マッコイと言えば、フライト。フライトと言えばマッコイ。同社の名を広く知らしめたのはマテリアルやフィニッシュを自在に使い分け、今なお多くのユーザーが追い求めるレザージャケットの王道、A-2。また独特のナイロンマテリアルが軽く、抜群のパフォーマンスを約束するL-2B等のフライトジャケットである。

だが今回紹介するのはそのどちらでもない。そしてそれは、フライトジャケットですらない。
空母における光は「命知らず」と形容され、目に見える形で戦果を挙げるパイロット達である。華々しく活躍する彼らの影で、デッキクルーは滑走路にこびり付いたタイヤのカスを弾き、戦闘機から漏れるオイルをデッキブラシで拭い続ける。エースは伝説として語り継がれ、影に徹したクルーの物語は歴史の狭間に消える。だが彼らの働きがあってこそ空母は海の要塞として第二次大戦の主役足り得たのだ。

そのな歴史の影となったクルーを支えたのが、このN-1ジャケット。第二次世界大戦から日本中が特需に湧いた朝鮮戦争までの長期間、米国海軍所属のデッキクルーに正式装備として支給されたジャケットである。コットングログランのアウターシェルは遮風性と防水性に優れ、アルパカのライニングは暖かい。地道な任務の中で陽に曝され、風雨に耐えたジャケットは彼らの誇りでもあった。

街ナカを徘徊する民間人(当たり前だ)のMSに、このデッキジャケットは明らかにオーバースペック。だが重厚なコットンシェルと暖かなアルパカのライニングは冬場の定番として活躍し、購入から6年が過ぎた今、風雨に耐えたジャケットはその褪色を「アジ」として表している。

購入は99年、京都は四条河原町の『ポーキース河原町店』である。ネイビーとカーキがリリースされ、どちらを購入するか迷った。結局、ジーンズを着用する機会が圧倒的に多いため、カーキをチョイス。

その無骨なデザイン故に街ナカでの着用を避けることもあるが、暖かさと丈夫さは折り紙付き。
今後も一線級の装備として、冬場に活躍してくれるだろう。
The Real McCOY'S N-1 Jacket

頚部を覆うアルパカ。チンストラップを
使えば風の侵入を防ぐスタンドカラー
も可能。また腋窩部に用意されたホー
ルが活動下での不快感を減らしてくれ
る。現代でもその機能を果たしてくれる。

保温とは外気の侵入との戦いでもある。
袖口にもリブが取り付けられ、風の侵入
を防いでくれる。

オフセットされたフロントは尿素ボタンと
TALONジッパーの二重仕様。またドロー
コードが腰回りからの風を遮断する。
が、原付ライダーのMS程度では使用の
必然に迫られることはない。

バイクで転棟した際に右肘部分に一部
破れが生じた。マッコイにリペアを依頼し、
およそ三ヶ月後に手元へ。これでまだまだ
現役として活躍してくれるだろう。