水の力の話

「点滴(雨だれ)石を穿つ」という言葉があるように、古くから人々は水滴に秘められたパワーの強さを知っていました。そして、現代の技術者は、この水滴を連続的に、しかも超高速でぶっつけて物を切断することに利用しています。これをウォータジェット切断と云います。

もちろん、身近なところでは、ガソリンスタンドや整備工場での車の洗浄や船体付着物のクリーニングなどに水の力が利用されていますが、これらは比較的低圧のものです。切断に利用することになるとその水圧は、2000kgf/cm2以上となります。

1.ウォータジェット切断の歴史

1960年代から研究が始まり、1971年にアメリカで切断装置が商品化されました。はじめは、航空宇宙産業や自動車産業において複合材料やプラスチック材料の切断に使用されました。我が国では、1980年代から使用されています。最初は水だけの力で物体を切断するものでしたので、金属やコンクリートなどの硬い物体は切断できませんでしたが、1980年に水の中に研磨材を混入して、コンクリート、ガラス、金属を切断できる装置が商品化されました。

2.ウォータジェット切断の特徴

物を切断するとき、硬い物ほどそれよりも硬い工具が必要ですが、ウォータジェット切断は、水が刃物の代わりですので工具が必要ありません。その上、切断による熱がかからないため、熱に弱い物体を切断するのに適しています。また、可燃物の傍で切断するときなど火花による引火のおそれがありません。さらに大きな特徴は、細いノズルによって水流の直径を小さくすると加工される物体に作用する力が切断部以外では小さく、軟らかい材料や変形しやすい品物の切断が容易になります。紙おむつなどはこれで切断されています。また、ノズルからの水の噴射と停止が容易に出来るので、端からの切断ではなく、くりぬき切断も容易であり、ノズルをコンピュータ制御により、好みの形に切り取ることが出来るので、一枚の板から無駄がなく品物を切り取ることが出来る。

3.ウォータジェット切断の用途

(a)清水型

プラスチックス、複合材料(FRP)、住宅建材、住宅内装材、住宅外装材、段ボール、紙おむつ、自動車内装材、プリント基板、ビデオテープ、ゴムタイヤ、靴底、皮革、ケーキ、お菓子、冷凍食品、人体臓器

(b)アブレシブ型

鉄板、ステンレス板、アルミ板、チタン板、銅板、超合金板、コンクリート、岩、土壌、石材、ガラス、セラミックス

(応用) タンク類の解体、トンネル掘削、大型廃材の処理、ビルの拡張工事、水中切断工事など


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