手の、甲。
「フラガ大尉はGのシュミレーションやらないんですか?」
ルークがそれを言うのはもう3度目だったか?いや、2度目?
ゲイルも、選抜されたテストパイロットたちも同じことを言うもんだから、皆にいい加減な返事をしていることはバレまくってるワケだ。
「で?ルークのシュミレーション結果はどうだった?」
「並…でしたよ?アイツらに混じってみて。第8艦隊のトップガンでしたっけ?」
「そりゃーお前は俺が鍛えてやってんだから、そこら辺のMA乗りよりも成績はいいだろうさ」
「ありがとうございますっ…大尉がシュミレーションやったら、アイツらも度肝抜きますよ?」
「そう変わらないってバレんのがイヤなんだよ」
中立国オーブの工業コロニー・ヘリオポリスに向かう輸送船に偽装した地球連合の戦艦の護衛役…特務の内容を聞いたときには、やっとザフト軍と対抗できるか、と思ったが、そのテストパイロットたちのシュミレーションを見ていたら…正直戦局は変わらないだろうと醒めていく。
これではダメだ。
これでは勝てない。
「経験をつんでOSを改良していけば、なんとかなるんじゃないですか?」
「気の長い話だなぁ、そりゃ」
「大尉に協力依頼すれば早くカタが着きそうじゃないですか」
ニヤっと笑うルークに、軽くため息の返答。
お偉方にもいろいろ思惑があるだろうし、折角テストパイロットに選ばれた奴等のプライドもあるだろうし。
まあ、どうせ第7艦隊所属の自分に回ってくる役目では無いだろう。
「大尉のゼロは確かに凄いですけど、モビルスーツを乗りこなす大尉ってのもちょっと見てみたいって…、ああ、すみません。俺、喋りすぎですか?」
「いや…うーん、モビルスーツねぇ…」
図面だけで見た、5機のプロトタイプMS。ツインアイがザフト軍のそれとは違い、より「人らしい」形状をしている。
特に、気になったのは…。
「モビルアーマーとか戦闘機ってのはな、飛んでいって撃つってのが目的だろう?」
「…?、そうですね」
「モビルスーツの…手がなぁ。どうにも俺には向いてないって言ってるみたいでさ」
「手、でありますか?」
ひらり、と手のひらをルークに見せてやる。
そして、素早く裏返した手の甲で、気を抜いてるルークの頭を軽く叩いた。
「モビルアーマーってのはこんな感じでさ、攻撃する為の乗り物なんだ。戦う為に作られて、手の甲で打つみたいに容赦が無い」
「モビルスーツも同じでしょう?」
「それは目的がそう使われてるからであって、あれは…守る為の戦いもできるだろう」
「同じじゃないですか」
苦笑するしかなかった。
そこでとりあえず話は打ち切り。
間もなくヘリオポリスへ到着するというアナウンスでブリッジに呼び出されたからだ。
手の甲で打つことしか知らない俺に、モビルスーツは乗れないだろう。
手のひらで守るような、そんな存在があれば、同じなのかもしれないが。
End
ムウがMS乗らないのはMA乗りのプライドがあるから、だったっけ?
手のひらで守るためにMSを作ったのはマリュさん、という意味合いです。
2003/11/17 UP
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