しばし魅入る、光の波。


096.
極光(オーロラ) -fantasy100-


 磁場が異常に乱れている空に現れた昼間のオーロラ。
 夕方を過ぎ夜が訪れても消える気配は無く、一層鮮やかに赤く輝く。

「恐ろしいほどね」

 強烈な磁場が発生した戦場を中心に光が舞う。
 神々の手が、さらにその場を弄ぶように。
 いつか、その手が自分のいる場所までも包み込んでしまうのではないか。
 全身に震えが走り、自分の腕を抱く。

「あれはね。地球が夢を見ているんだ」

 そう言った彼は、夢を見るような口調だった。
 恐ろしいと思う自分とは違った。

「地球も、夢を見るんだ」

 黄緑色の光がゆらゆらと近づく。

「あんなに非道いことがあったのに?」

 殺戮の大地。
 どれほどの命が失われたのだろう。
 全てが塵に還った。
 その魂に、穏やかな眠りなどあるのだろうか。

「だから、眠るんだ。そして傷を癒すために夢を見る。まだこの星は生きている」

 私たちも生きている。
 だから、生きなくてはならない。

 祈る。
 全ての失われたものに。

「せめて眠りの中だけでも、美しい夢を」

 目覚めればいやおうなく現実。
 せめて眠りの中だけでも。

 光が、舞い続ける。夜空に。



end



最後の言葉は、どちらが言ったのかは不明ということにして。
お題は…さだまさしの「オーロラ」からなのです。
歌もいいけど、その歌の背景も素晴しいのです。

2003/06/17 UP


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