マーラー、チャイコフスキー、ラフマニノフ好き管理人のクラシック音楽の部屋「ほんのちょっとクラシック気分」



交響曲第五番嬰ハ短調

☆作曲の背景☆
マーラーは指揮者としての立場をさらに確立したいとの野心を持っていましたが、そのために作曲に専念することができませんでした。1897年、ウィーン歌劇場に任命されるという栄誉に恵まれますが、作曲はしばらく傍らにおしやられ、結果として交響曲第4番は完成までに非常に時間がかかっています。しかし1901年以降になると、マーラーは決まった周期で仕事が出来るようになりました。夏の休暇の数ヶ月間に作曲し、その後は時間を見つけてはスコアを手直しするというパターンになったのです。
マーラーは交響曲第5番を1901年と1902年の夏に、避暑地であるヴェルター湖のほとりのマイヤーニッヒの別荘で作曲しています。1902年3月には、アルマ・シントラーと結婚。平穏な結婚生活とは決して言えませんでしたが、新婚当初は幸せであり、第5番の後半にもその幸せが反映されています。


私とこの曲との出会いは、あるテレビドラマでした。七、八年前のことなのでドラマのタイトルは忘れてしまいましたが、確か元有名なマエストロが音楽界を追放同然となり、田舎の学校のクラブ活動でタクトを振る・・・ そんな内容だったと思います。田舎の田園風景によくマッチした第四楽章「アダージェット」。とても美しく心に残りました。
心がかさついた時−そんな心を潤してくれる第4楽章。
第五番は一番〜四番と比べて、最も交響曲らしい交響曲と言われています。それまでは交響詩をもとに作られたものや、大部分を歌曲が占める作品が多かったからです。

【第1部】
【第1楽章】嬰ハ短調 葬送行進曲 重々しい足取りで、厳格に、葬列らしく
トランペットのファンファーレが高々く鳴り響き、厳格な行進が始まります。全体的に力強い演奏なのですが、「葬送」とついているのですから、強い嘆き、絶叫が表現されているのでしょうか。
悲しみの表現も二通りに表現されているように思います。一つは、失った悲しみを押し殺して静かに思い懐かしみ、心から冥福を祈るような姿を表現。もう一つはその悲しみを激しい姿で表現。どちらも聴く者の胸を締め付けます。

【第2楽章】イ短調 嵐のように動いて、最大の激烈さをもって
第1楽章からの流れを引き継ぎ、冒頭から激しく荒れますが、途中からマーラーらしい音の流れをもって、失ったものの嘆きにも似た憂いをもった雰囲気に変わっていきます。
終盤は、心の夜明けを感じさせる、晴れやかな輝きを出してきます。 その勢いは第2部へと引き継がれ・・・。

【第2部】
【第3楽章】ニ長調 スケルツォ 力強く、速すぎずに
スケルツォの元気で快活な音楽が広がります。ホルンが大活躍です。ホルンの動機を受けて、木管が楽しい弾むような主題を奏し出します。どこか牧歌的でもあり、心も弾み、第2楽章までの重々しさがいっぺんに払拭されます。途中、何かを懐かしむような、物思いにふけるような場面もありますが、最後はリズムよく終わっていきます。生命あるもの全てを生き生きと表現したような楽章の様に感じました。

【第3部】
【第4楽章】ヘ長調 アダージェット きわめてゆっくりと
この交響曲で最も有名な楽章だと思います。ハープと弦楽が静かにゆっくりと流れてきます。目を閉じてきいていると、深い深い湖の底にゆっくりと沈んでゆくような、どこか心地よくて、美しい、私もお気に入りの楽章です。心の一番奥底へ染み渡るような、聴く人の中へ中へとゆっくりと入り込んでくるような・・・美しい調べに心は漂います。マーラーはこの第5番作曲中にアルマという女性と結婚していますが、そのアルマによると「これ(第4楽章)は自分へのラブソングだ」との事らしいのです。もし本当にそうなら、すばらしい贈り物ですね!

【第5楽章】ニ長調 ロンド・フィナーレ アレグロ(快速に)
アダージェットの余韻をほんの少し残しながら、ホルンが響き渡り、その静けさは破られます。とても明るく弾んで、幸せに満ちた世界が広がります。その音楽はいきいきと表現され、最後は勢いを増していっきにフィナーレへと向います。






☆マーラー:交響曲第五番を聴く(CDの記録)

@指揮:クラウス・テンシュテット / ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団    1988年12月録音
A指揮:サイモン・ラトル / ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団  (ベルリン・フィル音楽監督就任記念特別限定版)  2002年9月録音
B指揮:レナード・バーンスタイン / ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団    1987年9月録音