マーラー、チャイコフスキー、ラフマニノフ好き管理人のクラシック音楽の部屋「ほんのちょっとクラシック気分」



交響曲第四番ヘ短調

☆作曲の背景☆
チャイコフスキーは、この第4番を1877年春から翌78年1月にかけて作曲しましたが、それにはふたりの女性が大きな光と影を落としています。チャイコフスキーの音楽の熱心な一ファンとして、陰ながら資金面と精神面を支え続けた女性。そして繊細な彼の心を悪夢のようにかき乱し、自殺未遂にまで追い込んだ女性。この曲は、前者の女性に感謝の気持ちを込めて贈られたものだと言われています。
こうした複雑な人生模様の中、作曲は続けられ、弟に伴われてスイスに静養旅行に出掛けたチャイコフスキーは、さらにイタリアに足を伸ばして、1878年1月にサン・レモで全曲を完成しました。そして、翌2月22日、モスクワでニコライ・ルビシュテインの指揮で初演されて大成功を収めました。


この曲は交響曲第六番『悲愴』とともに広く愛好されている作品です。もちろん私も第六番に続いて大好きな曲です。
彼自身の運命に対する絶望感、そしてその運命と戦い、生きる希望と勇気を勝ち得た喜びが、この曲には描かれているとされます。

【第1楽章】アンダンテ・モデラート、モデラート・コン・アニマ(精神を込めて)
序奏付きソナタ形式。
まるで運命を警告するかのようなホルンのファンファ−レで始まります。自分の運命に対する絶望感。それは聴いている私にも伝わって、重くるしく、だんだんと息苦しささえ感じます。
途中、憂鬱な現実や激しい悲しみを振り払うかのように、安らぎを求めるような音楽が流れてきますが、聴き手にとっても、何かからちょっとだけ開放されたような安堵感を感じます。
しかし全体的に心乱される楽章です。

【第2楽章】アンダンティーノ・イン・モード・ディ・カンツォーナ(カンツォーナの旋法で(動きをもって)やや歩くように)
三部形式 。
オーボエが奏でる悲しげなメロディーで始まります。第一楽章ほどの激しさや重苦しさはありませんが、とても「孤独」を感じさせます。昔を思い出し、思わず涙が溢れ出す・・・・・。心に寂しさや悲しみがしみわたってくるような、そんな楽章です。

【第3楽章】スケルツォ、ピツィカート・オスティナート、アレグロ(快速に、執拗に弦を指ではじく奏法で)
三部形式。
酒に酔った農民達の踊りの気分を描いたとされていて、愉快な音が流れ出します。バイオリンをはじめ、弦楽器のピツィカートのみ(弓を使わず、指ではじいてひく奏法)の演奏です。1楽章全てをこの奏法で通す曲は初めてでした。木管によるおどけた音楽も印象的です。 でも、どこか「闇」を引きずっていて、こころから楽しんでいるようには聴こえてきません。 現実逃避とでもいうのでしょうか・・・・

【第4楽章】フィナーレ、アレグロ・コン・フォーコ(情熱を持って、快速に)
自由なロンド形式。
冒頭からアレグロの勢いに圧倒されます。自分の運命を乗り越え、生きる勇気と希望を持ち直した作曲家の思いが描かれているような楽章です。活力の漲った音楽になっていると思います。
幸福とは、意外に身近にあるということ。
自分でそこにあるとても単純な幸福を感じなければ見つける事は出来ないということ。
これからは、前向きに生きていくというような決意が感じられます。
力強いクライマックスです。





☆チャイコフスキー:交響曲第四番ヘ短調を聴く(CDの記録)

@指揮:エフゲニ・ムラヴィンスキー / レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団    1960年9月録音
A指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン / ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団    1966年10月録音