マーラー、チャイコフスキー、ラフマニノフ好き管理人のクラシック音楽の部屋「ほんのちょっとクラシック気分」



交響曲第一番ニ長調「巨人」

☆作曲の背景☆
1883年、マーラーはドイツ中部にあるカッセルという町の宮廷歌劇場の副指揮者として赴任したての頃、その歌劇場に出入りしていたソプラノ歌手、ヨハンナ・リヒターに好意を抱き始めます。そして、彼女のために「花の章」という小品を作曲しますが、残念なことに失恋してしまいます。
1888年10月、マーラーはブタペスト王位歌劇場の指揮者に就任し、約2年間その職を務めます。その間に、カッセルで過ごした思い出の集大成として、「花の章」などを織り交ぜた「2部5楽章からなる交響詩」を作曲しました。
その構成は、(【】内は交響曲になってからの楽章)
第1部 青春、美徳、結実、悩みの日々より
 1.終わりのない春、序奏は暁の自然の目醒めの描写【第1楽章】
 2.花の章
 3.順風に帆を揚げて【第2楽章】
第2部 人間喜劇
 4.座礁。カロ風の葬送行進曲【第3楽章】
 5.地獄より天国へ【第4楽章】
マーラーはこれを「巨人」と名付けました。しかし、1894年、3回目の演奏がヴァイマールで行われた後、「意味の無い事だ」と、表題や「巨人」の名を全て取り除いてしまいました。それから編成を大きくした改訂版を作り、「花の章」をカットして、残りの楽章で4楽章の「交響曲第1番ニ長調」が構成されました。


あれは確か二十年程前の話し・・・クラシックが大好きな友人***さんから「マーラーいいよ!」と言われ、初めて耳にしたその作曲家の名に「ふ〜ん」と対応しただけの私。それから六、七年後ふらっと入ったCD屋さんで目に止まったのがこのCDでした。「そーいえば・・」と思わず買ってしまい、家で聴いて「なるほど!」と感動!初演は不評だったと解説に書いてありましたが、自然を目と耳と心でとらえ「音」にした美しい、そして激しい曲だと思いました。
また、前身が若き日のマーラーが自らの青春時代の多感な感情をそのまま音にした「交響詩」であったともあるように、生き生きと弾む感情も描き出されてます。
マーラーの作品の最大の魅力である、大オーケストラの迫力の中にも、平易で美しい旋律が共存しているところが存分に表れている作品です。


【第1楽章】ニ長調 ゆるやかに重々しく きわめてのどかに
ソナタ形式
草原、深い森、けだるい朝の風景が広がります。ホルンやトランペットの音が遠くから響き、やがてどこからかカッコーの鳴き声が・・・。自然のざわめきが私達を夢の世界から現実へと導きます。
少しずつテンポもあがり、のどかで明るい旋律に包まれます。楽章全体も盛り上がりをみせますが、展開部に入ると再びテンポが落ちて静かになり、木管楽器による鳥のさえずりが交錯します。最後は勢いを増し、ティンパニの印象的な連続強打の中に終わります。

【第2楽章】イ長調 力強く運動して
三部形式
三拍子の軽快なリズムで始まります。羊飼いの少年が羊を追いながら山の草原をすすむ、好きな歌でも口ずさみながら・・・。牧歌的で、のどかな雰囲気漂う楽章です。
木管楽器により主題の奏され、ホルンのソロ、そして美しい旋律がヴァイオリンと木管楽器で奏され交錯します。

【第3楽章】ニ短調 冗長に流れぬように 壮重に威厳を持って
三部形式
モーリッツ・フォン・シュヴィントのエッチング「狩人の葬送」から着想されたと言われています。動物たちが死んだ狩人の柩をかつぎ葬送の行列を・・・何とも皮肉な絵です。 重々しい雰囲気の楽章で、全体的に暗く悲しいイメージですが、どこかで聴き覚えのあるフレーズも・・・・・

【第4楽章】ヘ短調−ニ長調 嵐のように激動して
自由なソナタ形式
オーケストラが鳴り響きます!やがて静けさが訪れ、ヴァイオリンによる幻想的で美しい音楽が流れてきます。金管楽器によるファンファーレ、そして1楽章に出てきた森の風景、鳥の鳴き声がよみがえります。最後はホルンを中心としたオーケストラがテンポと勢いを増して、とても情熱的な終わりをむかえます。





☆マーラー:交響曲第一番ニ長調「巨人」を聴く(CDの記録)

@指揮:ブルーノ・ワルター / コロンビア交響楽団    1961年2月録音
A指揮:ロリン・マゼール / ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団    1985年録音