◎ 窓のお話
 
 「窓」は日本建築の特質で、多彩な意匠があり、特に趣のあるのは「茶室の窓」で
しょう。
   奈良の「古代寺院」の柱は巨大で、柱で建物を支える架構構造であります。古代で
は「間戸」と書きました位で柱と柱の間がすべて「窓」でも構造上問題はありません。
何故ならわが国の建築の壁は非耐力壁だからです。
 西洋建築では壁が構造体であるので、「窓」は大きく取れませんでしたが、現在は鉄
筋コンクリート造になりましたから、非耐力壁のガラスでも良いようになりました。

 

 

  
    法隆寺回廊連子窓

 

 伝来した当時の仏教寺院の「窓」はすべて
四角い「連子窓(れんじまど)でした。「窓」
の効用といえば「採光」、「換気」などであり
ますが、我々が「換気」といえば扉があります
が、「連子窓」には扉はありません。現在の
「窓」のイメージとは違いますね。
 写真は「法隆寺回廊」の「連子窓」です。
「回廊の連子窓」から見る眺めは「一服の絵」
です。この「回廊」は古代寺院唯一の遺構で、
当然「国宝」になっております。
 「連子窓」があれば「和様建築」といってよ
いでしょう。ただし、寺院建築様式で「和様」
「禅宗様」「大仏様」以外に、これら3様式の
特徴を取りした「折衷様」がありますが、その
「折衷様」は「連子窓」です。わが大阪には
「折衷様寺院」で名高い「観心寺」があります。
また、当寺には「如意輪観音像」の傑作もあり
ます。

 

 

  
   法隆寺回廊の連子子

  「連子窓」の縦に入っている菱形の材を、「連子
子(れんじこ)といいます。古い時代は連子子の間
隔が広いのが特徴です。
 「連子窓」の最古のものが、山田寺の回廊に付属
していたもので、倒壊したままの土中から掘り出さ
れました。この「連子窓」の「連子子」の間隔も広
いものでした。
 余談ですが、記録に出てくる最古の「薬師如来像」
は「山田寺講堂」に安置されていました。現在、
「興福寺」にあります「山田寺仏頭」です。白鳳時
代によくもこれくらい見事な作品が出来たものだと
感心させられます。まだ、ご覧になっていない方は
是非「興福寺」を訪れて感動してください。

 

 

 
      大宝蔵院(法隆寺)

  古代の「連子窓」は写真のように「連子子」だ
けが青色塗装です。
 時代が下るにしたがって、「連子子」の間隔が
狭くなってまいります。
 「連子子」の間隔がゼロになったのを「盲連
子」といいます。
 「唐招提寺鼓楼」(鎌倉時代)はこじんまりと
した建物で、境内唯一の重層建築です。「経蔵」
の二階部分は普通の「連子窓」で、「舎利殿」の
一階は「盲連子」となっております。一・二階部
分にも縁勾欄があり、建物、屋根の出来栄えも秀
逸です。日本人好みの建築ではないでしょうか?
 当寺には別の建物で「経蔵」があり、「正倉
院」より古く現存最古の「校倉造」です。「校
倉造」はわが国では珍しい「窓」なし建築です。

 

 


       醍醐寺(京都)

  平安時代になりますと、「連子窓」の額縁を下
図のような「唐戸面(からどめん)に加工したも
のが出来てきて、「連子子」は青色、「唐戸面」
には黄色塗装が施されます。
 「連子窓」の「唐戸面」は京都ではよく目に触
れますが、奈良ではむずかしいです。残念なこと
に、「唐招提寺金堂」の「連子窓」には「唐戸
面」がありますが、現在「金堂」は解体修理中で
見ることができません。

 

 

   

 

「唐戸面」の断
面図です。黄色
は左の写真の塗
装部分を誇張し
て描きました。 

 

 

 
        万福寺(京都)

   鎌倉時代に「禅宗寺院」が伝来しますと、
「禅宗様」の「花頭窓(かとうまど)」が現
れます。窓枠の頭部
は火炎を思わせる曲線なので、「火灯窓」と
も書きます。
 「花頭窓」は日本人には大変好まれた「窓」
で、わが国では寺院、城、住宅など色んな建
築に取り入れられました。時代が下ると「書
院窓」とも呼ばれるようになりました。

 

 

  
             妙心寺(京都)

 
            
平等院(京都)

 

 

  
         広隆寺(京都)※

     
              大仙院(京都)※

 

 

  
        石山寺(滋賀)

 

 「花頭窓」は一名「源氏窓」ともいわれ
ます。
 「紫式部」が「石山寺」において有名な
「源氏物語」を書き起こした部屋が、現在
もある「源氏の間」で、その部屋の「窓」
を「源氏窓」と呼んだからです。

 

 

 
          万福寺(京都)

 

  寺院建築の「窓」は「連子窓」と「花頭窓」
だけでしたが、「丸窓」が出てまいりました。
縦横の桟がないのものや、内側には扉を付けた
ものもあります。
 外景を取り入れるだけあって、「丸窓」の向
こうには立派な庭の景観があります。

 

 

  
          万福寺(京都)

  
                如庵(愛知)※

 

 

   
            仁和寺(京都)※ 

 
            芳春院(京都)※

 

 

  
             来迎院(京都)※

 
            高台寺(京都)※

 

 

 
             詩仙堂(京都)※

   
          玉林院(京都)※

 

 

  
     如庵(愛知)※


       高桐院(京都)※
 

今回 増田建築研究所(京都市)様から多くの写真(※印分)をご提供いただきました。厚くお礼申し上げます。