのだ。
 練習の段階から少々の緊張が辺りに走る。ビデオで再生される自分の声や、その出し方を視聴して良かったところ、直したいところを書いて次の練習に生かす。 何回かの練習の後、本番を撮り、校内で流した。
「良かったよ。」
「上手だったね。」
 いろいろな先生や、上学年にほめられ、顔がほころぶ子どもたち。
 自信作の好評によって得られる自信は大きいだろう。前向きにがんばれた子どもに拍手を贈りたい。
(甲賀町立佐山小)