マーラー、チャイコフスキー、ラフマニノフ好き管理人のクラシック音楽の部屋「ほんのちょっとクラシック気分」



交響曲第五番ホ短調

☆作曲の背景☆
チャイコフスキーは、1878年には作曲に専念するため12年間勤めたモスクワ音楽院教授の職を辞して、《イタリア奇想曲》《マンフレッド交響曲》などの作品を次々と完成させ、国外でも名声を高め、自作を指揮するため演奏旅行を重ねていました。この第五番はそうした放浪生活区切りをつけ、疲労から楽想が枯渇するのを恐れ、それを克服する為に着手したと言われています。
曲は1888年11月17日にペテルブルク作曲者の指揮で初演され、聴衆には好意的に受け入れられましたが、専門家の批評は好意的ではなく、チャイコフスキー自身も曲について「この曲には大袈裟な誇張があります」と手紙で述べる程でした。しかし、その後の演奏会の大好評で、本人も自信を持つようになったと言われています。


この曲は第4番と同じように「運命」を主題としながらも、前作ほどは激しくなく、また第6番《悲愴》ほど深刻には作られていないようです。その新鮮な楽想と美しく巧みな音の色彩効果は見事です。作者本人が言っているという「大袈裟に誇張された曲」は、分かりやすく、受け入れやすい。とも言えるのではないでしょうか。

【第1楽章】アンダンテ―アレグロ・コン・アニマ(ゆっくりと−快速に、精神を込めて)
序奏付きソナタ形式。
クラリネットの旋律が暗く静かに流れてきます。それから、「運命の動機」である主題があらわれ、展開されいきます。とても重たく、物思いに耽っている作者自身の姿が見えてくるようです。自問自答が繰り返される中、少し明るい雰囲気の曲想になり、だんだんと大きな波となって押し寄せてきます。まるで心の葛藤を表すかのように・・・・・。
最後は、とても穏かに進んでいっているかと思えば、大きく盛り上がり、やがてす〜っと消えていきます。

【第2楽章】アンダンテ・カンタービレ・コン・アルクーナ・リチェンツア(ゆっくりと、歌うように)
複合三部形式 。
ホルンの旋律が美しく心に染み渡ってくるようです。何となく、そっと涙を誘うような・・・・・。クラリネットの演奏もとても感傷的にさせます。
激しい盛り上がりと、静けさとが繰り返されながら最後は、静かに終わります。

【第3楽章】アレグロ・モデラート(快速に・中庸の速さで)
テンポのよいワルツのリズムではじまります。それから、とても速いといいますか、目まぐるしい演奏が流れてきてこの楽章を面白くしています。
最後はいきなり強音の連打で終わります。

【第4楽章】アンダンテ・マエストーソ〜アレグロ・ヴィヴァ―チェ(ゆっくりと、荘厳に〜早く、快活に)
序奏付きソナタ形式
堂々とした曲ではじまります。中間部もテンポのいいリズムで、とても軽快な気分になります。そして、運命の動機が再び「長調」に姿を変えて流れだし、劇的な盛り上がりをみせ、金管が勝利感に満ちた音楽を奏で締めくくる。 という堂々たるクライマックスです。






☆チャイコフスキー:交響曲第五番ホ短調を聴く(CDの記録)

@指揮:エフゲニ・ムラヴィンスキー / レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団    1960年9月録音
A指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン / ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団    1965年9月録音