Tonino Baliardo トニーノ・バリアルド

この人は、簡単にいえばジプシー・キングスのリード・ギターの人である。聞いたこともあるとおもうけど、鬼平のエンディング「インスピレイション」が代表作と言えば代表作で、聞いての通りなかなかのものである。一般の人はフラメンコと思うかも知れないが、実際にはフラメンコの人がジプシー・キングスをフラメンコとして評価することは少ないと思う。また、彼ら自身もフラメンコの中心を目指すつもりは無いと思われる。

ジプシー・キングスは、南仏というフラメンコでは辺境の地で、マニタス・デ・プラタ(G・Kを構成するトニーノたちバリアルド兄弟のおじにあたる。)というフラメンコの「超」異端者の強い影響のもとにうまれたようだ。実際、ジプシー・キングスとして発表した初期のアルバムでは、マニタス流?の、コンパスのかんじられない「ソレアらしきもの」を弾いていたりする。

しかしトニーノは勉強したようだ。やはりルンバが中心ではあるが、メジャーになって2作目のアルバム「モザイク」ではマニタスのそれとはちがう、ちゃんとしたコンパスのブレリアを聞かせてくれたりもしている。パコやその他、本物のフラメンコギタリストたちの影響も見えかくれする。

テクニックはクラプトンから賞賛されるほど。また、作曲もいい。しかし、フラメンコ人間としてはものたりなさを感じる。もっとフラメンコらしく弾いてほしい。しかし、やはりジプシーキングスの中でできることには限界があるのではと思わせる。やはりこの人はジプシーキングスの中では一番の音楽的な価値があると思うし、「ジプシーキングス」を超える才能を持つのではないかと思わせるのである。パセオフラメンコに「パコの弟子」との記述があった。ほんとかな?


essences

評価★★★☆☆
トニーノのソロとしてのデビューアルバムとなる。待ち望んでいた人も少なくないと思うが、今までのジプシー・キングスでのトニーノのソロをこえるものではないと思う。この人も含めて、ジプシーキングスは、フラメンコとはいいきれないし、勿論それ以外の音楽ともいえないという微妙なポジションのグループであった。ソロならばそのポジションから解放されて、トニーノの世界を現出するのではないか・・そういう期待であったが、このアルバムではさほど抜け出せきれていない(逆に、G・Kがトニーノ無しには成り立たないということもいえる)。ティノ・ディ・ヘラルドとカルレス・ベナベンというフラメンコを代表するメンバーに脇を固めてもらったブレリア"gitanito"(これは開封する前から曲名をみてブレリアだと予想していた。だから買った)や、原型はよくわからないがフラメンコ色の強い"reverie"なんかは、それぞれすこし変だけど面白い。また、完全にジャズ寄りの数曲(余り知らないけど、同じジプシーのジャンゴ・ラインハルトやその系統の曲みたい)もいい。でも、ジプシーキングスっぽい曲を、ジプシーキングスと同じプロデューサーがプロデュースして、同じ様なメンバーで演奏すると、せっかくのソロアルバムなのになんだか物足りない(正直ちょっとネタ切れっぽいし、新しいアルバムがでるたびにすこしずつつまんなくなる)。しかも、日本版がやけに「なごみ系」で売り込もうとしているのも鼻につく。せっかくだから、ジャズでもフラメンコでもいい(個人的には勿論フラメンコがいいが)から、完全に突き抜けた姿で登場して欲しかった。長い間待ってたんだからさ。友人の「払う」によると、「フラメンコになりたくて頑張ってるのが伝わってくる」といってた。たしかにそやなあ。