「交代だ!」
 ブリッジに現れたムウにマリューが怪訝そうな顔をする。
「あなたは休憩を取ったのですか?」
「ああ、整備する機体が一機しかないんでね。早かったのさ」
「そう、じゃバジルール中尉…」
 マリューが振り返ると、ナタルは周囲のクルーに休憩の指示を出していた。
「私は先ほど休憩を取りました。交代ならば艦長が」
「そーだな。休んで来いよ、艦長殿」
「いえ、私はまだ…」
「そんな疲れた顔して何言ってんだ!後で何かあったら他のみんなが困るんだよ!」
 珍しく厳しい口調で一喝するムウ。
 同じ心情であることを察して、マリューは苦笑する。
「わかりました。よろしくお願いします」

 ソナーをオープンにしてあるので、ブリッジには今はナタルとムウのみ。
 簡単な制御だけなら問題は無い。ザフトからの攻撃も、ほぼ有視界に限られる現状。
 時々ソナーに引っかかる海中生物、クジラ等の雑音が響くだけ。

「珍しいですね。少佐があんなに檄するのを見るのは久しぶりでした」
「…何のための佐官だ?」
「いえ。上官がゆるければ、下の者が厳しいのがあたり前だと思っておりましたので」
「この艦の全員が昇格した理由がわからないアンタじゃないだろう」
 特務とはいえ、戦艦を扱う者の最高位の軍人が尉官ではマズい。
 責任者がいないという意味だから。
 全員昇格はマリューとムウを佐官に昇格させる為に無理矢理取られた措置なのだろう。
「それで、フラガ少佐はこの件をどのようになさるおつもりですか?明日は捜索に向かわれるのでしょう?」
「そうだな。オレが空から探すのが一番効率がいい」
 ストライクで海中からの捜索なんて、もともと非効率的だったのだから。
「明日、昼まで探して見つからなかったら、オレがMIAと認定するさ」
「珍しく、厳しいですね」
 言って、ナタルの表情が少し緩む。ムウも自嘲気味に笑う。
「オレの責任だろう?民間人とは言いがたいが、ドシロートをパイロットに仕立て上げたんだ。…今回はボーズの時よりもずっと罪悪感があるさ」
「まだザフトの勢力圏は続きます」
 ナタルの言葉はそこで切れる。
 だから気をつけろと言いたいのか、さっさと見切りをつけろと言いたいのか。

「しばらく無線に集中します。ソナーは少佐にお願いします。よろしいですか?」
「了解」


2003/03/18 UP


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