前置きというか、注意というか…。
この話はPHASE-45ネタ話「Nightmare」にも絡んでる、勝手妄想話です。
ムウ・ラ・フラガ、15歳。
オリジナルキャラが出張っています。(私にしては非常に珍しく…)
「それでも読んでやってもいいよ」と仰ってくださる、心の広い方はどうぞ〜。
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誰かのために泣いたのは、あの時が最後。
あの時から、俺は、
誰かのためになるのなら、どんなときでも笑っていようと、そう決めたんだ。
Little Kitten -1
「何故って、君ならできると思ったからさ」
何か文句ある?とでも言いたげな黒髪男(きっと同い年くらい。名前は聞く気がしない)が笑顔で圧力をかけてくる。
確かにね。助けられたし。文句なんて言えない。
ため息ひとつついて、それが答え。
「それで?具体的に何をすればいいの?こんなチビっ子を預かれなんてさぁ」
5歳くらい…だろうか。金色の巻き毛の、ちょっと汚れた感じの女の子が、二人の間でうずくまっている。
「君と似てるなぁ。見た目も境遇も。正体がバレたら殺されるかもしれないんだ、その子」
「俺は正体バレたって、誰も相手にしないよ」
ということは、ナチュラルだのコーディネイターだの、そういう事情か。
「ここの施設に置いておくのは危険なんだ」
「で?」
「市街地に隠れて住んで欲しい」
「ふーん。木の葉は森の中に隠せってか」
「そういうこと」
この施設には、普通の戦災孤児が多いが、政治的な事情で立場のまずくなった者の子供や戦犯者の子供まで預けられている。大きくて信頼の置けるボランティア組織で、その分世界中の政治組織にも大きな発言力を持っている。
そこにいてはまずい立場の子。
近くの街はそれなりに大きい。人の多いスラムに上手く隠れろと。
「でもさぁ、俺だってまだ子供扱いされる歳だと思うんだけど…」
「ここは人手不足でね。できる人ができることをやるのが普通なんだよ」
やっぱりため息を漏らしてしまう。
信頼されるのは嬉しいが、それに応えられるのかどうかが不安だ。
「アパートは用意してある。準備金も少ないけど上手くやりくりして生活して欲しい。連絡はできるだけ取らないように。普通の、きょうだいみたいに生活してればきっと誰も疑わないから」
それだけ言って、黒髪男はアパートの住所のメモと、パッと見は大金だがこれで何日暮らせという意味か判らない生活費を押し付けて、組織の大人たちが呼ぶ方へ去っていった。
「…だってさ。チビさん」
足元でうずくまったままの子供は下を向いたまま返事もしない。
「どうしたんだよお前。どっか具合でも悪いのか?」
艶のある巻き毛に触れた途端、子供が大きく反応する。
俺の手を振り払うついでに引っかいて、2メートルほど離れてまたうずくまる。
空色の、きつい眼で俺を睨みつけて。
…俺の眼と同じだ。
俺はこんな風に素直に感情を表せないけど。
他人を信じられなくて警戒してる、そんな眼。
「…だからって、関わったらもう見過ごせないんだよなぁ」
上から見下ろすのをやめて、俺もしゃがんで視線を同じ高さに合わせてやる。今度は低い位置から手を差し出すと、ほんの少しだけ髪に触れさせてくれて、また警戒して避けるように逃げる。
「ま、いっか。しばらく『きょうだい』やってくれってさ」
子供はプイっと横を向く。
「俺は、ムウ。おまえは?」
顔は横を向いたままで、眼だけできつく睨みつけてくる。警戒してるなぁ。
「名前がわかんないと呼べないでしょ?教えてよ」
唇を固く引き結んだまま、何も言おうとしない。言うつもりも無いのかもしれない。
このままだと埒が明かない。
かがんだままの子供を後ろから抱き上げると、驚いて小さく悲鳴をあげる子供。声が出ないというワケでもないらしい。
「じゃあ、君の名前は…子猫ちゃん。キトンで決まり。いいな?」
子供は最初驚いた顔で、次にすごく怒った顔で睨みつけてくる。
その顔が、本当に人間を信じられない猫みたいだと思った。
血統書つきの子猫。
捨てられて汚れた子猫。
「遊んでやるよ。子猫ちゃん」
人の増えてきた施設から自転車を一台拝借し、暴れる子供を抱いたまま俺は街へ向かうことにした。
後になって施設がテロの標的になったと聞いたが、警戒が厳重になった程度で、テロは発生しなかった。
世界中の武器マフィアがその子供を狙っていた、なんてこと、俺は全然知らなかった。
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