高校三年の1月。卒業式を間近に控え(私の母校の卒業式は1月30日と比較的早い時期にあった)、愛用していたドゥニームの66を穿き潰した&人にあげる約束をしていたため、卒業記念として次の購入モデルを考えていた。またドゥニームを買ってもいいし、私がジーンズにハマるきっかけになったエヴィスを「今度こそ」買ってもいい。そんなことをボーッと考えながらその日も河原町へ出た。当時はまだ『ポーキース河原町店』もドゥニームやエヴィスなどの直営店も無かった。だから京都のジーンズ好きはセレクトショップで買うのが一般的だった。勿論、円町には『ポーキース』の本店があり、オールド・リーバイスや『ドゥニーム』や『ザ・リアルマッコイス』などのジーンズを扱っていた。が、いかんせん交通手段をチャリと電車しか持たないガキんちょには遠かった(泣)

そんなワケもあり、当時は移転前でまだ麗峰会館にあった『NOISE』をのぞいた。ちょうどSALEの時期でもあり、目当てのジーンズ以外のアイテムを物色していた(当時はジーンズがSALEの対象となることなどありえなかったからだ)だがSALEのタグが付けられたジーンズが、あった。

それは同店がフルカウントへ別注をかけたモデルで、『NOISE別注』と書かれた小さめの皮パッチ、サスペンダーボタン、股リベットとコテコテのディティールのモデルだった。こういったディティール満載のモデルは、そのパーツ数に比例して価格も高いモノだったが、まだ当時はフルカウントが今ほどメジャーではなかったからか、SALEで高校生にも手が届く価格になっていた。どうしようかと悩んでいると、スタッフのM氏が非常に熱心にそのこだわりを説明してくれ、オマケに自分が穿いていたジーンズを僕に穿かせてその良さを説明してくれた(笑)当時のフルカウントはまだジンバブエコットンをデニムに採用してはいなかったが、それでもドゥニームのパリッとした穿き心地とはまったく別モノに感じられた。私はフルカウントのジーンズをあまりに気に入ってしまい、寝る時までジーンズを穿いて布団を真っ青にし、母親にこっぴどく叱られた。

この別注モデルを購入した時期は巷では様々なジーンズ加工への小技が流行しており、私も若気の至りでレザー・パッチに熱湯加工したり、紙ヤスリで無理矢理タテ落ちさせようとしたり、古着っぽさを出す為に砂場に埋めてみたりと、私は信じられない暴挙を繰り返し、あげくにはミョーな色落ちをしてしまい、結局はヒトにあげてしまった(爆)


後にフルカウントはデニムの縦糸と横糸にジンバブエコットンを採用したデニムでそれまでのジーンズではあまり重要視されていなかった穿き心地の良さを提案。その発色の美しさ相俟って、瞬く間にトップブランドへと成長することになる。
『501XXが好きな人に向けてデニムを作り始めたんです。この当初の目的は達成できたと考えているんです。でも最近は熱意が無くなったとかじゃなく、すごく満足しているんですよ。今はXXのコピーを作るんじゃなく、自分たちのオリジナルをどう表現していくかが今後大事なことなんです』

(辻田幹晴,ポパイ編集部:『98年度版ジーンズ大特集』POPEYE 5月10日号;マガジンハウス.1998.P81.)




フルカウントは徐々にアイテムを増やし、現在ではトータルでのファッションを提案するブランドになり、メンズと同デザインのレディースを取り扱うなどアメカジ好きの女性や身体の小さい男性(私のことだ)にとって絶対にハズすことのできないブランドになった。サイズが合わなきゃコダワリも何もあったもんじゃないもんね。


穿き心地も高品質保証。