レーダーに映った大質量の物体はザフトの戦艦だった。
一時、メンデルに寄航している2隻の艦に緊張が走ったが、極限まで接近を試みたストライクからの通信で、その緊張の糸が緩む。
『キラがまた何か拾ってきたみたいだぜ』
意味有り気にムウが告げると、アークエンジェルのクルーが一斉にクスクスと笑い出す。
送られてきたデータの解析を命じながら、マリューがクサナギのキサカに「心配ないようです」と通信を送る。
ドックに着艦した戦艦エターナル。
機能していたポートスペースから連絡用通路が渡されると、ためらい無く艦長であるアンドリュー・バルトフェルドが先頭に出る。
その様子をモニターで確かめながら、出迎え側にいるマリューが「信頼されてるわね」と、小さくつぶやく。
簡単な挨拶を済ませ、見知った顔同士の再会も果たされる。
マリューと対面したラクスは、以前会ったときよりもずっと大人びた表情だった。
「わたくしたちは、地球の人々との争いを望んではいないのです」
慈悲に溢れた女神のような態度。
そんなラクスに、マリューの胸が痛くなる。
何かを失くしてきたと解かってしまう。それを表立って悲しむこともできないと。
カガリとは正反対。象徴としては向いているのだろうが。
カガリが小さな火ならば、ラクスは泉。
どちらも、守りたい。
「私たちが、あなたを守ります。小さな希望を、あなたの想いを守ります。守らせて、くださいね」
ラクスがハッと顔を上げる。一瞬の、初めて見せる素のままの驚き。
水色の瞳が揺らぐ。
「よろしく、おねがいします」
目を伏せるラクスは、マリューの前でほんの少しだけ、16歳の少女に戻った。
メンデルの周回監視を続けているストライクに、通信が入る。
『監視、交替します』
バスターから。ディアッカがムウに告げる。
「了解。って、キミはさっきの艦の奴等とは面識無いのか?」
『え?』
「同じザフトだったんだろ?知人とかいたら会っとけば?」
砂漠の虎、アンドリュー・バルトフェルドとはレセップスで会ったが、互いに良い印象を持とうと思わなかったのと、意外そうな顔をされるのがなんとなく嫌で、ディアッカは結局アークエンジェルから降りてはいなかった。
『別に、今でなくても…』
小さなモニターの向こうで、ディアッカが不機嫌そうに目を逸らす。
ムウはまるで反抗期の子供だなぁと苦笑して、それ以上の追及はやめる。
「じゃ、交替頼むな。M1アストレイの連中が宇宙慣れしてないから、そっちの面倒も見てくれ」
『ええー!大丈夫ですよぅ!』
『ひどぉい!すぐ慣れますもん!』
『何言ってるんですかぁ?少佐!』
そこだけ通信回線をオープンにしたのか、一斉に黄色い声が抗議する。
「じゃ、よろしく〜〜♪」
バーニアを吹かして戻っていくストライクを眺めていると、黄色い声の主達が興味の対象をバスターのパイロットに向ける。
『ディアッカって言ったっけ?名前』
『身長何センチ?ザフトで優秀だったんですって?』
『ねえねえ、あっちに彼女とかいるの?』
キャーキャーとはしゃぐM1のパイロットたち。
…こんな、緊張感無くていいのか?ザフトでは考えられない。
ディアッカのスロットルレバーを握る指に力が入り、小さく震える。
「……周回監視!演習だと思って、黙って付いて来い!」
end
今回、小ネタ集です。
…ディアッカ、硬派だな。キャラ違う?(笑)
2003/07/28 UP
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