Signal Lost


「ストライク、か…」
 誰もいないアークエンジェルの格納庫で、今は静かに休むMSを前に、アスランが呟く。
 キラが、そしてムウが乗るこの機体には、もうひとり、乗る予定だった友がいる。
 オレンジ色の髪、いつも明るく笑っていた。ともすれば険悪な雰囲気になりがちだったクルーゼ隊をまとめていたのは彼だった。
「どうか、したの?」
 カツン、と靴音が響く。アークエンジェルの艦長、マリュー・ラミアス。無警戒に近寄る彼女は、あの時とは別人のようだ。
「いえ。…友達のことを…思い出していたんです」
 言わなければこの人まで傷つけることは無い、そう思っていても、口に出してしまった。
「俺は、仲間を、大切な友を、何人も失くしました。…どうして、あなた方ナチュラルがモビルスーツなど作ったのですか?」
 マリューはストライクをじっと見つめている。今は、彼女の恋人がそれを駆るのだ。そして、ともに死地に赴く。心が痛まないはずは無い。
「思いは、皆同じなのに、ね?ひとがひとであるかぎり、思いは変わらないのに、ね」
 ただ、守りたかった。
 大切なものを。
「今は、謝らないわ」
 マリューの瞳に強い光が宿っている。弱みは決して見せない人だ。
「私たちには、まだなすべきことがあるのだから」
 姿勢を正して歩み去る彼女も、友のために泣いたのだろうか?大人になれば、あんなふうに強い態度でいられるのだろうか?
 もう一度、アスランはストライクを見上げる。

 …ラスティ。
 俺も、まだお前に謝ることができない。この戦いを終わらせるまで。



end



何気に、気になるキャラ、ラスティ・マッケンジー!

2004/05/10 UP


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